年間128本目 (2月1本目) 

2019年公開  邦画 9位 合計 204本中

通算 邦画 8,197本  洋画 6,699本 合計 14,896本

 

越川道夫監督の他の作品のレビューでも書きましたが

どうもこの監督の波長に合わず、一般映画では格好つけすぎで

「文学ぶって単調さが退屈」「エロス系映画でも、斜に構えた姿勢で

エロスに没頭できない」ので、いまいち評価できない監督でしたが、

先日紹介した初期作の「アレノ」では、エミール・ゾラの古典

『テレーズ・ラカン』を原案にした、彼の文学趣向が分かった気が

していたが、本作では、そう言った「文学趣向で斜に構えた姿勢」は

捨てて、かなりの本腰を入れた作品と感じて、越川作品では

一番良かったので、「もうすぐベストテン的な、佳作未満な作品」

でした。

 

オープニングでの少年を中心に家族の様子を

甘えた「仲良し家族」で描くのではなくて、

ドキュメンタリーを見ているかの如く、両親の漁業の暮らしぶりや

子供と孫、島の子供の生活様子、宴会までも(多分本物の漁師を

使っての)リアルで、甘えがないので生活の中での主人公たちの

家族の本音も見えてくる。

子供(特に不幸な事件ありき)を描く特に、ト書きや設定を説明的に

描かないで生活で徐々ににおわせているのは

あの是枝監督の「誰も知らない」ともつながる。

 

更に、「アレノ」では女(=牝)を演じていた山田真歩が、

しっかりと少年の母となって生活をしているし、貫地谷しほりが

説明なく登場していても、少年への目つき、しぐさでの

「実の母」の思いが伝わってくる。(少年と暮らせない悲しみの

表情が年をとっている彼女の顔が壮絶に美しい)

 

で、話は、大昔の大映ドラマみたいに技とらしく

単純であるにであるが、それを上記のドキュメンタリー方式で

本物さがある演出であり、リアルに感じられるし、

山田真歩と貫地谷しほりの無言での対話が圧巻の迫力がある。

特に船での二人きりでの対話のシーンが良い。

 

最後に「佳作未満」の未満の部分は、船の会話のシーンは

良いのであるが、出した結果があっけなく、いきなりのまとめすぎて

話に(それまでの貫地谷しほりの思いが・・・・)無理があるので

ラストは感動的とは言い難い。

(それよりは、「お母さんと仲直りして」の方が感動する)

惜しい、まとめ方であった。