今日の読書~『男の作法』 | ヒズモのブログ

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池波正太郎 著 『男の作法

新潮文庫(1984年)   定価:490円+税

 

ジュンク堂書店で目に入り購入。定年過ぎに読むには手遅れかと思いましたが、今の時代にも充分通用する男を磨く言葉がちりばめられた本であり、大変勉強になりました。

新潮社の紹介文です。

『てんぷら屋に行くときは腹をすかして行って、親の敵にでも会ったように揚げるそばからかぶりつくようにして食べなきゃ……。勘定、人事、組織、ネクタイ、日記、贈り物、小遣い、家具、酒、月給袋など百般にわたって、豊富な人生経験をもつ著者が、時代を超えた“男の常識”を語り、さりげなく“男の生き方”を説く。本書を一読すれば、あなたはもう、どこに出ても恥ずかしくない!』

 

池波正太郎氏は「鬼平犯科帳」等で有名な戦後を代表する時代小説、歴史小説作家ですが、1990年(平成2年)、急性白血病の為67歳で他界されています。単行本発売時(昭和56年)の「はじめに」にこう書かれています。「この本の中で私が語っていることは、かつては「男の常識」とされていたことばかりです。しかし、それは所詮、私の時代の常識であり、現代の男たちには恐らく実行不可能でありましょう。…(中略)…とはいえ「他山の石」ということわざもあります。男をみがくという問題を考えると、本書はささやかながら一つのきっかけぐらいにはなろうかと思います。」

 

購入した文庫本は平成29年9月発行でなんと98刷、つまり、昭和59年の文庫初版から現代までずっと読まれ続けている名著なのです。時代を越えて知っておくべき「男の作法」というものが語られています。読んでいて多くの項目について、なるほどと気づきを得ることができました。

 

私の心に響いた箇所の一部を引用させていただきます。

 

やはり、顔というものは変わりますよ。だいたい若いうちからいい顔というものはない。男の顔をいい顔に変えて行くということが男をみがくことなんだよ。」(P23)

 

「何の利害関係もない第三者の目に映った自分を見て、普段なかなか自分自身ではわからないことを教えられる、それが旅へ出る意味の一つですよ。」(P27)

 

てんぷら屋に行くときは腹をすかして行って、親の敵にでも会ったように揚げるそばからかぶりつくようにして食べていかなきゃ、てんぷら屋のおやじは喜ばないんだよ。」(P84)

 

「お刺身を食べる時に、たいていの人はわさびを取ってお醤油で溶いちゃうだろう。あれはつまらないよ。刺身の上にわさびをちょっと乗せて、それにお醤油をちょっとつけて食べればいいんだ。そうしないとわさびの香りがぬけちゃう。醤油も濁って新鮮でなくなるしね。それから刺身にはつまとして穂じそなんてのがついてくる。それもみんなあれもやっぱり香りがなくなっちゃうんだよ。あれは刺身の合いの手に手でつまんで口に入れるから香りがいいわけ。それでこそ薬味になる。」(P87-88)

 

「余裕を持って生きるということは、時間の余裕を絶えずつくっておくということに他ならない。一日の流れ、一月の流れを前もって考え、自分に合わせて、わかっていることはすべて予定を書き入れて余分な時間を生み出す……そうすることが、つまり人生の余裕をつくることなんだよ。」(P98)

 

「たとえばドストエフスキーでもトルストイでも若いうちでないと読めないんだ、あの厖大な文学はね。もう四十になったら根気がなくなって読めないんだよ。若いうちはいろんなことができるんだから、ディスコで踊り狂って、女の子を公園に引っぱり込むとか、そんなことばかりしないで、その余剰時間とエネルギーをほかのものにふり向けていかないとね。」(P118-119)

 

「何度もいうように、「人間は自分のことはわからない…」ものなんだ。だから、他人が言ってくれたことはやっぱり素直に聞かないとね。」(P156)

 

「コップになみなみ注がないで、三分の一くらい注いで、それを飲みほしては入れ、飲みほしては入れして飲むのがビールの本当のうまい飲みかたなんですよ。」(P176)

 

「人間の一生は、半分は運命的に決まっているかもしれない。だけど、残りの半分はやっぱりその人自身の問題です。みがくべきときに、男をみがくか、みがかないか…結局はそれが一番肝心ということですよ。それならば、男は何でみがくか。基本はさっきもいった通り、「人間は死ぬ……」という、この簡明な事実をできるだけ若い頃から意識することにある。…(中略)…そうなってくると、自分のまわりのすべてのものが、自分をみがくための「みがき砂」だということがわかる。」(P202)

 

この本は池波正太郎氏が「若い友人」佐藤隆介氏のさまざまな質問に対しての「語りおろし」ですが、味わい深く、この本でのアドバイスを活かし、残りの人生を充実したものにしなければと思いました。

 

 

お読みいただき、ありがとうございます。