#9 道は見えるのに道ではない | Hi-ROAD

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道を走り続ける者の記録。

そこに明らかに行ってはいけないという案内があるのに脳が理解できない。

 

尾根の道を歩いてきて下りに差し掛かる。

 

正面には再び上る道が見えている。

 

 

まっすぐ歩けそうに見えるでしょ。

 

 

その尾根の道の向こうには標石が点々と見えている。

 

明らかに道と分かる。

 

ただし。

 

 

手前には「入るな!」とロープが張ってある。

 

目の前の道を捨てて左へ下れと言う。

 

とりあえずGPSにポイントを打って標石のある”入るな”道に入っていく。

 

その先もずっと標石はあり、道の様相を呈している。

 

確実に行ける。

 

しばらく歩くが行ける。

 

 

 

後ろ髪をひかれながらロープの地点まで戻ってくる。

 

よく遭難する人は山から下りようとして下ると聞く。

 

下りきって間違えだと気づいたときには登る体力がない。。とか。

 

この道は全く人が通らないわけではなさそうだ、ある程度管理されているはず。

 

ロープも信じていいはずだ、ゆっくり考えればわかるし頼りないなら道なりに少し進んでみればいいのだが、焦るというのはとてもよくない。

 

冷静だと思っていたのに道に見えるところから外れて(下り道は尾根の道と比べて一見道に見えにくい)下れと指示されると雑念が邪魔をしてしまった。

 

素直に下ればいいのに。

 

 

もし迷ったらどうしよう。

 

またここへ戻ってきてやり直すにも時間は残り少ない。

 

しかし間違えたと気づいて戻ってきてももう一方の道を行くしか下る方法はない。

 

もしかしたら日が暮れるかもしれない。

 

諦めて峠頂上を通って引き返してたら確実に日は暮れる。

 

ライトの光を頼りに下りきるのか、それともじっと闇の中で朝を待つのか。

 

どちらの選択を迫られてもそのとき安全だと思う方を取ろうとちょっと覚悟は決めた。

 

 

 

なんてことはない。

 

少し下の道を進めばピンクのリボン。

 

 

そして人が歩ける場所が人為的に造られている。

 

そのまま道なりに進む。

 

 

見上げた”入るな”の尾根の道。

 

向こうを歩いていたらどうなっていたのだろう。

 

道の結末は見られたかもしれない。

 

崩落で終了なのか、思いのほか違う方向に道が続いていて変な方へ導かれていたのか。

 

 

道なりに行くとここにも分岐がある。

 

方向的にも高度も明らかに違うとわかるので、ここは疑念を持たなかった、素直に九十九を下る。

 

 

いたるところに管理されていると思われる跡がある。

 

 

やがて17番観音様が現れ道が正しいことが証明される。

 

等間隔ではないものの観音様に見守られているので次の観音様がなかなか出てこない時点で道を間違えたことにも気づけるだろう。

 

 

汗馬沢近くで人工物を見つける。

 

人が生活していて炭が必要であった時代にはここで作っていたのだろう。

 

 

道沿いに5軒の茶屋がひしめき建っていた。

 

そこで一休みしていこう。

 

既に8人程の先客がいた。

 

 

といったところだろうか。

 

 

この看板の文字を読んで鍬を探した。

 

8年前の記憶はおぼろげだ、その時これを見たかもしれないが覚えていない。

 

 

跡が残らないほど軽く地面の土をさらってみたが先端がどんな農具なのか確認はできなかった。

 

そっと土を戻した。

 

看板によると最遅でも1954年昭和29年これ以降ここに人が住んでいようだ。

 

それより放置されどのくらいの年月が経ったのか。

 

現在も飲み込まれ続けている。