『みんなでお茶を』 第19話 | ヽ(´∇`)ノ日和♪

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名もない林の中に


そのお店はあった。


都会の喧騒から


少し離れた林の中。


7月の陽気の中、


アリス・ペンドルトンは


いつものように店の戸を開けた。



店の中では


いつものように


レナードが新聞を広げて


珈琲を楽しんでいる。



「やあ、アリス・・・


その格好、舞踏会にでも行くの?」



中世風のドレスで着飾ったアリス。


上品にアップされた髪は


貴婦人のそれだった。


くるくるとステップを踏みながら


嬉しそうに話す。



「聞いて、レナード♪


オーディションで受かって役をもらったの♪」



「すごいね! 何の役?」



「台本では『貴婦人D』って書いてある。


まあ、脇役よね・・・」



はにかむアリスに


レナードは微笑んだ。



「何にしてもおめでとう♪」



「この衣装・・・ 一度着たら脱げないのよね・・・」



「貴婦人には努力が付き物だよ」


屈託のないレナードの笑みに


アリスも中世風のお辞儀で応えた。


ふと辺りを見渡すと


シェルドンの姿がない。



「レナード? 


今日はシェルドンいないの?」



「シェルドンなら教会のバザーで


ボランティアに行ってるよ」



「残念!


甘いものが欲しかったのにな・・・」



レナードはアリスの姿を見ながら


少し考えた。



「・・・ショコラは貴婦人の飲み物だ」



「?」



「試してみよう、きっと気に入る」



ショコラ=ココアの原料となる


カカオをコロンブスが持ち帰ったのは


大航海時代のことだ。


以来、カカオは金貨に相当する


貴重なものになった。



この高価な飲み物は


ルイ14世の時代に


サロンの貴婦人たちの間で


密かなブームになった。



レナードは、


ショコラ専用に用意していた


バラの柄のカップを用意して


小さなピッチャーと、クリームを添えて


アリスに差し出した。



「これってココア?」



「そうとも言うね。 まずは香りを楽しんで」



アリスは、


言われた通りに香りを嗅いだ。


きめの細やかなカカオの風味に


泡の上にかかったシナモンが


ほんのりと香る。


飲む前から


溜め息の出る安らぎだった。


ひとくち飲めば


身体の隅々まで


充足感が沁み渡る。



「美味しい~」



アリスのにこやかな笑みを見て


レナードも笑顔になる。


ふとピッチャーを見たアリスが問う。



「これはおかわり?」



「まあ、二杯目のお楽しみだね」



飲み終えたカップに


ピッチャーからショコラを注ぐ。


レナードの指示で、今度は


クリームをたっぷりとスプーンですくい


ショコラに浮かせてみた。


一杯目とは


明らかに違う味わい。


チョコレートの味にとても近く、


マイルドなコクが楽しめた。



「お楽しみって、このことね♪」



アリスの可愛らしい微笑みを見て


レナードは言った。



「貴婦人の午後ってのは


こうあるべきだ」





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