結果から言うと見事な切れ痔であった。

肛門科を訪れる前同僚に、これ程切れ痔を渇望した事は無い。私は世界一切れ痔を願う女。と号泣しながら悲劇のヒロインぶっておいたのが項を期したのであろう。
先生のパソコン画面に時計みたいなんあるなと思ったら赤線を書き込み痔の位置を教えてくれた。3時の方角である。

その後しばらくしてまた肋骨が嫌な痛みを発し始め、背中も重く痛くなってきたので私はその肛門科を尋ねてみた。

これは大体肩甲骨下辺りが痛み出すのだ。血液の流れだなんだで済ませられる話なのに検索結果に膵臓や肝臓を出してくるのが世界の悪意を感じる。検索するな。


お尻を診てくれた肛門科は消化器内科も兼ねており腹部エコーが可能との事なので病気不安症模範生な私はいっちょ見とくか!と悶え苦しみながら決意したのだ。





幸いにもそこの病院ではまだ逆流性食道炎の事は吐いていなかったのでスムーズにエコーとレントゲンをしてもらえた。結果臓器、肋骨共にオールクリアとなった。
「後は肋間神経痛か、胃かもねぇ」
大病院出身の先生の言葉に震えることしかできない。
なんで胃くんはエコーに映らないのか。恥ずかしがり屋にも程がある。そのせいであの原始的な検査があるんだぞ。とちょっと他人と違う私を演じる胃に遺憾の意を表明。胃だけに。


「カメラ飲んでみようか」
その時私に電流走る。

「逆流性食道炎の薬飲んでたし」
お薬手帳を見せていた。


そう、私に3時の方角を示したこの先生もまた内視鏡自信ニキだったのである。

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その後胃カメラ前に臓物クリーニング事月経が止まり、食欲を失いめちゃくちゃ痩せるなど明らかに胃カメラがストレスですよと言わんばかりの私は、抵抗虚しく遂に当日を迎えてしまった。
全く痛くなかった胃が突然「痛いです」と言い出す当たり悪い意味で空気を読んでいる。痩せたのも相まって「胃〇〇だ!」と騒ぐ私。
さすが病気不安症模範生である。痛いと思えば無限に痛くなれる。
異能力者でいいやろこんなもん。


私はとにかく予習をした。どうしたら素晴らしく楽に胃カメラを飲めるかを。その手順を。

検索欄は

胃カメラ 楽
胃カメラ 鼻から
胃カメラ コツ

などがずらりと並ぶ。
検索の合間には

胃カメラ 回避

が何度も往生際悪く入っているが結果は「楽になった胃カメラ」「胃カメラはもう怖くない」等出てくるだけである。
私の話を聞いてないだろこいつら、求めてる答えはそれじゃない。なんかもう助けてくれ。

余談だがついでに同僚達が「寝てる間に終わるよ!大丈夫!」「寝かせてくれるから!」と私を励ましてくれたのだが、施設の方針でそんなものは無いと言うことが後々判明し回転するミンミンゼミと化してしまった。
そして自慢じゃないが右の鼻は鼻炎気味なので左の鼻に通らなかったら口から麻酔無しをぶち込まれる事が確定していた。
ここに来てギャンブル要素を増やすなとまた転がり散らかす。できる限りのあの手この手を使い鼻の穴を広げまくっていた姿は滑稽そのものであった。



連行された部屋。晴れた日の朝だった。優しい光が磨りガラス越しにまったりと私を温めてくれた。顔は白目を剥いている。

胃の泡を消す薬はポカリっぽいと予習していたが思いのほか薄めたポカリだったし、鼻からのジェルは普通に飲んでいいと言われたが嘔吐反射自信ネキ私は危険を察知してできる限り喉でキャッチして喉を麻酔しようと耐え忍んでいた。


看護師さんの「先生お上手だから、大丈夫……」が逆に不安を煽ってきたのがなんだか場違いに面白かった。
準備出来ました、の掛け声と共に暗くなる部屋。現れるニコニコの先生。全くもはや検査結果よりも胃カメラが恐ろしくて心の準備が出来ていない私。

こうして戦いの幕が切って落とされた。