内なる声を発する。声に出して表現する、その声を聞く。

そして記憶にある声や物事を思い出す。

齢を取ると記憶に畜めるより忘れるスピードが速いせいか、

脳の細胞のキャパシティが一杯になってしまったのか、

受け付けなくなったのか、今はそれぞれの記憶の判別がつかなくなった。

樋口正一郎「記憶のエコー」 2022  F15号 アクリル絵具

 

樋口正一郎「星づく夜」 2022  F15号 アクリル絵具

 

樋口正一郎 「記憶を見る」 2022  F15号 アクリル絵具

 

         霧の中で迷走、迷妄と言ったらいいのか、ストレートに記憶に辿れないのだ。

銀河の星づく夜に、星座を求めて、焦点の定まらぬ漂流を続けている感じなのだ。

ボヤけて見えない。妻や友人の声もなんだか分からない。

 そして、自分の声もハウリングするようなエコーのような雑音になって虚空に吸い込まれてゆく。

 

         怖いから言えないが、アルツハイマーあるいは認知症になって

脳細胞に隙間ができ、細胞が死滅し、ポッカリ空洞ができ、

段々無神経から無感覚への人間を放棄した存在になってしまうのか。

 

         つまり、人間にとって、自由を獲得とは

人間の上昇志向「もっと」というエゴをいかに放棄するかにかかっている。

         アルツハイマ-は自由への早道、認知症は自由へのたしなみであり、

人間性からの解放なのだが、なぜか、人は避けたく、拒否したくなる。

そしてそれがエゴである。