かつて私は千駄ヶ谷プールで飛び込みの講習会があって

参加したことがある。プールで泳ぐだけでは面白くない。

陸上を走る時、空気の密度や圧力をどんどん高めてゆくと、

水の中を走るような抵抗になるのだろう。

誰もが夢の中で、金縛りになってもがいても、まるで埒がいかないあの感じなのだろうか。

 

          TOKYO2020。飛び込みを見ていて、演技者は何を感じ、

何を考えているのか気になった。

私の場合、3mの高さの板飛び込みでは、板の反動を使うと、頭の位置は6m近くになる。

そして、重力の法則で自分は板に落ちてくる感じがするのだ。

痛い目に合うのがいやだとイメージでは70度前方に踏み切つて逃げ、

高くは飛ばない。固定台から飛び込む感じなのだ。

 

          恐怖感は天井がすぐ上という10mの高跳び台では、

まず、天地の逆転に足が竦む。講習会といえども、

一旦10mの台に上がった人は恐れをなしても階段を降りることはできない。

そして、下を覗けば飛び込みプールは小さく、最初の一発目は走って足から飛び込み、

それから前屈し頭から落ちてゆく。

 

           飛び込みと言えば海外の観光地の岸壁からの両手を広げたスワロー、

あるいはトビウオの飛翔を誰もが憧れるものだろう。

しかし、実際は高さの恐怖心でなんでこんなことなってしまったのか懺悔と後悔ばかりで、

重力を忘れイヴ・クラインの窓から飛び出す

有名な写真の恰好良いシーンなど夢のまた夢なのだ。

 

          しかし、台から落下する0.5秒ほどの空白の時間、

通常の高さから言えば生死を分ける空間から水に入る瞬間、

現実に戻る。生きていることを実感する。

 

          アメリカで宇宙旅行が話題になっている。

これも成層圏から宇宙空間に突入し、

放物線を描いて地球の重力圏へ戻ってくる短時間の異次元、

次元の割れ目を体験する行為だと思った。

 

写真は2点ともwebより