5年程前のドローイングである。

A版の紙にアクリル絵具。2.5cm幅のペンキ用刷毛を使っています。

本来、絵具の色が混色してゆくのを嫌っているのですが、

ここでは、やけくそ気分で、

敢えて自分が求める目的とは無関係の混濁した世界に身を任せようとしました。

 

どんな色を紙に塗って行っても、出自の違いをアピ-ルするでもなし、

混色という区別を消す行為は一敗地にまみれる感じで、

大袈裟に言えば人間世界に流れる無常を見た気もした。

 

     当然、上部の1回目の刷毛で塗った絵具は、原色を維持しているが、

段々紙の中間下になるに従い、絵具の洪水の無秩序状態になる。

表現者がコントロールを放棄し、マゾ的な諦めと、

自分が表現者として目的到達しなくても許される気軽さを天秤に賭けながらも、

自分の限界とは別世界の出現をどこかで期待するのである。

 

     思い込みとエゴで固められた表現者の限界をどんな方法や行為と決別し、

新たな表現世界を開拓できるか。

自分の無知なる創造性のなさと「バカの壁」を知るには、

まずは己自身が見えるよう表現することだった。