このアトリエに越してきて以来、植物、動物、昆虫そして雨や風、

自然の動きに注意を払うようになった。

海外や東京の出版社や大学、画廊などに行かなくなって、

アトリエにいることが多くなったせいもある。

 

     今日は三点の写真を見てもらいたい。

アトリエの中心部に駐車場があり、コンクリートの舗装上を、

傍らに立つヒマラヤ杉の落ち葉が大雨の時、押し流されて「造形」を見せてくれる。

髪を梳くように針葉が長手方向に揃い、

厚みも4~5cmにもなる立体的な造形の美しさには、大雨の後の楽しみになっている。

髪を梳くように針葉が長手方向に揃った造形

 

     ナメクジの徘徊の痕跡も面白い「造形」で好きだ。

プレハブアトリエの日当たりの悪いジトジトした壁やガラス窓に生える緑色の藻のようなものを

イザッて食べた跡も不思議な「造形」になっている。

ナメクジの徘徊の痕跡

 

     もう一点、秋に美しい紅葉で迎えてくれる直径40cmもある自慢の楓が、

昨年の秋から傾向き、寝始めたのである。

木は動物と違って寝たりはしないのだが、冬を越え、春にはすっかり「寝て」しまった。

現在は西側に立つ八重桜に押し掛かり、その枝を折り、

傍らの梅の木と棕櫚の木にまで寄りかかりながら奥に行く道を塞いでいる。

 寝ん寝した楓の木

     人間から見れば、動植物も好き勝手に色や形態、大きさ、生死も、

時間旅行を営んでいるのだろう。

人間はそれらの生き様の組み合わせと関係のバリエーションの多様性には

膨大すぎてついてゆけない。余りに果てしないので諦めた。

 

      SF映画の人間の創造力の貧弱さはこんなものかということになる。