15年ほど前、台湾政府のアートディレクターから電話とFAXで、
台北から高雄にかけ、台南、台中も含め、月曜日から金曜日まで、
「世界のパブリックアート」のレクチュアをするよう要請があった。
その時、丁度SARSが台湾でも猛威を振るっており、
残念ながら出席は叶わなかった。
ただ、そのきっかけとなる橋渡しをしてくれたのが、
台湾で活躍を続ける、山口県の彫刻家・田辺武さんからの推薦ということもあり、
今回の台湾行きで、田辺さんの台北の作品を数点見てきた
一点目は、台湾で一番の商業とビジネスの中心地
台北101タワーのすぐそば、中国石油社の玄関脇に設置されている、
いかにも重そうな玉石を鉄の板でつくられた楔で受け止めようとする作品。
目の上のたんこぶである中国を楔で割ろうとする比喩なのだろうか。
世界の大都市が抱える人口分散のための郊外の整備で、
%法が健在な台湾の地下鉄駅にも必ずパブリックアートが設置されている。
日本の前田建設と奥村組が手掛けて、
2014年開通の地下鉄「松山新店線」の終点・新店駅は乗降者も多く、
広い構内の内や外に花崗岩や金属を使って、ベンチなどに使える環境型の作品が点在している。
新幹線や在来線、地下鉄などの集積する台北駅に対し、
東京で言ったら新宿駅か上野駅といった板橋駅に隣接した公園にある
大きな噴水の作品は水が出ていなくて残念だった。
大陸中国と様々に渡りあわなくてはならない
台湾の意欲的な都市環境づくりに、
伝統的で工芸的な装飾性の強い立体造形の中で、
田辺さんの協力が現代美術の面白さを台湾に根付かせているのではないだろうか