朝から夜遅くまで、いつも100人以上の老若男女が嬉々として

「クラウド ゲート」に群がっているのを見れば、

人類のつくったUFOに遭遇できた興奮を顔や体で表現せざるを得ない。

(c)s.higuchi

 

(c)s.higuchi

 

   シカゴ中心部に降り立ったステンレス鏡面の巨大ビーナスの尻といった形態。

訪れた人は必ず作品のどこかに映り込み、周辺のビル群や公園とともに、

もう一つの地球に存在する自身を客観的に確認することになる。

(c)s.higuchi   私自身も映りこんでいます

 

見るだけのものから、SF映画に登場させるためのイベント型、参加型セットとも言える。

 

 

  そして、中央部下入り込めば、

作品の外側がブラックホールのように世界を吸い込み、

女性器のような鞍部から新たな世界を生み出すような装置なのかもしれないと思えてくる。

 

 

  制作者の彫刻家アニッシュ・カプーアがインド系イギリス人であるから、

「輪廻」を思い浮かべてしまうのか。

それにしても、宇宙にいるような濃紺の空の下、

魚眼レンズで見るように地球を凝縮し、汚れがつきようのない、

つかみどころのないツルツルした姿からは

溜めた垢を地球も人間も削り落とし、脱ぎ捨て清清しい身軽な気分になる。

 

 

〔データ〕

制作者:アニッシュ・カプーア

最終制作年:2006年5月15日

大きさ:高さ10m、幅20m、奥行き13m。重量99.8トン

外装シェル:厚み1cmのステンレス製パネル168枚

費用:予算時600万ドル、最終2300万ドル。すべて個人と企業の寄付で賄う

作品は1000年間の保障付

清掃:1日に2回の手作業清掃、全体は1年に2回の清掃が義務つけられている