ともさかりえ「少女ロボット」
女優として活躍中のともさかさんの、8枚目にして現時点でのラストシングル。椎名林檎さんがプロデュースした事で話題となりました。
ノイズっぽく歪んだギターとピアノの音色が、なんとも不安な気持ちにさせる曲です。テンポもあってノリもよく、メロディ自体の流れも特に不自然ではないのですが、なんとなく不協和音というものを強く感じさせます。メロディは大まかに2パターンしかないシンプルな作りで、サビっぽい部分(♪振り返ればいつも~ のメロディの部分)もけっこうくり返すので、キャッチーさもあるはずなのですが、どうにも心を逆撫でさせるような気分になります。
そしてともさかさんのボーカル。「愛してる」では、作者の古内東子さんが乗り移ったような鼻声歌唱を見せていましたが、こちらもまるで椎名林檎さんが憑依したかのようなボーカルです。裏声へのもってき方とかモノマネしているみたいでびっくりです。ここまで自分のボーカルスタイルを消せるのはある意味すごい事だと思います。
というわけで、ボーカルもなんとなく不機嫌で不安定な気持ちにさせる歌い方です。ともさかさん自身が若干舌足らずなのも、さらに拍車をかけています。感度の悪いラジオのようなエフェクトもかかっているよね?
歌詞もなんだかわかったようなわからないような、という林檎節で、“錆付いた快楽”や“果敢無い記号”みたいなそれっぽい言葉もあります。突然“佞言(ねいげん)は忠に似たり”なんてのが飛び出したりもします。へつらいの言葉は忠義の言葉に似ているので注意して聞かなければいけない、という意味だそうです。初めて聞きましたよ。ですます調が出てくるのもなんか居心地の悪い感じです。
ただ、自分自身があまり好きではなく、あなたとの関係も期待したようではなく、自暴自棄なように見せて実は捨てきれずに執着している、という感じが伝わってきます。そしてとにかくとても不機嫌そうです。よく考えたら、少女の要素もロボットの要素もあんまりないのですが、なんで「少女ロボット」なんでしょうか?
というわけで、あまりに椎名さんサイドに寄せすぎたため、なんだか椎名林檎のニセモノみたいに聞こえてしまって、うまい相乗効果が出なかったような、惜しい気持ちになる曲でした。
「少女ロボット」ともさかりえ
作詞:シーナ・リンゴ
作曲:シーナ・リンゴ
編曲:シーナ・リンゴ