AinoArika #72 | UNION Hey! Say! JUMP×妄想小説

UNION Hey! Say! JUMP×妄想小説

JUMPくんに癒されている毎日です。
9人が好き!大ちゃんが好き!!
いのありコンビも好きなNatsukiが
JUMPくんの妄想小説を書いています。
登場人物は実在の方とは一切関係ありません。
ご理解いただけた方のみご覧ください。

『ここで少し待ってていただけますか?』


ずっと心ここにあらずのままショーが終わり、夜空を彩った花火の煙もなくなり、大勢いた周囲の人たちも少しまばらになり始めたころ、小山さんは言った。



『すぐに戻ってきます。』


「小山さん?」


『ほんとにすぐ戻ってきます。ほんっとにすぐ戻りますから。だから少しだけここで待っててください。』


そう言って小山さんは大勢の人の中へ消えていった。


そんな小山さんが一体どこへ行ったのか、何をしに行ったのかそれを考えることもなくここから少し離れた場所、・・・、プレス専用エリアへ目を向けた。




今は誰もいなくなったそのエリアにいたのはテレビの取材クルーとそして、・・・。


「・・・、大ちゃん、・・・。」



離れているここからでもはっきり分かった。


お昼の情報番組、大ちゃんと共演してる女性タレントさん二人と光くん、そして大ちゃんがプレス専用エリアでお城に映し出されるプロジェクションマッピング、夜空を彩る花火を見ていた。



それをこの場所から見たとき、・・・、ううん、違う、飲み物を買ってきてくれる小山さんをベンチで待っていたとき聞こえたキャストさんと番組スタッフさんの姿を見たときから、私の心はざわついていた。


今思えばそのときから心ここにあらずだった。


暗闇や絶叫系が苦手な小山さんを微笑ましく思いながら、小山さんと一緒にいることが楽しいと感じながらそれでも心は、気持ちは小山さんのそばにいなかった。




「大ちゃん、・・・。」



私、今なら分かる。


小山さんが出張のお土産だと言って買ってきてくれたゴマのお饅頭。


小山さん行きつけの居酒屋さんにテレビの取材がきたこと。


小山さんお勧めのカフェで一番人気のスイーツ、綿あめがのったコーヒーゼリーを口にしたこと。

そして今日、・・・、夢と魔法の王国と呼ばれるこの場所に日付指定がないパスポートに今日という日を選んで足を運んだこと。



全部あなたを指してた。



ロケで食べたゴマのお饅頭がおいしくて私にも食べてほしいと買ってきてくれたこと。


今日と同じ、お昼の情報番組のロケであの居酒屋さんに行き、私がおいしいと言ったあの巻き玉子をあなたが食べたこと。


コーヒーが苦手なあなたが食べた大きな綿あめがのったコーヒーゼリー、それをコーヒーが好きな私が食べたいと言うと驚きながらもそうだよね、って言ってくれたこと。


この夢と魔法の王国にあなたが仕事でくる今日と同じ日を選んだかのようにここにきたこと。

 






全部、全部あなたを指してた。


自分がどうするべきなのか、何を大切にしなきゃいけないのか答えは全部近くにあった。


あなたが好きなのに、それを分かってて小山さんと一緒にいることを選んだ私なのにあなたはいつもそばにいた。




人が大勢集まる場所を手をつないで歩く。


流行りのお店の行列に並ぶ。


今いるこんなテーマパークで一緒にはしゃぐ。


あなたとはできないことだけど、小山さんとならできる。


小山さんとなら好きな場所に自由に行ける、好きなことを人目を気にせずなんでもできる、・・・、って私なんてバカだったの。



そんなこと、どうだっていい。


何が一番大切なのか、今はっきり分かった。




「大ちゃん、ごめんなさい。私、今はっきり分かった。」


誰もいなくなったプレス専用エリアに視線を向けたまま私は携帯を取り出した。



すぐに大ちゃんの番号をタップしようとしたけど、そればダメ。


今取材を終えたばかり。


大ちゃんに迷惑はかけたくない。


こう思い直し大ちゃんの番号をタップする代わりにメッセージを送ろうとアプリを立ち上げた。



”大ちゃん、ごめんなさい。”


この言葉がメッセージの始まり。


そしてこの言葉のあと、私は大ちゃんへ伝えたい、伝えなきゃいけない言葉を送った。





メッセージを送ったあとスマホの画面を上へスクロールしていく。



雲一つない真っ青な青空。


賑やかな夜の街並み。


黄色、紫、赤、色とりどりの花が植えられた中央分離帯に並ぶハンギングバスケット。


数人のスタッフさんと思われる人たちがカメラや照明を準備してる姿。


リュックやカバンが置かれたソファーや、台本や雑誌が広げられているテーブルがある楽屋。


ベースを手にしてる光くんや、難しい顔をして本を読んでる伊野尾くん。


変な顔をしてピースサインをしてる一度店に来てくれたことがある中島くん。


そして、・・・、大ちゃんの部屋のベランダで咲いた咲かせることが難しい黄色い花。



大ちゃんが撮ったたくさんの写真。


その写真たちと一緒に大ちゃんがくれたたくさんのメッセージ。



大ちゃんの何気ない毎日。

 

大ちゃんの何気ない日常。



それまで当たり前だった私と一緒に過ごす時間。


それがなくなっても大ちゃんが送ってくれた毎日メッセージはもう数え切れないくらい私のスマホに存在している。




-何があっても絶対負けないよ。もう一度莉夏さんと恋をするって決めてるから。-



小山さんを部屋へ誘ったあの日、夜遅くに気付いた大ちゃんからのメッセージ。



あの日私の部屋の前にいた大ちゃん。


どうしても渡したいものがあったから来たんだ、と言った大ちゃんが部屋のドアノブに残していったコンビニのビニール袋には赤いバラの入浴剤が一つ入っていた。


一つの赤いバラの入浴剤が意味すること、・・・。


それは一本の赤いバラの花が持つ花言葉だとすぐに分かった。


大ちゃんが何を伝えたかったのか分かっていたのに、私はその大ちゃんの想いに気付かないふりをして小山さんと今日まで一緒に過ごしてきた。

 


「・・・、ごめんなさい。」


ぽつり謝った私の目は大ちゃんが送ってくれた毎日メッセージの文字と写真たちが滲んで映る。


滲んだ視界のまま私は自分の首元にあるネックレスに触れた。


大ちゃんの気持ちが込められたネックレスについている小さなプレート。



”to R…With everlasting love…from D”


永遠の愛を込めて、・・・。

 



「ごめんなさい、大ちゃん。あなたが許してくれるなら私ももう一度あなたと恋をしたい。」






私の視界はますます滲み、ショーが終わったあと、さらにきれいにライトアップされたシンデレラ城はもうその姿がわからないくらいになっていた。



滲んだ視界のまま片方の手はスマホを握り、もう片方の手は首元のネックレスに触れる。




どれくらいそうしてただろう?


自分の周囲にいたたくさんの人たちはいつの間にかまばらなっていた。


少しましになった視界でシンデレラ城を見上げると、城の時計はもうすぐ閉演時間を示そうとしていた。


このときになって初めて気付いた。



-ほんとにすぐ戻りますから。-


そう言ってどこかへ行ってしまった小山さんがまだ戻ってこないことに。



そして思った。


私が謝らなきゃいけない人は大ちゃん一人だけじゃないんだ、・・・、って。