泣いた場面は、ひとつもなかった。
胸にグッときたのは、広瀬のおやっさんの最期だけ。
染谷の所は、巌見が迫った卑怯な選択に対して、
桐生さんはどうしただろう?と思った。
もしあそこで南雲が来なかったら、
桐生さんはどうしてた?
巌見が三つ数え終わるまでに、染谷と清美ママ二人を救う方法を見つけられたか?
どちらにしても、染谷は自ら命を絶っただろう。
ただ、そこだけすごく気になってしまった。
巌見と菅井は、腐れ外道だ。
殴る価値もない、小物だって感じるんだよ。
そういう台詞、これまでに言ってなかったっけ?
巌見のような人間は、中ボスクラスだよ。
私は、ここも残念に感じてしまった。
遥に対しては、怒りも苛立ちも特に湧いてこない。
『龍が如く 極』の時点で、どうでもいいって感情になってるから。
勇太に任せることができて、
やっと呪縛から解き放たれた気分だ。
これから桐生さんがどんな人生を歩むのかは、わからない。
誰も知らない場所で、ひっそりと生きるのか。
遥たちにまた危険が迫れば、陰から守るということをするかもしれない。
いっそのこと、記憶をなくしてしまえばいいのに。
戻って来なくてもいい。
自由に、好きなように生きて欲しいと思う。
本当に、もう思い残すことはないと吹っ切れるくらいに。
そんな姿を、最後に見届けたい。