Accounting, Tax and M&A -22ページ目

Accounting, Tax and M&A

会計、税務、M&A等の話題についての分析、雑感、というか趣味の備忘録です。もちろんインサイダーではありませんので、全て開示情報と報道に基づくもので、推測を含みます。暇なときに更新しますので、頻度は低いです。ご了承下さい。


ソフトバンクのIFRS適用後初となる2013年度第1四半期決算の短信が発表されました。

このブログでも取り上げていたイー・アクセス、ガンホーの子会社化等の影響も開示されていますので、ブログ記載内容の答え合わせを兼ねて、チェックしてみましょう。

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まずはガンホーです。

4月1日に有効となる契約により支配を獲得するということで、IFRS上、この時点で既存の投資持分33.6%の公正価値評価を行っています。

採用した市場株価は3月の最終営業日である3月29日の終値39,650円で時価1,536億円(時価評価益で1,501億円)。当ブログでは4月1日の始値である39,050円で時価1,513億円と書いていたので、ちょっと違いましたね。

意外とこの点は諸説あるようにも思うものの、まあ3月末の終値というのが最もシンプルかな。ということで、3月末終値に言及しなかったことを反省します。

ちなみに、支配獲得日後に実施されたTOBによる追加取得を、既存子会社の買い増しとして取り扱うことで、本来のれんになる部分を資本剰余金のマイナスとして処理するのでは?という邪推については、そのような処理にはなっていませんでした。支配獲得の契約と纏めて単一の取引として処理したようです。

PPA(Purchase Price Allocation:取得対価の取得した資産・負債の時価及び暖簾への配分)においては、「ゲームタイトル」という無形資産を100%ベース778億円で認識しています。要するに、これがパズドラの2013/3末時点の価値ですね。償却期間は3年です。長いような気もしますが、どうでしょうか。

このPPAを反映させたガンホーの時価純資産は100%ベースで814億円(内、60%の488億円は非支配持分)です。株式時価総額は同じ3月末時点で4,559億円、本日8月2日の終値で1兆1,728億円ですので、プレミアムのほとんどは、無形資産としての識別・認識要件を満たさない「暖簾」ということになります。要するに、既にあるパズドラの価値ではなく、今後もパズドラ級のヒット作を継続的に生み出す力がこの会社の価値の源泉だということでしょう。減損しないといいですが。

尚、IFRS上認識した暖簾は1,460億円。支配獲得時の既存持分時価1,536億円+TOB取得対価250億円-時価純資産持分326億円(814億円×40%)=1,460億円という計算ですね。

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続いて、イー・アクセスです。

イー・アクセスは日本基準では持分99.5%ながら議決権を1/3にして連結外ししていたものを、IFRS上は実質基準で連結するというものです。

当ブログでは、いわゆる投資差額は単純計算で1,377億円(買収価額2,194億円-2012/12末純資産817億円)で、無形資産、暖簾等の内訳は今後の開示資料で判明すると書いてました。

しかし、開示された数字はちょっと意外なものでした。

まず買収価額は2,183億円。株式交換の対価2,194億円から持分0.5%/議決権66.7%の売却による収入11億円を控除しています。この11億円という対価はプレスリリースでは非開示とされていましたが、ここでバレちゃいましたね。

2,194億円×0.5%=11億円なので、ほぼ取得価額そのままで売却しています。本当なら持分とはアンバランスに議決権が付与された株式なので、同じ単価でいいのか??という疑問はありますが、まあ仕方なかったんでしょう。

ここまではいいのですが、問題はイー・アクセスの時価純資産です。

決算短信によれば、イー・アクセスの支配獲得時(2013年1月1日)の時価純資産は809億円です。これには「顧客との関係」という無形資産の評価847億円及びこれに係る繰延税金負債が想定305億円(税率36%で試算)含まれていますので、この無形資産の時価評価を除いた純資産は267億円しかないことになります。

一方、イー・アクセスの2012年12月末の簿価純資産は817億円でしたので、無形資産以外の要因で550億円も純資産評価が減少していることになります。

この減少要因をもう少し見てみると、非流動資産、流動負債、非流動負債は概ね無形資産の増減の影響に見合った動きとなっており、どうやら「流動資産」が簿価と時価の差額で400億円程度減少していることがわかります。

「流動資産」のより細かい内訳は開示されていないのですが、2012年12月末決算時の流動資産は現預金、売掛金、未収入金が主な内容なので、時価評価でそんなに減少するのか、疑問です。

IFRS上、日本基準で短期に区分されていた繰延税金資産については全て長期に表示が変更になりますが、この影響は大きくなさそうです(おそらく数十億円レベル)。

残る可能性としては、収益認識に係るGAAP差異の説明で、機種変更等の手数料を一括認識から平均端末利用期間での繰延べに変更されたとあるので、この影響で売掛金・未収入金が減少したのかも知れませんが、ちょっと詳細はわかりません。

ということで、結局、いわゆる投資差額としては、顧客との関係の時価評価(税効果後)542億円+暖簾1,378億円=1,920億円という仕上りでした。

ちなみに、非適格株式交換による税務上の営業権の時価評価については、特に新しい情報はありません。

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それと、更生手続きの完了により7月1日付で子会社化するウィルコムの公正価値評価も開示されていました。

これについては簿価3億円に対し時価1,041億円で、時価評価益1,038億円を第2四半期に計上するようです。簿価純資産で561億円でしたので、詳細は不明ですが、何らかの時価評価手法で計算したようです。

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そして、もう1つ気になったのは、2012年度の第1四半期で認識していた資本剰余金の減少512億円です。

これはまさに前回のブログエントリーで記載した、現在IFRSの改正議論中の論点に係るものです。

ソフトバンクの持分法投資先であるAlibaba Group Holdingが、同社の子会社であるAlibaba.comの株式をTOBにより追加取得したことで、Alibaba Group Holdingが資本剰余金の減少として処理したものを、ソフトバンクがその持分を、自らの資本剰余金の減少として計上したものです。

なるほど、IFRS上の取扱いは現状明確にはなっていませんので、そういう会計方針を選択したのでしょう。

あれ、でもこれって、IFRS初度適用による差異にはなっていないと思ったら、従来の日本基準においてもそのように処理していたのですね(恐縮ながらチェックしてませんでした)。

日本基準上の取扱いも勿論明確ではないと思いますので、なるほどそうしましたか、という感じ。

でもまさか、これが将来、持分法の適用停止時にPLで再認識することになるかも知れないなんて、おそらく考えてなかったでしょう。

今後結論が出るIFRSの改正動向及びその改正基準の遡及適用の内容次第では、ソフトバンクのPL/純利益という観点で多大な影響がありそうですね(子会社化or売却時に512億円の損失を認識する必要があるかも、ということ)。

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こうやってブログに書いたことの答え合わせをするのも面白いものです。

当らずとも遠からず、という感じでしたかね。

今回はIFRSの改正動向についての雑感です。

といっても、マイナーな限定的改正の話題で、個人的には非常に注目している「持分法投資先の純利益・OCI以外の資本変動(other net asset changes)」を投資家側でどのように会計処理するか、というものです。

この改正は2012年12月に公開草案が出され、パブリックコメントを受けて、7月のIFRIC(解釈委員会)で議論が再開されたところです。

そのIFRICでの会議資料(Staff Paper:IFRICの会議にStaffが準備したもの)がこれ↓。
http://www.ifrs.org/Meetings/MeetingDocs/Interpretations%20Committee/2013/July/AP05%20-%20July%202013%20IC%20-%20IAS28%20ED%20Equity%20method.pdf

会計が趣味なので、たまにはこういうのに目を通すのも面白いということで、ご紹介します。

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この公開草案の内容には個人的には大反対でしたが、その改正案の内容は以下の通りです。

(1) 持分法投資先のその他の資本変動は、投資元においても資本剰余金の変動として処理する。
(2) 持分法の適用を停止する時点で、過去に資本剰余金に計上した金額をPLに振り替える。

このような議論が出てきたのは、ストックオプションや非支配株主との資本取引等、持分法投資先のPLやOCIに計上されずに資本剰余金が直接変動する取引が増え、これを投資元が持分法適用上どう会計処理するか、実務にバラツキが発生しているからとのことです。

従来は、その他の資本変動の主なものは、増資や自己株取得等でしたが、こういった取引により投資元の持分が変動した場合、持分が増加する場合には追加取得、減少する場合には一部売却と見做した会計処理が一般的に行われていました。つまり、このような取引は、経済実態は投資元による投資の売買と同じなので、投資の売買とみなした会計処理が行われています。

例えば、投資元A社以外の株主が増資を引き受ければA社の出資比率は低下して持分純資産は増減しますので、実質的に売却を行ったのと同じ、投資先がA社以外の株主から自己株を取得すればA社の出資比率は高まり持分純資産も増減しますので、実質的に取得を行ったのと同じというわけです。これは米国会計基準や日本基準とも整合しています。

しかし、ストックオプションや非支配株主との資本取引により、投資元の出資比率が変動せずに持分のみが増減するケースが出てきたことから、そういう場合の会計処理については確かに実務上バラツキが出ているのかも知れません。

これに対し、この公開草案を見てみると、これらの取引を全てひっくるめて(つまり、取引の経済実態は無視して)、投資先の資本剰余金変動の持分を投資元においても資本剰余金として受け入れるとした点に非常に違和感があったわけです。しかも、その後、持分法適用を停止する際に資本剰余金からPLにリサイクルするというIFRS史上初の奇特な会計処理まで提案されています。

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さて、このような前提で、上記リンクのStaff Paperを見てみます。

集まったパブリックコメントは78件ですが、その内、約75%が公開草案の内容に反対しています。大手会計事務所のBIG4も軒並み反対。但し、反対意見も様々で、支配的な見解は出ていないようです。

まず登場する反対意見は、「他のIFRSの規定と整合しない」というものです。

これは個人的にも同意ですが、IFRS10号では連結グループの範囲は親会社と子会社とされ、持分法投資先の資本を連結グループの資本として処理するのはオカシイという議論です。IAS1号や概念フレームワークとも整合しないという指摘もあります。

でもStaffの反論は、「IASBはそんなことはわかってるが、それよりも短期的に実務のバラツキを抑えることを優先してるんだ」というものです。

他にも持分法投資の本質が「一行連結」なのか「投資の評価」に過ぎないのか、そういう本質の議論をすっ飛ばして実務処理を議論するのには反対、という意見も見られます。

でもStaffの反論はやはり、「そういう本質の議論はこれからなされる前提で、今は短期的に実務のバラツキを抑えることを優先してるんだ」というものです。

なるほど、そういう考え方もあるんですねぇ。

そして個人的に一番核心だと思っている「みなし取得/みなし売却」について、そういった経済実態を考慮して会計処理すべきだという反対意見も当然出てきています。わざわざこれを米国基準とのGAAP差異にするのか?現行の解釈でそんなに実務にバラツキはないのでは?という意見もあります。

それに対するStaffの反論は、「増資や自己株取得の経済実態が取得/売却に類似しているのは認めるが、直接売却/取得するケースと違って間接的な取引であり、この取引を投資元はコントロールできないのだから、会計処理も異なっていいんだ。これらの会計処理を揃えるのは、重要な影響力(持分法)と支配の概念の混同だ。」というものです。

そうなの??

この意見にはあまり賛同できません。投資元が投資の売却/取得をコントロールできない場合はPLに計上しないのでしょうか??投資元が株主割当増資に参加しない(=みなし売却を受け入れる)と意思決定した場合でもコントロールできないといえるのでしょうか??

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そして、結局StaffがIFRICに推奨したのは、「持分法投資先のその他の資本変動を投資元においてOCIで受入れ、持分法の適用停止時にPLにリサイクルするよう、IASBに公開草案の修正を提案する」というものです。

これは、他のIFRSの規定と整合しないという批判に対応して資本剰余金への計上を止め、でもPLに計上すると投資元の業績評価として違和感があるので、OCIにしようという意見です。

また定義がないのをいいことにOCIを利用するという発想なのか?思ったら、「OCIを一時的な"home"として活用しちゃえ!」という意見が日本の財務諸表利用者団体から寄せられているようですね。

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しかししかし、これを踏まえたIFRICの会議ではStaffの提案に異論が噴出したようです。

デロイトが纏めた議事概要(observer note)がこれです↓。
http://www.iasplus.com/en/meeting-notes/ifrs-ic-july-2013/ias28

IFRICは、OCIに計上するという結論はIFRSの概念や原則主義と整合せず、混乱を招くと主張。従来の解釈(みなし取得、みなし売却等)の方が、様々な経済実態を有する取引ごとに適切な会計処理になっているのでは?といった意見まで出ています。

いやいや、本当にその通りだと思いますよ。

ということで、本件は継続審議としてStaffに差し戻されたようです。

ちなみに私の意見は、増資や自己株取得のように投資元の持分比率が変動するものは従来通り経済実態に合わせてみなし取得/みなし売却、持分比率が変動しないものは、本当は個々の経済実態の分析が必要だが、短期的解決を優先するならPL又はOCI&リサイクルも許容、というものです。これがベストだと思うんですが、どうなんでしょう。

それでは、引き継ぎ議論の進展を楽しみに見守りたいと思います。
今回はかなり古いネタですが、ヤフーのデータセンター事業買収に係る税務否認についてです。

(現在係争中ですし、あくまで報道等に基づくもので、かなりの想像を含みます)

本件は、組織再編の包括否認規定が適用されたといわれる案件で、しかも一連の再編に対し、「2つ」の局面において税務当局による否認が行われています。

繰欠540億円の引継が否認された、繰欠が否認された場合に売主が負担する旨の契約が締結されていた、暖簾の償却が否認された等、多くの記事やブログにも書かれていますが、2つの否認案件を纏めて整理しているものがないようなので、じゃあ整理してみよう、ということです。

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まず市場の取引の時系列を整理してみましょう。

もともと、ヤフーの約40%株主であるソフトバンクは、データセンター事業を営むソフトバンクIDCソリューション(以下、IDCS)の株式を100%保有していました。このIDCSをヤフーが買収したわけですが、取引の流れは以下の通りです。

①2008年12月26日、ヤフーの代表取締役I氏がIDCSの取締役副社長に就任。
②2009年2月、IDCSが会社分割により営業部門を切り出し、100%子会社のIDCフロンティア(以下、IDCF)を新設。
③2009年2月24日、ソフトバンクがIDCS株式100%をヤフーに譲渡。
④2009年3月29日、IDCSがIDCF株式100%をヤフーに譲渡。
⑤2009年3月30日、ヤフーがIDCSを吸収合併。

かなり、ややこしいですね。

仕上りの形はIDCSを吸収合併したヤフーの下にIDCFが100%子会社として残っている状態です。

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本件で税務上論点となったのは以下の2点です。

(1)ヤフーとIDCSの適格合併においてIDCSの繰越欠損金の引継ぎが認められるか。

(2)IDCFの会社分割が非適格分割となり、暖簾(税務上の資産調整勘定)が認識されるか。

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まず(1)ですが、合併時点においてヤフーとIDCSは100%親子会社ですので、この合併は基本的に適格合併になります。このようなグループ内の適格合併の場合、繰越欠損金の引継ぎが自動的に認められるわけではありません。買収後5年を経過していない本件のようなケースでは、いわゆる「みなし共同事業要件」を満たす必要があります。

みなし共同事業要件の1つに経営参画要件というものがあり、要するに合併法人と被合併法人の各々の特定役員(常務以上の役員)1名以上が合併後も特定役員として継続する見込みがあること、という要件になっています(他の要件については特に問題にはなっていないものと思われます)。

ヤフーの主張は、ヤフーの代表取締役I氏はIDCSの取締役副社長であり、合併後も引き続き特定役員となる見込みであることから、この要件を満たすというものと思われます。

一方、これを否認した国税局側の主張は、I氏がIDCSの取締役に就任したのが買収の直前であり、形式的にこの要件を満たすためだけに行われた租税回避行為であるというものです。従い、形式的に要件を満たしていても、組織再編の行為計算否認の規定の適用により否認したようです。

IDCSの買収価額には繰越欠損金の価値210億円が含まれており、ヤフーにおいて繰越欠損金の引継ぎが否認された場合はソフトバンクがこれを補填する契約となっていたようです。この辺から察するに、I氏のIDCS取締役副社長の就任には税務上の意図もあったのでしょう、おそらく。

一方で、I氏がIDCSの経営に従事しているという実態があるのもおそらく事実でしょう。事業上の目的もあるし、税務上の目的もある。このような場合に組織再編の行為計算否認の規定が適用できるのか(組織再編の濫用により法人税が不当に減少したと言えるのか)、非常にシビれる判断になってくると思います。

ちなみに否認額は繰欠の金額で540億円、追徴税額で約265億円とのことです(売主であるソフトバンクが特別損失として認識)。

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次に(2)ですが、IDCFはIDCSが新設会社分割により設立した100%子会社で、通常であれば適格分割になり、分割法人(IDCS)における事業譲渡損益や分割承継法人(IDCF)における暖簾は認識されません。しかし、分割後に支配関係の継続が見込まれない場合は適格要件を満たさすことができず、非適格分割となります。

ここでヤフーが工夫(?)したのは、ソフトバンクからのIDCS株式の買収後、IDCSを合併する前日に、IDCF株式をIDCSから取得した点です。会社分割時点の支配関係は、(a)IDCSがIDCFを100%子会社として支配している関係と、(b)ソフトバンクがIDCS・IDCFの両社を支配している関係の2つが存在していましたが、ソフトバンクはヤフーにIDCS株式を譲渡しましたので、(b)の支配関係は継続しません。また、IDCSもIDCF株式をヤフーに譲渡しましたので、(a)の支配関係も継続しないことになります。

でも(a)の株式譲渡は、IDCSが100%親会社であるヤフーに対して行ったものであるから、(c)ヤフーが両社を支配する関係は存在していることになりますが、会社分割時点でヤフーによる支配関係はありませんので、適格要件には関係しません。

そして、単独新設分割である為、支配関係が継続しないグループ外の会社分割に係る共同事業要件を満たすことは出来ません。

以上から、この会社分割は支配関係の継続が見込まれないことから非適格分割になる、というのがヤフーの主張と思われます。

これに対する国税当局の主張は、合併直前に行ったIDCF株式の譲渡は、形式的に適格要件を外す為だけに行ったものであり、租税回避行為に当たるというもので、こちらも組織再編の行為計算否認規定により否認したものと思われます。

確かに、わざわざこの株式譲渡を行わなくても、IDCFは合併により自然とヤフーの100%子会社になっていたわけで、この株式譲渡を行う必然性がないように思われます。

ちなみに、分割法人であるIDCSは合併で消滅してしまいますが、適格合併による消滅である場合は、合併法人(ヤフー)が引き続き分割承継法人であるIDCFに対する支配を継続する見込みがあれば、会社分割の適格要件を満たすことができます。

こちらの否認額は、IDCFが認識した暖簾(資産調整勘定)100億円の内、償却で損金算入した23億円で、追徴税額は約6億円とのことです。

一方、IDCSにおいては会社分割の譲渡益100億円が取り消されますが、そもそもIDCSはこの譲渡益を繰越欠損金と相殺していたはずなので、税金の還付はありません。結局、IDCSの繰越欠損金は100億円増加して640億円と認定された上で、(1)のヤフーとの合併時に引継ぎが認められず切捨てられたことになります。

こういう部分で、2つの税務否認は密接に関連しているわけですね。

さて、この税務訴訟の進展はよく承知していませんが、国税不服審判の裁決を待たずに訴訟に進んでいるようです。

(2)の会社分割は事業上の目的が説明し難いという意味でヤフーの分が悪い気がしますが、(1)の合併による繰欠引継ぎはどうでしょうかね。ちなみに(1)が認められれば、引き継ぐ繰欠が増加するという意味で、実質的に(2)も救われることになるかも知れません。

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ということで、今後の組織再編の行為計算否認規定に係る税務執行に極めて大きな影響を与えるであろう、判決がとても楽しみな、ヤフーの案件でした。

おしまい。


(追記)

3月15日に東京地裁の判決が出ましたので一応更新。上記2件ともに国側完全勝訴、ヤフーの敗訴だそうです。

おそらくヤフーの要請によるものだと思いますが、判決文は閲覧が制限され、詳細はまだわかっていません。

特に経営参画要件については、おそらく役員派遣が形式的なものに過ぎないという認定でしょうが、それがどのくらい形式的だったからNGなのかという裁判所の事実認定と判断が大事なので、結論だけでは何とも言えません。

おそらくヤフーは控訴するのでしょうかね。

まだまだ注目の係争は続きそうです。
プレミアムモルツが美味しい季節なので、今日はサントリーの上場にまつわるアレコレを会計・税務中心に見てみます。

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まずはサントリーグループの構造ですが、今回上場したサントリー食品インターナショナル(サントリー食品)は、寿不動産という創業家の会社が89%を保有するサントリーホールディングス(サントリーHD)の100%子会社で、グループの中の飲料・食品セグメントの中核会社です(尚、ビール部門は別の会社のようです)。

ちなみにサントリーHD全体の業績に占めるサントリー食品の割合は、売上高で54%、EBITDAで63%、当期利益で64%となっています(2012/12期)。

サントリーHDの保有するサントリー食品株式は全発行済株式の216百万株でしたが、上場に際してサントリー食品は、93百万株を国内外で新株発行し、またサントリーHDが26百万株を売り出しています。その結果、サントリーHDはサントリー食品の発行済株式309百万株の内190百万株を保有することとなり、持分比率は61.5%に低下しますが、引き続き連結子会社として支配を継続します。

この他、6百万株のオーバーアロットメントの枠があり、主幹事の野村証券がサントリーHDに対してグリーンシューオプション(サントリーHDから引受価格で買い取る権利)を有していますので、これが全て行使された場合はサントリーHDの株式の内6百万株が追加で市場に放出されることになります。その場合でも持分比率の低下は59.5%に留まります。

さて、サントリー食品の株価は上場2日目の7/4時点で3,200円、時価総額で9,888億円になります。有価証券届出書を見ると、2012/12末のnet有利子負債は3,156億円、ここに新株発行による払込金額が手数料控除後で2,756億円入りますので、上場後のnet有利子負債は401億円。これと非支配持分139億円を合計し、企業価値は10,428億円という評価になります。一方、EBITDAは2012/12期で1,147億円、EV/EBITDA倍率は9.1倍になります。それなりに高い水準になっている感じですね。

次に、この上場によるサントリーHDへのインパクトを見てみます。上場前のサントリー食品の株主資本は1,992億円(2013/3末)で、おそらくこれがそのままサントリーHDの保有するサントリー食品株式の連結会計上の簿価と思われます。サントリー食品の株主資本は上場による現金の払込2,756億円(手数料12億円控除後)により4,748億円に増加し、またサントリーHDは株式の売出しにより806億円の現金を手にする一方、サントリー食品のダイリューションによりサントリー食品の株主資本の28.5%に相当する1,828億円が非支配持分になります(オーバーアロットメントは考慮外)。

従い、サントリーHDの連結会計上、合計3,562億円の現金を獲得し、1,828億円が非支配持分となった結果、差額の1,733億円が連結上の株式売却益となります(税前ベース)。サントリーHDの2012/12期の連結純利益が366億円ですので、すごいインパクトです。このような支配を継続する子会社株式の一部売却益は、IFRS上は売却益にはならず資本剰余金に計上されますが、日本基準ではまだPLに計上されます(現在、IFRSに合わせて資本剰余金に計上するよう改正中で公開草案が公表されています)。まあ、サントリーHDは上場していませんし、投資家もいませんし、PLに対する拘りは特にないように思いますけどね。

ちなみに、サントリー食品はIFRS任意適用の要件をおそらく満たしていますが、非上場ながら有価証券報告書を提出している親会社のサントリーHDは、「非上場」ということでIFRS任意適用の要件を満たせず、IFRSを適用できません。もしサントリー食品がIFRSを採用しても、サントリーHD連結の為に日本基準でも財務諸表を作成せねばならず、大変な手間が生じることになっていたわけですね。任意適用の要件は金融庁が緩和する方針ですので、もしかしたらその後に両社合わせてIFRSに移行するのかも知れません。

そして、税務の気になる記述をサントリー食品の有価証券届出書で見つけました。

サントリーHDはサントリー食品を含めた連結納税を2012/12期から採用しています。サントリー食品は今回の上場によりサントリーHDの連結納税グループから離脱しますので、わずか1期だけ連結納税に参加したことになります。そしてその連結納税採用の初年度において、初年度特有の特定同族会社の留保金課税が発生したと開示されています。もちろんサントリーHDグループの各社は税務上の特定同族会社に該当し、留保金課税の対象になりますが、連結納税開始初年度の特有の影響というのは何なのでしょうか(留保金課税はあまり知らない分野ですが。。)。

開示資料から推定するに、サントリーHDグループ全体の留保金課税は、2011/12期で15億円に対し、2012/12期は70億円です(連結税前利益に、税効果の開示に含まれる留保金課税が実効税率に与えた影響度合いを乗じれば算定できます)。確かに激増しています。2012/12期の70億円の内、38億円がサントリー食品分のようです(サントリー食品に帰属する38億円について、サントリーHDがサントリー食品の支払いを免除したということで特別損失/利益に各々計上されています)。

連結納税初年度のみ留保金課税が増加するカラクリはよく承知していませんが、想像するに、例えば、連結グループ内の配当については基本的に受取/支払がnetされて留保所得に影響しませんが、連結開始直前の前期末を基準日とする配当については、連結グループ内の配当に該当せず、受取側で留保所得を構成し、留保金課税の対象になってしまう、というようなことがあるのでしょうかねぇ(間違っていたらすいません)。

もしそうだとすると、どうせすぐに上場してサントリー食品が連結納税から離脱するのだから、上場後にサントリーHDとして連結納税を開始すればよかったのでは?という気もします。それでも一旦連結に加入させたい別の理由があったのかも知れませんが、真相はわかりません。

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サントリー食品の上場は、同族経営の継続が前提ということでガバナンス的にも非常に面白い話題です。今後とも注目したいですね。
ブログ第2弾も前回に続いてソフトバンク(SB)を取り上げます。

今回は2013年度から新たにSBの連結子会社になるガンホーとウィルコムについて見てみます。

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まずはガンホーから。

従来、SBは100%子会社のソフトバンクBB(SBBB)を通じてガンホー株の33.6%を保有しており、2013/3末の純資産持分は98億円です(連結会計上の簿価もこれに近いと思われます)。SBの孫社長は、弟さんの資産管理会社でガンホー株の18.5%を保有するハーティスから4月1日付けで議決権行使の委任の契約を締結し、SBの議決権は52.1%になりました。

また、SBの曾孫会社であるソフトバンクモバイル(SBM)が、これまた孫社長の弟さんが代表を務めるアジアングルーヴからディスカウントTOBによりガンホー株の6.4%を買い付けました。このTOBは4月26日に完了し、SBの議決権は58.5%になりました。

さて、ガンホー株はご承知の通り、パズドラの大ヒットとアベノミクスの恩恵を受け、年初から半年で株価は約14倍に上昇しており、SBは今期にガンホーの子会社化による既存保有株式の時価評価益を約1,500億円計上するとしています。

では、実際に株価とSB保有株(33.6%分)時価の動きを見てみましょう(株価は現在の株式分割後の株数ベース)。

1月4日(年初の始値)8,800円 ⇒ 時価341億円
3月25日(案件公表時)43,500円 ⇒ 時価1,685億円
4月1日(期首の始値)39,050円 ⇒ 時価1,513億円
4月26日(TOB完了日)88,700円 ⇒ 時価3,437億円
5月14日(上期最高値)155,500円 ⇒ 時価6,025億円
7月1日(本日現在)124,900円 ⇒ 時価4,839億円

SBが既存保有株の時価評価を行うのは支配獲得日で、今期から適用されるIFRS上、4月1日が支配獲得日になります。4月1日の始値で計算すると時価1,513億円、含み益は1,415億円です(公表数値よりやや小さいようにも感じますが、おそらくこの日を前提にしていると思います)。

もし日本基準を継続適用していた場合、支配獲得日は日本基準での連結の要件を満たす4月26日になります。この場合、既存株の時価は3,437億円でした。わずかな会計基準の違いで2,000億円も評価益に差が出 てしまうわけですね。ちなみに、最高値を付けた5月14日では時価は6,025億円になります。

従来、ガンホーはSBにとって重要な影響力を有する上場関連会社でした。上場している関連会社株式の時価(公正価値)をどのように算定するかについては、必ずしもIFRS上明確にはなっておらず、現在IASBにて議論されています。現時点でのIASBの暫定的な合意によれば、市場株価×株数を公正価値とし、重要な影響力の価値は公正価値に反映させない方針であり、おそらくSBも単純に市場株価×株数を採用するものと思います。

まあ、こんなバブル真っただ中の株式の公正価値って何なの?、という疑問も湧いてくるわけですが。 。

ところで、TOBによる取得は、TOB単価34,028円というディスカウント価格で、総額250億円です。この持分は既存保有株ではないので時価評価の対象外ですが、むしろIFRS上は、子会社株式の追加取得として 処理されるかも知れません。その場合、取得した6.4%分に相当する非支配持分の簿価18億円(純資産評価を採用した場合。但し、無形資産の時価評価の影響を除く)と取得価額250億円の差額232億円は、いわゆる暖簾ではなく、資本剰余金を直接減額する処理になります。まあPLを通さずに暖簾を減損させたようなものです。

尚、なぜIFRSに移行するのに、わざわざ日本基準でも連結子会社となるようにTOBを実施したのかは釈然としません。

これらの一連の取引は税務上は課税されませんので、時価評価益相当はいわゆる投資に係る一時差異として、税効果会計の対象になります。また、6/28のリリースによれば、SBBBが保有していたガンホー株33.6%はSB本体に株式譲渡したとのこと。おそら くこの株式譲渡はグループ税制の適用により課税繰延べになると思われます。

一方、SBMがTOBで取得した6.4%株式は税務上の関係会社株式(出資比率25%)には当たらず、もしガンホーから将来配当があった場合、関係会社配当としての益金不算入は享受できない状態です。SB本体に移管して40%に纏めれば解決しますが、その為には移管に際して巨額の課税が避けられません。

SBとSBMは議決権100%保有の関係ですが、SBMの親会社であるBBモバイルがボーダフォン買収時にヤフー等に優先株を発行しており、SBが発行済株式の全てを保有する状態(=税務上のグループ税制の範囲)になっておらず、グループ内譲渡による課税繰延を受けられない為です。この点、何故わざわざTOBの主体をSB本体ではなくSBMにしたのか、やや疑問が残ります。

さて、つらつら書いていると長くなったので、ウィルコムはさらっと確認程度にします。

SBのリリースによると、7月1日付でウィルコムの会社更生手続きが完了し、SBの連結子会社になったとのことです。

更生中の会社は、株式の議決権による支配が有効に機能しない状況にあることから、議決権の過半を所有していたとしても連結の対象外となります。これは日本基準でもIFRSでも基本的に差異はありません。

そして、7月1日時点で支配を獲得したということで、会計上、既存持分の時価評価を行います。有報によるとウィルコム株の簿価は3億円に対し、2013/3 時点での純資産は561億円のようです。ウィルコムは非上場会社で市場株価が存在しませんので、公正価値をどのように評価するかは悩ましいところですが、仮に純資産ベースの評価でも558億円の時価評価益が出るということです(金額が判明した時点で開示されるようです)。

もちろんこの評価益も税務上は課税されませんので、投資の一時差異として税効果の適用を検討することになります。

最後に補足ですが、イー・アクセスは上記2社とは異なり、新たに支配を獲得して連結子会社になるわけではなく、IFRS上は買収時点から連結子会社だったという整理ですので、公正価値による再評価は行われません。

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さて、いかがでしたでしょうか。

もちろんSBにはスプリントというとっておきのネタもあるわけですが、どこまで深堀するか躊躇してみたり、次は別の会社にしようかなと思ったりしています。

ということで、また次のネタでも探しましょうかね、時間のある時に。