ソフトバンクのIFRS適用後初となる2013年度第1四半期決算の短信が発表されました。
このブログでも取り上げていたイー・アクセス、ガンホーの子会社化等の影響も開示されていますので、ブログ記載内容の答え合わせを兼ねて、チェックしてみましょう。
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まずはガンホーです。
4月1日に有効となる契約により支配を獲得するということで、IFRS上、この時点で既存の投資持分33.6%の公正価値評価を行っています。
採用した市場株価は3月の最終営業日である3月29日の終値39,650円で時価1,536億円(時価評価益で1,501億円)。当ブログでは4月1日の始値である39,050円で時価1,513億円と書いていたので、ちょっと違いましたね。
意外とこの点は諸説あるようにも思うものの、まあ3月末の終値というのが最もシンプルかな。ということで、3月末終値に言及しなかったことを反省します。
ちなみに、支配獲得日後に実施されたTOBによる追加取得を、既存子会社の買い増しとして取り扱うことで、本来のれんになる部分を資本剰余金のマイナスとして処理するのでは?という邪推については、そのような処理にはなっていませんでした。支配獲得の契約と纏めて単一の取引として処理したようです。
PPA(Purchase Price Allocation:取得対価の取得した資産・負債の時価及び暖簾への配分)においては、「ゲームタイトル」という無形資産を100%ベース778億円で認識しています。要するに、これがパズドラの2013/3末時点の価値ですね。償却期間は3年です。長いような気もしますが、どうでしょうか。
このPPAを反映させたガンホーの時価純資産は100%ベースで814億円(内、60%の488億円は非支配持分)です。株式時価総額は同じ3月末時点で4,559億円、本日8月2日の終値で1兆1,728億円ですので、プレミアムのほとんどは、無形資産としての識別・認識要件を満たさない「暖簾」ということになります。要するに、既にあるパズドラの価値ではなく、今後もパズドラ級のヒット作を継続的に生み出す力がこの会社の価値の源泉だということでしょう。減損しないといいですが。
尚、IFRS上認識した暖簾は1,460億円。支配獲得時の既存持分時価1,536億円+TOB取得対価250億円-時価純資産持分326億円(814億円×40%)=1,460億円という計算ですね。
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続いて、イー・アクセスです。
イー・アクセスは日本基準では持分99.5%ながら議決権を1/3にして連結外ししていたものを、IFRS上は実質基準で連結するというものです。
当ブログでは、いわゆる投資差額は単純計算で1,377億円(買収価額2,194億円-2012/12末純資産817億円)で、無形資産、暖簾等の内訳は今後の開示資料で判明すると書いてました。
しかし、開示された数字はちょっと意外なものでした。
まず買収価額は2,183億円。株式交換の対価2,194億円から持分0.5%/議決権66.7%の売却による収入11億円を控除しています。この11億円という対価はプレスリリースでは非開示とされていましたが、ここでバレちゃいましたね。
2,194億円×0.5%=11億円なので、ほぼ取得価額そのままで売却しています。本当なら持分とはアンバランスに議決権が付与された株式なので、同じ単価でいいのか??という疑問はありますが、まあ仕方なかったんでしょう。
ここまではいいのですが、問題はイー・アクセスの時価純資産です。
決算短信によれば、イー・アクセスの支配獲得時(2013年1月1日)の時価純資産は809億円です。これには「顧客との関係」という無形資産の評価847億円及びこれに係る繰延税金負債が想定305億円(税率36%で試算)含まれていますので、この無形資産の時価評価を除いた純資産は267億円しかないことになります。
一方、イー・アクセスの2012年12月末の簿価純資産は817億円でしたので、無形資産以外の要因で550億円も純資産評価が減少していることになります。
この減少要因をもう少し見てみると、非流動資産、流動負債、非流動負債は概ね無形資産の増減の影響に見合った動きとなっており、どうやら「流動資産」が簿価と時価の差額で400億円程度減少していることがわかります。
「流動資産」のより細かい内訳は開示されていないのですが、2012年12月末決算時の流動資産は現預金、売掛金、未収入金が主な内容なので、時価評価でそんなに減少するのか、疑問です。
IFRS上、日本基準で短期に区分されていた繰延税金資産については全て長期に表示が変更になりますが、この影響は大きくなさそうです(おそらく数十億円レベル)。
残る可能性としては、収益認識に係るGAAP差異の説明で、機種変更等の手数料を一括認識から平均端末利用期間での繰延べに変更されたとあるので、この影響で売掛金・未収入金が減少したのかも知れませんが、ちょっと詳細はわかりません。
ということで、結局、いわゆる投資差額としては、顧客との関係の時価評価(税効果後)542億円+暖簾1,378億円=1,920億円という仕上りでした。
ちなみに、非適格株式交換による税務上の営業権の時価評価については、特に新しい情報はありません。
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それと、更生手続きの完了により7月1日付で子会社化するウィルコムの公正価値評価も開示されていました。
これについては簿価3億円に対し時価1,041億円で、時価評価益1,038億円を第2四半期に計上するようです。簿価純資産で561億円でしたので、詳細は不明ですが、何らかの時価評価手法で計算したようです。
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そして、もう1つ気になったのは、2012年度の第1四半期で認識していた資本剰余金の減少512億円です。
これはまさに前回のブログエントリーで記載した、現在IFRSの改正議論中の論点に係るものです。
ソフトバンクの持分法投資先であるAlibaba Group Holdingが、同社の子会社であるAlibaba.comの株式をTOBにより追加取得したことで、Alibaba Group Holdingが資本剰余金の減少として処理したものを、ソフトバンクがその持分を、自らの資本剰余金の減少として計上したものです。
なるほど、IFRS上の取扱いは現状明確にはなっていませんので、そういう会計方針を選択したのでしょう。
あれ、でもこれって、IFRS初度適用による差異にはなっていないと思ったら、従来の日本基準においてもそのように処理していたのですね(恐縮ながらチェックしてませんでした)。
日本基準上の取扱いも勿論明確ではないと思いますので、なるほどそうしましたか、という感じ。
でもまさか、これが将来、持分法の適用停止時にPLで再認識することになるかも知れないなんて、おそらく考えてなかったでしょう。
今後結論が出るIFRSの改正動向及びその改正基準の遡及適用の内容次第では、ソフトバンクのPL/純利益という観点で多大な影響がありそうですね(子会社化or売却時に512億円の損失を認識する必要があるかも、ということ)。
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こうやってブログに書いたことの答え合わせをするのも面白いものです。
当らずとも遠からず、という感じでしたかね。