ゼンショーのフジタコーポレーション買収と連結納税(備忘) | Accounting, Tax and M&A

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会計、税務、M&A等の話題についての分析、雑感、というか趣味の備忘録です。もちろんインサイダーではありませんので、全て開示情報と報道に基づくもので、推測を含みます。暇なときに更新しますので、頻度は低いです。ご了承下さい。

 

すき家のゼンショーによる群馬県のスーパーマーケット買収について、備忘メモのレベルですが。

 

例によって、ゼンショーは「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という企業理念の下、群馬県でスーパーマーケット事業を展開するフジタコーポレーション(フジタ)を買収するそうです。

 

買収の主体は日本リテールホールディングス(日本リテール)というゼンショーの100%子会社です。

 

日本リテールといえば、2014年に関東のスーパーマーケットであるマルヤを非適格式交換で100%子会社化すると同時に連結納税を開始するという面白いディールがありましたね。

(↓過去のエントリー)

ゼンショーの不思議な非適格株式交換 ~ マルヤの完全子会社化と連結納税開始

 

で、今回は経営者株主の一族からの株式取得になるようです。

 

取得価額124億円で、対象はフジタの株式97.1%。残りの2.9%の取扱いについてはプレスリリースでも説明がありませんが、とりあえずこのタイミングでの100%買収=連結納税加入はないようです。

 

それもそのはず。

 

プレスリリースによれば、フジタの純資産は74億円。のれんは50億円になります。単純に100%株式買収すると、フジタの連結納税加入に際して営業権の時価評価課税の問題が出てきます。

 

また、フジタは設立1978年、資本金5億円、過去3年は23億円程度の純利益を計上しており、おそらくかなりの利益剰余金がたまっているものと思われます。

 

個人株主からすると、利益剰余金を配当すると総合課税になり税率も高いですので、分離課税となる株式譲渡の方が望ましいので、配当せずに株式譲渡を行うのが合理的です。

 

一方、ゼンショー/日本リテールとしては、連結納税加入後に配当を受けた場合、連結加入前の剰余金であっても投資簿価修正の対象になるという問題があります。

 

なので、理想的には、将来的に100%子会社化する可能性があるとすれば、その時点で溜まっている剰余金の配当を行うのが望ましいと思われます。もちろん、関連法人株式からの配当で非課税になる6ヵ月継続保有要件や所得税額控除にも要注意です。

 

最後に、フジタは2016/3期で営業利益9億円。経常利益も9億円なので、有利子負債はほとんどなさそうです。純利益は4億円なので、何か特別損失でもあるのかもしれません。株式買収価額124億円でPER31倍、EqVEVとして、EV/営業利益でも14倍になります。まあ、手元に余剰現金が残っている可能性もあり、valuationは何ともいえませんが。

 

とりあえず以上です。