東京エレクトロンと米アプライドの統合 ~ 三角合併の税務上の取扱いを中心に | Accounting, Tax and M&A

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会計、税務、M&A等の話題についての分析、雑感、というか趣味の備忘録です。もちろんインサイダーではありませんので、全て開示情報と報道に基づくもので、推測を含みます。暇なときに更新しますので、頻度は低いです。ご了承下さい。


半導体製造装置で世界3位の東京エレクトロン(東エレ)が同世界1位の米アプライドマテリアルズ(アプライド)と統合するようです。

三角合併を活用してオランダの持株会社に両社をぶら下げるようで、興味深いストラクチャーですので、ちょっと両社の開示資料を覗いてみました。

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ストラクチャーそのものは東エレの開示資料に図解されておりわかりやすいのですが、詳細はアプライドが開示している統合の契約書(Business Combination Agreement)を見た方がよくわかります。150ページとなかなかの分量ですが。。

(余談ながら、こういう契約書全文が開示されるあたり、やはり米国の方が投資家への情報開示が進んでいるのでしょうかね)

さて、本件のストラクチャーは以下の通りです。

①東エレがオランダに100%子会社として持株会社を設立。
②オランダ持株会社が日本に100%子会社として日本SPCを設立(東エレの100%孫会社)。
③アプライドが米国に100%子会社として米国SPCを設立。
④日本SPCが東エレを吸収合併し、東エレ株主に合併対価としてオランダ持株会社の株式を交付。
⑤アプライドが米国SPCの株式をオランダ持株会社に移転(譲渡?)。
⑥アプライドが米国SPCを吸収合併し、アプライド株主はオランダ持株会社の株式を保有。

図解がなくてわかりにくいですが、要するに、まずオランダ持株会社を東エレが設立し、日本の三角合併を通して東エレが持株会社の子会社となり、次にアプライドが米国の三角合併を通して持株会社の子会社になる、ということです。オランダ持株会社は日米で上場します。

持株会社の株主構成は、旧東エレ株主が32%、旧アプライド株主が68%となります。

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では、この日本の三角合併の課税関係はどうなるのでしょうか。

まず資本関係ですが、この三角合併は、親会社である東エレと間接保有の100%孫会社である日本SPCのグループ内合併になります。

そして合併対価は存続会社である日本SPCの完全親会社であるオランダ持株会社の株式のみですので、税務上は基本的に適格合併になります。

東エレは、アプライド(の子会社)と合併するわけではなく、あくまでグループ内の合併である、というのがポイントです。

仮にアプライドがオランダ持株会社を設立して、その子会社として設立された日本SPCと東エレが合併していれば、資本関係のないグループ外の合併となります。

この場合、税制適格となるには共同事業要件を満たす必要がありますが、日本SPCには事業が存在しない為これを満たせず、非適格合併になります。

なので、まずオランダ持株会社を東エレ側が設立する、というのが税務的には非常に重要なのです。

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さらに、本件はコーポレートインバージョン対策税制の取扱いも検討する必要があります。

まず、SPCとのグループ内合併で、完全親会社になる外国法人が軽課税国に所在し(具体的には過去2年度のいずれかの実効税率20%以下の場合)且つ事業実体がない場合は、特例として適格要件を満たす合併であっても非適格となり、また株主においても課税の繰延べが認められません。

しかし、オランダは法人税率25%ですので、この特例が適用されないものと思われます。

また、東エレ株主の内、日本にPEを有さない非居住者/外国法人については、事業譲渡類似株式の譲渡に該当する場合は課税の繰延べが認められませんが、これに当たることもないでしょう。

これらは、適格三角合併の結果として外国の親法人株式が交付されることで日本の課税権が及ばなくなるという問題に対応して、会社法における合併対価の柔軟化に合わせて導入された措置ですが、本件には適用されなさそうです。

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結局、本件は適格合併で、合併対価は完全親法人株式のみですので、東エレ及び東エレ株主に課税関係は生じないことになります。

尚、Business Combination Agreementによれば、この三角合併の日本における課税関係につき、KPMGの意見書及び国税当局への照会により問題ない旨を確認することが停止条件になっているようです。

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最後に統合比率の話題です。

上述の通り、持株会社の株主構成は、旧東エレ株主が32%、旧アプライド株主が68%となります。

プレスリリースや報道では対等合併といった表現もありますが、基本的にはアプライドによる東エレの買収です。法形式的には両社の共同持株会社を設立するということであっても、会計処理上もアプライドが東エレを買収したものとしてacquisition methodが適用されると考えられます。

まあ、改めて指摘するまでもないですね。

両社の株価を見てみると、本件公表直前では、東エレ(9/24)4,850円、アプライド(9/23)15.991ドルで、9/24の為替レートで換算すると時価比率は3.07になります。

本件統合における交換比率は3.25ですので、市場株価との比較では、わずかに東エレ側にプレミアムが乗っているものの(6%程度)、ほぼ株価の比率そのままです。

経済実態はアプライドによる東エレ買収でも、上場株同士となると、なかなか一方的なプレミアムを乗せにくいという事情もあるように思えます。

公表の翌日は両社ともに株価が10%近く上昇しましたが、時価比率は3.20になりました。為替の影響もあり厳密な計算は難しいですが、基本的には3.25に近づくということなんでしょうね。

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ということで、今回は三角合併の税務を中心に分析してみました。

Valuationや具体的な会計処理については、また興味が出てきたら、ということで。


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インバージョン関係の記載を修正しました。