皆さん、一度は想像したことがあるだろう。

 

「もし、人魚になったら」

 

美しい海の中を自由に泳ぐことができる。かわいらしい魚と一緒に遊んだり、サンゴの森や不思議な沈没船で冒険をしたり、砂浜でのんびりしたり。

 

(ちなみに、私も幼い頃「アリエルになりたい」と言っていたらしい。)

 

その夢を叶えてくれる伝説の海外ドラマ(日本にはついぞ上陸しなかった)がある。

 

H2O just add water」(エイチツーオー ちょっと水にさわると)というオーストラリアの海外ドラマだ。

 

とりあえずドラマのオープニング(44秒)を見てもらえば、どんなドラマかなんとなくわかると思うので、ぜひ再生してほしい。

 

 

このドラマ、同じ英語圏のアメリカを始め、約120か国のティーンの心を虜にしたのだという。今でもファンが熱心なコメントを残していたり、続編にあたる新たなシリーズが続いていたりと、海外ではかなり人気のようだ。

 

●「H2O just add water」あらすじ

 

 舞台はオーストラリアゴールドコースト。美しい海と砂浜で有名なリゾート地だ。

ゴールド・コーストの地平線の上空からの眺め © Tourism Australia

 

(写真はオーストラリア政府観光局より)

 

ここに住む女子高生のクレオ(Cleo)エマ(Emma)、それからリッキー(Rikki)

 

 

ある日、3人は小型モーターボートでに遊びに行くものの、モーターボートが故障。しかたなく沖合の小さな無人島のマコ島(Mako island)に向かい、電波が届きそうな島の高台を目指す途中、不思議な洞窟に滑り落ちてしまう。

 

 

洞窟には幻想的な泉があり、どうやら外海とつながっているらしい。水泳の得意なエマに導かれ、クレオとリッキーが泉に飛び込んだ時、ちょうど満月が泉の上に差し掛かっていた…。

 

 

無事に外海へ脱出し、救助艇に救出された3人。ごく普通の生活に戻れると思いきや。

 

朝、誰もいないビーチでひと泳ぎしようと海に飛び込んだエマは、2本の足が1本のヒレになっていることに気づく。

 

バスタイムが好きなクレオは、お風呂の中で自分の姿を見て絶句。

 

リッキーも、スプリンクラーの水を一滴浴びただけで、人魚になってしまった。

 

 

こうして「水にふれて10秒で人魚の姿になってしまう(そしてヒレが完全に乾くと人間の姿に戻る)」という秘密を、家族にも誰にも話さないで、3人はオーストラリアのハイスクールライフを送っていく。

 

というのが「H2O just add water」の大まかなストーリーだ。

 

ところが、彼女たちはゴールドコーストの女子高生。水に一滴も触れずに日常生活が送れない女子高生たちなので、当然様々なトラブルに見舞われる。

 

 

例えば、プール・パーティー。どうしてもパーティーに行きたかったクレオは服を着こんで出かけてしまうが、同級生たちは真夏に厚着のクレオをからかってプールに放り込んでしまう。さて、どうなるか…!?(続きはS1E2で)

 

 

エマの弟と遊びに行ったら、植物園で突然スプリンクラーが作動してしまった。このままではエマの弟に秘密がばれてしまう…!とか。(続きはS1E6で)

 

人魚は実在すると証明したい研究者が、ゴールドコーストの人魚の伝説を調べ初め、ついに3人の姿が撮られてしまう…!とか。(続きはS1E25で)

 

というように、美しいゴールドコーストの風景の中で、明るく元気よく青春を送る3人の人魚たちのどきどきわくわくのハイスクールライフが繰り広げられる。

 

 

●3人の人魚たち

ここで、メインの3人の女子高生たちの紹介を(なるべくネタバレしないように)しよう。個性豊かな3人なので、きっとすぐ覚えられるはずだ。

 

なお3人の人魚たちは、「水にふれて10秒で人魚の姿になってしまう」以外に1人1つずつ水に関する特殊能力を与えられている。それぞれの特殊能力についても、ここで紹介するので、確認してほしい。

 

●クレオ・セルトリ(Cleo Sertori)

 

 

 

 

公式ではクレオは恥ずかしがりや…とあるが、そうだったの? 幼馴染や家族の前ではお調子者で甘えん坊だが、クラスメイトの前ではおどおどしてしまう女の子だ。

 

彼女の特殊能力は「水の形・動きを自由に操る能力」。水を宙に浮かせたり、流れを変えたりすることができる。Season2では能力が進化して、風をも自在に操れるようになった。

 

 

家族構成は、両親と妹のキム。(人魚になってしまうがゆえにますます)長い姉のバスタイムに苛立ったキムが、バスルームの扉をドンドンと叩く場面はもはや様式美である。クレオが水を操る能力で仕返すところまで含めて。

 

 

生き物が好きで、熱帯魚を大切に飼ったり、水族館でアルバイトをしたりと、生き物関係のエピソードも多い。Season3では、天才ドルフィントレーナーとして、イルカショーで大活躍している。

 

 

そんなクレオの想い人がこちら、ルイス(Lewis)。

 

クレオの幼馴染で、恥ずかしがりやなクレオが唯一気兼ねなく話せる男子だ。いわゆるギーク(Geek)の役回りで、パソコンを片手にクレオたちをサポートしてくれる。

 

 

そんなルイスは、実はこの3人の秘密を誰よりも早く知った人物でもある。

 

こちらがルイスがクレオの正体を知った瞬間だ。(S1E2)

 

 

幼馴染が人魚の姿になってしまうというありえない状況に、恐怖の表情を浮かべるルイス。ルイスがクレオの手を取るのか・取らないのか。気になる方はこちらの動画をぜひ見てほしい。

 

ちなみにSeason2では、クレオの恋のライバルが登場し、ルイスを奪い合う展開になる。意外とデキるギークなルイスとの恋も、ぜひ応援してあげてほしい。

 

Phoebe Tonkin - IMDb

 

なお、クレオを演じたのはフィービー・トンキン(Phoebe Tonkin)。オーストラリアで活躍している俳優である。

 

 

 

●エマ・ギルバード(Emma Gilbert)

 

 

 

 

 

割と裕福なご家庭で育ったエマ。競泳に打ち込んでいて、毎日プールや海で泳いでいる女子高生だ。(だから、人魚になったせいで選手生命を絶たれた上に、心配する家族と言い争ってしまうことも。)

 

そんなエマの特殊能力は「水を凍らせる能力」。アナ雪のエルサと同じような能力だ。咄嗟に敵の動きを止められるので、何度も仲間の危機を助けてきたすごい能力だが、エマはよく冷凍庫代わりに使っている。ちなみにSeason2では雪を降らせるまでに能力を進化させた。

 

 

エマの彼氏は2人。Season1ではバイロン(Byrone)、Season2ではアッシュ(Ash)だ。秘密を守りながら恋を成就させることができるのだろうか。おしとやかなエマの恋模様にもぜひ注目してほしい。

 

 

なお、エマ役を演じたクレア・ホルト(Claire Holt)が他作品との撮影の兼ね合いでこれ以上H2Oに参加できなくなり、Season2の最終話を最後にエマは登場しない。Season3の冒頭で、クレアとリッキーに「エマは家族と一緒に世界一周の旅行に行くことになった」と語られている。

Claire Holt - IMDb

 

 

 

 

 

 

●リッキー・チャドウィック(Rikki Chadwick)

 

 

 

 

あどけなさと大人っぽさが混ざった金髪のリッキー。

 

クレオやエマとは元々それほど接点はなかったようだが、同じ秘密を共有する仲間として友情を深めていく。

 

リッキーの特殊能力は「水を温める・沸騰させる能力」。当初は「クレオとエマには能力があるのに私には…」と落ち込んでいたが、能力に気づいてからはとてつもなく活躍している。特にこの能力を使えば”ヒレを素早く乾かして人間の姿に戻る”が可能になるので、リッキーの能力は欠かせない。ちなみにSeason2では、雷や炎を操るまでに能力を進化させている。

 

 

 

リッキーを語るうえで欠かせないのが、ザイン(Zane)。

 

彼は地元の大富豪の息子で、自分用のモーターボートやらバイクやらを大量に持っているめちゃくちゃ金持ち。当初はクレオをイジメるいけ好かない奴として登場する。(ちなみに、彼女たちが人魚になってしまう遠因はザインである。)

 

しかし、リッキーとザインは徐々に惹かれあい、ゆっくりと関係性を深めていく。

 

ある日、ヨットに乗っている最中にサメに襲われたザインを、偶然泳ぎかかった人魚の姿のリッキーが助ける。ザインは偶然撮られた水中カメラの映像から自分を助けてくれたのは”人魚”であると確信し、人魚を見つけ出そうと調査を始めてしまう。(S1E10)

 

こうして、”人魚である秘密を隠さなくてはいけないリッキー”と”人魚をどうしても見つけたいザイン”の関係がどんどんとこんがらがっていくのだ。(2人の恋の結末が知りたい人はS1E26へ)

 

 

さて余談だが、リッキーのプライベートは謎が多い。

 

まずSeason1において、家族の描写が全くないのである。クレオやエマは両親や妹・弟が登場するほか、物語の舞台として彼女たちの家や部屋が使われているのに。(ちなみにエマの家はかなり広くて豪華だ。)

 

それどころか、リッキーは「自分の家ではパーティーができないので、エマの家を貸して」というエピソードもある。

 

服装や髪型、立ち振る舞いもどこかチグハグだ。金持ちのザインとの関係を深めるエピソードとして、上流階級なパーティや美術展、高層ホテルのスイートルームなどにお洒落なドレス姿を見せる。(クレオとエマが高校生らしい服装しかしない分、ぐっと大人っぽい。) が、しぐさや髪型、喋り方にどうしてもガサツさが出てしまっている。

 

また、時々見せる凶暴さも印象的だ。悪事を働く者や、自分たちの秘密を暴こうとする者には容赦ない。自身の能力を使って他人を傷つけかねない行為を平気でする。

 

実は、そんなリッキーの抱えている謎に焦点を当てたエピソードがある。すごく見てほしい。(S2E8へ)

 

Cariba Heine - IMDb

 

なお、リッキーを演じたのは、南アフリカ生まれでオーストラリア出身のカリーバ・ハイネ(Cariba Heine)さん。俳優としてだけでなく、ダンサーとしても活躍中だそうだ。また続編にあたる「Mako Mermaids」に”大人になったリッキー”役で再登場している。

 

ちなみに人魚を演じた女優さんたちは仲が良く、今でも集合写真も公開されている。特にクレオ役のフィービーさんとエマ役のクレアは、家族ぐるみでの交流が続いているそうだ。気になる人はリンクからInstagramなどをフォローしてほしい。

 

Phoebe Tonkin WebさんはTwitterを使っています: 「Phoebe Tonkin in Florida with Claire  Holt and her family https://t.co/R3wCg6akhJ」 / Twitter

(フィービーさんのTwitterより)

 

 

 

 

 

●どうやって視聴したらいい?

 

さて、この世界120か国で放送された「H2O Just add water」だが、残念ながら日本では放送・配信がされていない。

 

「H2O Just add water」がブレイクしたのは、2000年代後半から。当時はNetflixやAmazon Prime Videoのような動画配信サービスはまだ普及していなかったので、日本で海外ドラマを見る方法は、ずばり”テレビで放送されるのを待つ”しかなかった。

 

となると、枠は決して多くはない。子供向けの海外ドラマはディズニーチャンネルの独壇場で、オーストラリアで製作された「H2O Just add water」は日本に上陸できなかったのだろう。

 

また、「人魚になってしまう女子高生の日常」という点もよくなかった。アニメや漫画が発展している日本では、ちょっと使い古されたプロットだ。実際にもうすでに「瀬戸の花嫁」がアニメ化されていたし。

 

かくいう私も、偶然アメリカで数エピソードを見てハマったっきり、続きを見ることのできないままもどかしい数年を過ごした。

 

だが、安心してほしい。なんと、公式YouTubeチャンネルで、全エピソード無料公開されている

 

しかも、全エピソードだけでなく、名場面集やキャラクター紹介動画も大盤振る舞いでどんどんアップロードされているので、まずは気になる動画を見てみるのも悪くない。

 

例えば「彼氏に人魚バレした重要シーンだけ見たい!」という人はこちら、

 

 

「Season1の中盤で明らかになる、過去にいた3人の先輩人魚たちのその後は?」だけ見たいという人はこちら。

 

 

 

 

 

というように、長いシリーズを公式がまとめてくれているので、時間がない人は興味のあるエピソードだけを見るのもおすすめだ。

 

そして、最後にとても重要なこと。残念ながら、日本未上陸の海外ドラマなので、日本語吹き替えも日本語字幕もない!

 

だが、(細かい設定や伏線がそれほどない単純なストーリー展開なので)それでも楽しめるのが「H2O Just add water」だ。

 

英語が一切分からなくても、登場人物が、笑ったり怒ったり泣いたり移動したり人魚になったりと、映像である程度のストーリーがわかるので、安心して楽しんでほしい。

 

「なんかクレオとルイスが喧嘩し始めたな。あっ、新しい女の影があるからか!」とか「学校に行きたいけれど雨だからどうにかして休みたいんだな」とか。そんな感じで理解できればオッケーだ。

 

むしろ、「どこを探しても日本語字幕に頼れない」ので、英語のリスニングの最強の練習になる。英語に自信がない人ほどどんどん見てほしい。ちなみに私は、これを見ていたおかげで大学入試のリスニングはほぼ満点だった。

 

一応、YouTubeで英語の字幕は表示できるので、もう少し詳しく会話を楽しみたい人は表示してみると良いだろう。

 

 

と、言葉の壁があるけれど、まじで幼稚園児・小学生・中学生・高校生・そして若さを忘れない大人たちには最強に面白いと思う。

 

ぜひ人魚たちと青春を。