小山内裏公園周辺でのチョウの観察は2010年に開始し、15年目となりました。小山内裏公園は、上の図で分かるように、大半がサンクチュアリに指定され、立ち入ることができない場所がほとんどです。チョウは、移動力が高いため、サンクチュアリ内のみで確認できる種類はほとんどないものと考えていたことから、実害はそれほどないと考えていました。ただし、園内にハンノキとミドリシジミに関する掲示(下図)があります。サンクチュアリの外では、内裏池の近くに1本だけ大木が生えていたのですが、無残にも伐採されてしまい、立ち入ることができる範囲にはハンノキはありません。ちなみに、その1本のハンノキにミドリシジミが発生していたことは確認できていません。そのため、サンクチュアリ内に入ることができれば確認種にミドリシジミを追加できると考え、その点が残念に思っていました。

 サンクチュアリへの立ち入りについては、3月まで東京都の公園緑地課に勤務されていたSさんにお会いした時に、許可を得ることができるかどうかお聞きしてたところ、個人での申請は難かしいかもしれないが、可能性はあるとのこと。そのため、4月上旬に個人名で申請し、神奈川昆虫談話会が、結果発表の場を提供するなどのサポートをするという形式にして、神奈川県立生命の星。地球博物館主任学芸員である神奈昆世話人の苅部さんに推薦状を書いてもらい添付し申請書を提出しました。5月上旬にコロンビアに出発する時点では何の反応もなく、許可してくれないものと考えていましたが、旅行中にメールが来て、許可してくれるとのこと。帰国後、さっそく打ち合わせに行きました。個人での申請で構わないけど、神奈川昆虫談話会の丸山清として申請してほしいということ、また、1年間の許可は長すぎるので、3か月単位として、3か月たったら再度申請する形にしてほしいとのことなど、いくつかの条件は付けられましたが、許可してくれるとのこと。

 これにより、週1回、サンクチュアリ内に立ち入ってチョウの確認調査を行うことができることになりました。許可日の6月3日、3本の谷戸にどのようにアクセスするか下見を行いました。下図は下見当日の踏査したGPSデータです。①が大田切西谷戸で、②は尾根から谷戸に降りるトレイルです。下見時には普通の靴を履いていたのですが、長靴を履いていれば、①から②へ抜けることができそうでした。そこそこは陽が差し込むのですが、ドクダミが繁茂していて、そのほかの花はあまりなく、限られた種類の蝶しか確認できないものと思われました。期待のハンノキは、まったく見られませんでした。大田切東谷戸は、大田切池方面から入るトレイルはなく、③の尾根からトレイルがあって谷戸に入ることができました。この谷戸は、かなり狭く、うっそうとしていてチョウの観察にはあまり適していないように感じました。④は、津島谷戸へのトレイルです。長靴ではなかったので、入り口付近を見ただけでした。津島谷戸は、3本の谷戸の中では最も面積が広く、一昨年、斜面の雑木を伐採したことから明るく、蝶の観察には最も適していると予測されました。今後の調査は、この津島谷戸主体で行うことになるでしょう。ちなみに、本調査初日、尾根から津島谷戸に入るトレイルがあることがわかりましたので、大田切西谷戸同様、谷戸から尾根に至る間の調査を行うことができそうです。

 期待していたミドリシジミですが、3本の谷戸のいずれにもハンノキが確認できなかったことから、生息していないでしょう。園内の掲示は、現地調査を全く行わなかったいい加減なコンサルが作ったものでしょう。役所出入りの大手コンサルには、こういった輩が結構います。看板に偽りありと叫びたいところですが、だまされた結果サンクチュアリ内の立ち入り許可を得て1年間の調査が行えるようになったのは幸いでした。