1月第2週まで成虫越冬しない蝶の姿が確認できましたが、第3週には確認できませんでしたので、2023年シーズンが渉猟したと判断しました。2023年の観察記録を総括する前に、観察しているフィールドについて再確認したいと思います。

 上の図の赤枠で囲んだ範囲が観察場所です。小山内裏公園とその周辺で、標高は120m~200m、約100ha。周辺との位置関係は下図のとおりです。多摩丘陵の最西端に位置し、市街地が広がる前は、多摩川と相模川の間の丘陵地は同じような生態圏を持っていたと思われます。ちなみに、高校時代日参した桝形山周辺は多摩丘陵の東端にあたります。

 中核をなす小山内裏公園は、約46haの東京都が人工的に整備した自然風の公園で、多くはサンクチュアリとして立ち入ることができません。そのため、整備された歩道からの観察が原則となっています。明治神宮の森が人工的に整備された公園として有名ですが、小山内裏公園も耕作地だった場所にクヌギやコナラ、シラカシなどを人工的に植栽して雑木林としたものです。

 下図は、1956年3月15日に米軍が撮影した小山内裏公園周辺の航空写真です。蛇行した道路は,尾根にあたるところで,太平洋戦争の末期に陸軍の戦車の試走用の道路として整備されたものだそうで,「戦車道」と呼ばれています。当時の写真から、現在の小山内裏公園はそのほとんどが耕作地だったことがわかります。現在でも、雑木林内にミョウガが生えているところが散在していて、かつて耕作地だったことがうかがえます。

 最新の小山内裏公園周辺の状況は下図となります。小山内裏公園と尾根緑道などが雑木林として整備され、それ以外は、ほぼ住宅地や商業施設で、かつての耕作地は全く姿を消しています。このような状況から、小山内裏公園とその周辺で観察できる蝶は、ほとんどが、人工的に整備された後に侵入してきた蝶ということになります。

 小山内裏公園とその周辺での蝶の観察は2011年から開始しました。熱帯地域のセセリチョウをライフワークしている私にとって、ずいぶんと久しぶりの日本の蝶との再会でした。再会にあたって観察方法としたのは、デジタルカメラで記録すること。確認は、同定可能な映像が残ったもので、目撃だけや同定不能な画像しか撮れなかったものは、確認記録とはしません。集計は、週単位で、日曜日が基準、前後3日がその週の記録とします。

 このような方法で観察開始し、2024年は観察開始後14年目となります。これまで、神奈川昆虫談話会例会で2回口頭報告、2011年3月6日:「2010小山内裏公園の蝶」;2012年10月8日:「2010-12小山内裏公園の蝶」。印刷物としては、「多摩丘陵小山内裏公園 2010年〜2015年に確認した蝶たち(1)」神奈川虫報(188): 19–28( 2016 );「多摩丘陵小山内裏公園 2010年〜2015年に確認した蝶たち(2)」神奈川虫報(189): 1–14( 2016 );「多摩丘陵小山内裏公園の蝶(2016 年~ 2020 年)および相模原市中心街の蝶との比較」花蝶風月(177):4-11(2020)の3回の報告があります。pdfファイルとして添付できれば良いのですが、リンクを作らなければならないようですので、ご覧になりたい方は個別にお申し付けください。2015年までに確認できた蝶が64種、2020年までで66種となり、それ以上は増えないと思っていたのですが、クロマダラソテツシジミとツマグロキチョウの2種が追加となって、観察開始以来の確認種数は68種となっています。