2023年最初のコンサートは、ミューザ川崎アフタヌーンコンサートの最終回で、前橋汀子、堤剛、藤田真央による≪究極のトリオ≫と題されたものでした。私が付けたタイトルは、「爺婆と孫の共演」。堤剛80歳、前橋汀子79歳に対し、藤田真央は24歳。舞台後方席で左横からみていたので前橋汀子の表情はわかりませんでしたが、堤剛の藤田真央をみるまなざしは 孫を気遣う爺そのものでした。

 演目は、オールヴェートーベンプログラム。1曲目は、正月らしいヴァイオリンソナタ「春」。1年前の1月8日のアフタヌーンコンサート、藤田真央のピアノリサイタルを聞いたのですが、奔放に実に楽しそうに演奏していました。ヴァイオリンやチェロの伴奏をするとどうなるのかちょっと興味深かったのですが、しっかりとした伴奏になっていました。それも、やはり楽しそうに演奏していました。チェロソナタ、堤剛がたびたび藤田真央に視線を送っていたのですが、どうみても孫に対する態度にしか思えませんでした。そして、最後のピアノ三重奏曲「大公」。世代を超えた演奏家による、いい演奏でした。

 この日のアフタヌーンコンサート、ミューザ川崎を会場とする最後のコンサートでした。私は、2014年からアフタヌーンコンサートを聴いているのですが、ずっとみなとみらいホールで開催されるものだけでした。同ホールが耐震強化工事により使えなくなったことから、ミューザ川崎のコンサートにも足を運ぶようになったものです。したがって、わずか2年間だけの付き合いでした。神奈川芸術協会主催のコンサートでは、石田泰尚スペシャルなどは、今後もミューザ川崎を会場とするということなので、今後も足を運ぶ機会はあるでしょう。もっとも、読響の川崎マチネーシリーズは、あと2回残っています。