「オイラさん、この人知ってる?」

お取引先の方が、携帯画面を見せながら、こんなことを聞いてきた。

その人が見せてきた画面には、いわゆるビンテージスポーツカーが複数掲載されている。

イギリス車、イタリア車、それにドイツ車。

車の脇に立ち、オーナーを名乗る人物は、若い方のようだ。

 

「いや、全然知らないです」とオイラが返答すると、

「クルマ好きのオイラさんなら、もしかしたら知っている人かなと思って」という。続いて「実はさ、この人が近々”サロン”を開くというので、行ってみようかなと思って」という。

 

何だ、その”サロン”とやらは?と思って、

「”サロン”て、何ですか?」と聞くと、

「実は俺もよくわからない」という。続いて「でも、この”サロン”で結構良い収入を得ているらしいんですよ、この人。クルマだけじゃなく、タワーマンションに住んでいるし」ともいって、部屋の中の写真やら窓から見える風景などを見せる。

オイラは「そのクルマもタワーマンションも、SNS見ただけじゃ本当にその人のものかどうかわかりませんし、そもそもオイラはよくわからんところには行かないです」と返答すると、

「やっぱりそうですよね。でも、その”サロン”の参加費用が30万円となっていて、30万円支払うんだから何かしらビジネスについての話が聞けるんじゃないかと思って」という。

 

オイラは白けた気持ちになって、

「じゃぁ、30万円分しっかり学んできてくださいよ。そして聞いたことを持ち帰ってきてください。それをプロジェクトのメンバーで共有すれば、ビジネスチャンスが広がるかもしれないですし」と半分冗談めかしてけし掛けるようにいうと、

「そうだ。まさにオイラさんのいうとおりだ。ビジネスチャンスか。うぅん」と考え込むお取引先の方。

きっと30万円支払うだろうな。お馬鹿さん。

 

もし仮にオイラの手元に30万円があったら、まずボディに大きな傷や凹みの無い、エンジン等の機関系から異音のしない過走行車を10万円以内で見つけてくる。

そうしたら、まずオルタネーター、スターターモーターを交換し、ラジエーターホース等のホース類、ベルト類も交換する。過走行車なのでタイミングベルトがすでに交換されていれば儲けモノだけど、もし交換されていないようなら必ず交換する。それから車体をリフトで上げて、サスペンション周り、特にブッシュ類やドライブシャフト周りをチェックして(緩みやガタ、ブーツの破れがないか等)、気になるところがあれば(予算が許せば)全部一緒に交換する。予算的に難しければ、、せめてドライブシャフトブーツくらいは変えておきたい。可能ならばついでにタイヤも交換しておきたい。(下回りは部品が安いのに工賃が高い。ということは作業が面倒なのよね)

という具合に車を整備して、整備費用が20万円で収まれば、合計30万円。

そこに車検費用やらボディの補修・板金費用が重なってくると、30万円じゃ収まらないだろうから、まずは路上で走ることを優先してボディの補修は後回しにする。オイラならこういう使い方をすると思う。

我のわからん人に30万円を貢ぐなんて、オイラにはできません。

 

恐ろしきところ、東京。

至る所に爆弾が埋まっています。