壇上から降りるときに蹴つまずいたり、ヘリコプターのタラップから転げ落ちたり。肝心な場面で致命的な言い間違いを複数連発したり。

おいおい、こんな「弱々しいおじいちゃん」で大丈夫かい?と、皆が思っていたところで、言動や行動、態度、偏執的妄想が、多くの国際問題を引き起こしただけじゃなく、すでに複数の裁判を抱えていて、それら裁判ですら「魔女狩りだ」と主張する。

それに加えて、個人のビジネスでも粉飾決済で真っ黒けの、「俺様ファースト」の「カミナリ爺さん」が、全米生中継中に銃撃されて、辛くも生き延びて、血を流しながら右手を突き上げて「俺は大丈夫だ!」という姿勢を示すという、ある種の「劇場」。

 

この「劇場」の観客(テレビの向こうの市民を含む)は、弱々しい、少々ボケ気味の「弱々しいおじいちゃん」より、言動や行動はめちゃくちゃの、俺様ファーストな、真っ黒な人だけど、とにかく運(だけ)が良い(強い)「カミナリ爺さん」の方が、俺たちのリーダーには相応しいと考えた。

その結果、「カミナリ爺さん」は、正式に「大統領候補」として正式に選出された。

 

やっぱり凄いわ、あの国。

ああいう「劇場」をみて、ころりと騙されちゃう人の、なんと多いことか。

あれをそのまま素直に受け取っているようじゃ、あの国とお付き合い(商売)することは決してできません。

何せ、あの国には、何事にも裏があり、何事にもナラティブがあり、そして何よりも金儲けがあるのだから。

ストーリー第一、ナラティブ第一、金儲け第一の、あの国の出来事です。

端から信用したらお終いです。

 

例えば今回の「犯人」。

20歳の若造が、軍用ライフルを使って狙撃したという。

120メートル先から発射して、「カミナリ爺さん」の右耳を撃ち抜く。

そいつを警護隊が即座に反撃して殺す。

そして、犯人を殺害後、時を置かずに氏名、顔写真、職業、学歴、住所、人柄などが大々的に報じられる。

なんという手際の良さ。犯行後の段取りが事前にされていたことが窺えます。

 

仮に犯人がプロならば、何よりもまず下見を入念にして、身を隠しつつ狙撃が可能な場所を探し、自らの安全を大優先にして、逃げ道、逃げる手段を確保した上で、実行に着手するものだと思うけれど、この犯人、どこからどう見ても素人。

実行前に「カミナリ爺さん」の演説を聞きに来ていた多数の市民が「銃を持った奴が倉庫によじ登っている」と目撃し、警察に連絡されていという。姿が丸見え。

ならば、狙撃する前に警察は撃ち殺すこともできたはず。でもそれはされず。

 

犯人は8発射撃したらしいけど、耳を打ち抜いたところで警察隊により射殺。

軍用の自動小銃を所持していたのに反撃なし。弾倉には30発、あるいは20発が仕込まれていたはずなのに。

 

結果、頬を流れる血、拳を突き上げる「カミナリ爺さん」の姿で、「劇場」だけでなく、全米が大盛り上がり。

「強い男」「挫けない男」を応援する声。

「神のご加護で生き延びた!」とする、宗教信仰者の声。

これで(一部の)一般市民、(ほぼ狂信的な)宗教関係者の心を掴んだのは事実。

全てが杜撰。もしくは手が込んだ茶番。

 

あの国は、全てにおいて、何かしらのストーリー、あるいは企みがあって、表に出てくることはほんの少しの、見た目が良いことばかりということを知るべきだと思う。

ストーリーの良し悪し、ストーリーのプランニングの上手い下手はあるけれど、無計画な人間、無計画なままで何かをやってしまう人間には、これまでのところオイラは会ったことはありません。(感覚的、直感的に判断して行動する人はいます(いました)が、多くは失敗に終わっています)

オイラがいるビジネスの場面ですらそうなのだから、いわんや政治の世界では、さらに色々なナラティブが作られて、それらが時々刻々に変わる世の中の流れを受けて、例えばプラン1、プラン2、というように幾つもの計画が存在しているのだろうし、そうした複数の計画が話の本質を分からないものにしているのだろうと考えた方が良いのだろうなと思います。

 

怖いのは、この「劇場(計画)」の目指すところ、ゴールは計画立案の立場にある少数の人間しかわからないこと。

いや、計画を立案する立場にあった人間ですら、最終ゴールを知らずにいることはよくある話であること。

つまり誰も全体像を知らないし、全てを知ることができないこと。

複数のプランが存在し、それぞれのプランが時々刻々、変化している。

誰も「ゴール」が分からない。

全てが、「騙し合い」の中にある。

それが最も怖いところ。

ゴールが分からないまま、プランは実行され、一般市民は踊らされるだけだ。

 

かろうじて生き延びた「カミナリ爺さん」の強運を示すことができたという点では、どこの、どのプランか分からないけれど、ひとまず成功と考えている一群がいる一方で、次の一手を打とうとしている別の一群がいるという恐さ。

それが彼らのナラティブの怖いところ。

今回の一件で、「カミナリ爺さん」が大人しくなれば、それはそれで良しとする一群がいるかもしれない。(「脅し」ということで)

まぁ、でも、残念ながら、すでにオツムがイカれていて、話が通じる人でもないので、「カミナリ爺さん」がこの程度のことで気持ちが折れるとも思えない。「イカれた爺さん」と呼んだ方が正しいかもしれない。

 

「カミナリ爺さん」が大統領候補者に正式に選出されたことで、次は「弱々しいおじいちゃん」がどう出るか。

今回「カミナリ爺さんの強いリーダー色を全国に示すことができた」という点ではひとまず成功と言って良いだろうけど、それを受けて各州で行われる「大統領選挙人選挙」がどう進むかが次のフェーズ。

世の中の流れを見ながら、「カミナリ爺さん」がどれだけ優れた人物であるかを示すには、どうやって市民を誘導し、「大統領再任」を実現化するか、というプランの実行の準備が着々と進んでいることでしょう。

 

思えば、前回の大統領選挙人選挙でも、「不正投票があった」とか「自分に入れられた票が廃棄された」「郵便投票の数が不当に多い」とか「正しくカウントされていない」とか、今でも決着がついていません。加えて「市民を暴動させて大統領具に突撃させる」こともプランの一つ。これら全てが「仮に当選とならなかった場合に実行するプラン」の一部に過ぎません。

全部に裏があり、全部に狙いがある。結論は即座には出ません。持久戦です。長く活動するには「寄付」つまり「現ナマ」が必要です。

寄付をしてもらうためには、何よりも市民が受け入れやすい主張、市民にとってわかりやすい主張をすることになります。お金がなければ活動できませんからね。

一言で言えば、主張に賛同してもらって寄付を募ることで、当選の際に寄付してくれた人や団体を有利に進めること、つまり「取引(ディール)」をすることが政党の活動の根源ということです。

例えばイーロン・マスクは毎月、トランプに70億円を寄付しています。もちろん、自分のお金儲けのためです。イーロンとトランプの間の「取引」は、当選の暁には「シリコンバレーを手厚く保護する」ということで成立しています。でも市民の多くは「取引」の狙いを知らないまま、熱狂的に寄付、寄進をします。どういうことが起きるのか、全く知らないままにお金を毟り取られます。

 

言い換えれば、これからも意外なことが起きるように見えるかもしれないけれども、実は、何かしらの「ストーリー」に沿った、仕組まれた出来事が連続して起きるということ。

本当に怖い。

 

念のため言っておきますけど、これって「陰謀論」とか「ディープステート」とかの話じゃないです。

あの国の人達の発想は、何事も「どうすれば勝てるか(目標を達成できるか)」そして「どうすれば金儲けが出来るか」に帰結しているので、何事も、それこそ政治の世界でもビジネスの世界でも、学校でも、スポーツでも、その時点で知りうる情報をもとに複数の計画(プラン)を立てて、状況の変化に応じて、プランの取捨選択及び変更、修正と実行を通じて、自分たちの目指すことを成功させようというもので、そもそも彼らにとっては「当たり前」「普通」のことなのです。

イーロン・マスクを見ればわかりやすいでしょう。イーロンのビジネスに対して有用な政党に寄付するという、単純な思考ですが、それが当たり前なのです。

 

あの国では「誰が責任を負うか」ということに非常に神経質です。プランが外に漏れたらジエンドです。下手をすれば、訴訟問題に発展するし、一度訴訟となれば巨額の費用を負う可能性がある。だから、どんな場面でも事前のミーティングは必須ですし、事後のミーティングも欠かせません。プランを立てて、プランを共有して、変化があれば別のプランを選択することが理解されていないと、望まない結果になった場合の揺り戻しが大きすぎるからです。

だから、日本のように「じゃ、頼む」と丸投げされることもないし、結果について「まぁ、いいか」で済ませることもありません。

例えばアメリカでアパートの賃貸契約を結ぶときですら、契約書がめちゃくちゃ分厚くて、相手が読み上げる内容を理解するのが大変で、もし分からなければ一つ一つ確認して納得してサインしなければ、次のページに進めません。全ページにサインを求められます。でも、これも「プランを共有する」ことの一つの例と考えれば、あぁ、アメリカっぽいな、と容易に理解することができますよね。

 

だから、ビジネスの場面でも、踊らされないように、話の裏を読んで、こちら側もプラン1、プラン2、というように複数の打ち手を持っておかないと、ケツの毛まで抜かれてヘロヘロにされます。

 

とはいうものの、今回の「劇場」が、どこまで共有されていたかということを考えると、それはごく少数に限られているのだろうし、今回の結果を受けて、次のプランも練り直されて、時を待たずに実行されるのだろうなぁというのがオイラの印象です。

すでに「カミナリ爺さん」は、銃撃を受けた後、これまでの「弱々しいおじいちゃんを標的にしたディスり主張」から、「アメリカ・ファースト実現へ皆で団結して取り組もう」と主張を修正しています。これは、プランの変更(あるいは誰かの入れ知恵)であることは明らかです。

 

でも、残念ながら、彼らの政策そのものについては修正や変更は全くないので、主張の変更は見せ掛けだけのものだということは、少しでもこの国のやり方を知っている人ならば当然気づくことです。その証拠に、銃撃事件以降、共和党を離れた人が多数います。それだけでなく、ヘイリーの寝返りを嫌悪して離党した人も多数います。現状、「カミナリ爺さん」と「弱々しいおじいちゃん」の支持率には大きな変化は有りません。

つまりはプラン変更の甘さが出ているということもできると考えます。

 

当然、「カミナリ爺さん」は今回の「劇場」プランは知らなかったしょう。

だって、下手したら死んでいたかもしれないんですからね。自分の命と引き換えに、自分以外の誰かを大統領候補にするなんてことを、カミナリ爺さんが受け入れるとは到底思えません。

それでも、銃撃の結果、自分を熱狂的に支持する人が増えたのですから、誰か、あるいは何かのプランに操られるしかない、自分には何もできない、とカミナリ爺さん自身が悟ったのかもしれません。それで、見た目上しばらくの間は大人しくしているように見せているだけなのだと思います。

今回の「劇場」は、「カミナリ爺さん」が承知の上で実行された、自作自演のプランだという人もいますが、それならばプロの狙撃手を雇うはずだし、頭ではなく腕あたりを狙っただろうと思います。腕ならば命を落とすことはない(腕を無くしたかもしれないけれど)し、選挙活動の際も「怪我をしながらも選挙活動をつつける強い男の姿」を見せることができたでしょうから。素人に頭を狙わせるようなことはプランにはなかっただろうと思います。つまりは、本人の知らないところで計画・立案されたプランであることは明らかです。

 

それにしても、そもそも一体誰の立てた「プラン」なのでしょう?

仮に「狙撃によって彼を消すこと」がプラン1だったとして、では今回のように辛くも生き延びた場合の修正プランはどのようなものに変更されたのでしょう?そして「最終ゴール」はどこに向かっているのでしょう?全くわかりません。それがナラティブの怖いところです。

 

かつて、根拠もないのに某国を「悪の帝国」と呼んだことがありましたし、またある国を「邪悪な国」と呼んで戦争を仕掛けたことがありました。いずれも国際的な関心を惹くためのプランの一部です。

今回は「弱々しいおじいちゃんにはこの国を任せられない」VS「頭のイかれたカミナリ爺さんにこの国を任せられない」という構図の中で、タラップから蹴躓いたり、複数回言い間違いをした理、コロナウィルスに感染したりして自滅する「弱々しいおじいちゃん」と、銃撃を受けても立ち上がり拳を見せ、団結を呼びかける「カミナリ爺さん」という情勢ですから、今のところは、情勢的には「カミナリ爺さん」のプランの方が優勢と言って良いでしょう。だけど、恐らく「弱々しいおじいちゃん」からは何らかのプラン(「隠し球」)があるでしょうから(今のところ「撤退しない」と言い続けている点で、裏がある、タイミングを測っていると思った方が良い)、果たしてどうなるか。

 

このように「入念に準備すること」は「普通」「当たり前」と思う人がいるのがあの国だから、ビジネスの相手方となるこちら側としても、入念な準備と着手、そして決して隙を見せないことが、あの国の人たちと付き合う際には何事においても最も大切だと思うオイラです。

現実を知らず、今回の件で泡食っているわが国の官僚やセージ家(を自称するウソつきゼニガメ共)には、もっと知見を広げて、ケツの毛を抜かれないように、我が国を生き残させるためのプラン、特に「イカれた爺さん」が大統領に再任された場合の「あの国(爺さん)を怒らせない、地味だけど強力な、イカれた爺さんの口を塞ぐための反撃プラン」を複数立てて準備して欲しいものです。

そうしなければ、「もしトラ」が現実のものになった際に、やられ放題で泣きを見ることになりますからね。