たまたま東京出張していた時に、何気なく付けたテレビで放送していた「魔改造なんちゃら」という番組。

オイラが見たのは、おもちゃの水鉄砲3台を改造して、7.5M先の的に立てられた10本のロウソクを消すというもの。

挑戦者は、ロボコンの全国大会優勝の高専、小型モーターのエンジニア、そして四輪と二輪を得意(と自称)する会社のエンジニア。

 

高専チームは、7.5M先まで水鉄砲を届かせることに注力したのは良いけれど、こう言っちゃなんだが「小便小僧の強力おしっこ」あるいは「元気な爺様のおしっこ」のようで、何だか笑えるものに。まぁ、限られた予算と人員の中で良く健闘したと思う。学生チームだし。

 

続く小型モーターの会社は、合理的かつ効果的な、さすがと思わせるエンジニア的な取り組み方。まず的を右側、中央、左側の三分割して目標を定めて、それぞれの目標(エリア)に確実に水が届くように、高圧の空気を使って一気に水を飛ばす手法をとった。これにより、効率的にロウソクを消すことに成功した。

 

一方で、(自称)四輪&二輪メーカー。彼らのやることは、実際の四輪や二輪と同じく「残念な」考え方で水鉄砲を改造していた。

まず彼らは、一台目の水鉄砲を使って、的に満遍なく水を掛けることで火の勢いを弱め、続いて二台目の水鉄砲でロウソクの火を消し、そうして三本目の水鉄砲では、カメラで得た画像を自慢のAIで解析して、消えずに残ったロウソクを狙い撃ちして消す、という彼等曰く「先進的」で「独自」かつ「俺たち凄い」作戦を取った。

確かに、他チームにはない段取りと手法はいかにも彼等らしい、彼等曰く先進的、先取的なものだけれど、画面を見ていて正直笑って(苦笑して)しまった。

何故なら、一台目の水鉄砲は水を満遍なくかけることを目的としたので、そのこと自体は上手く出来たのだが、ロウソクを消すことが目的となっていなかったがゆえに、的は単なる水たまりとなってしまった。続く二台目の水鉄砲は、ロウソクの火をどのように消すかという、そもそもあるべき技術的な成果目標が設定されていなかったまま実戦投入されたために、単純に的に水をチョロチョロと掛けただけになり、結果的にロウソクを消すことが出来なかった。続く自慢のカメラ&AIを採用した最新鋭の三台目は、合計5回の水の発射で効果的かつ的確にロウソクを消すと主張されていたが、なぜか3発しか発射されず。発射された水も的を外れ、何もしない時間だけが経過しジエンド。期待はずれ。

ダメダメだね。恥ずかしいよ。高専チームにすら、技術的に完全に負けている。予算規模、人員は大幅に上回っているのにね。惨め。そもそも大きな視点からの計画が出来ていない。

 

四輪&二輪の会社は、昔から変なことをするのが得意な会社なのだけれど、変なことをした結果、ダントツ一番になれたかと言えば、瞬間的に好きモノの間で話題になったことがあったかもしれないが、それが「業界のスタンダード」、あるいは「憧れ(もしくは同業他社からの「妬み」)の対象」となったことはなく、一言で言えば、不幸な、勘違いばかりの残念な会社だと思わざるを得ない。「俺たち凄い」の理由が、「他社がやっていないから」ということに留まっていて、実効性、現実性、信頼性、そして継続性が伴わないのは、単なる自己満足、アイディア倒れ、に過ぎないということにすら彼らは気づいていない。

確かに、地理的に、隣には四輪でも二輪でも世界戦で優勝経験が複数回あるジャイアンがいるし、またもう片方には取り回しの良い、格好良い二輪メーカー(実はT様にエンジン、足回り、排気等の世界最高レベルの技術を提供していたりする。これは公然の秘密)がいるので、両隣に勝つには変わったこと、目立つことをするしかない、と考えるのもわからん話じゃないけれど、彼等が持つもので両隣に勝っていることといえば、残念ながら、技術力とか生産能力じゃありません。彼等が現実化できていることと言えば、(結構無理くりですが)「コストダウン」しか思い浮かびません。

 

でも正直な話、彼等のコストダウン手法は、これまた笑っちゃうを通り越して、呆れるレベルなのですよ。

例えば、本社の建物内はほぼ真っ暗で、昼間は電気を節約しているというし(その代わり外から日の光りが入るから窓のシェードは全開。背中が暑いぜ)、業務で使うペンやノートは各社員の自前となっているし。

食堂ですら、真っ暗なんですからね。飯食う気持ちも萎えてしまいます。気持ちが盛り上がりません。(「電気のついているところに行けば人がいるのだから、訪ねた時は明かりを目指せばいい」と言われたのは嘘みたいだけど本当のこと。まるで闇の砂漠を当てなく漂う気持ち)

 

車に関するコストダウンも、ピントが外れたものばかり。

例えばワイヤーハーネスをギリギリまで切り詰めたことで、一台当たり○センチの「余分」が出来、その「余分」を複数台分集めることで、一台分のワイヤーハーネスとして使うことが出来た。これで一台当たり幾らコストダウンできた、と言って、社内で成功例として共有されていたりするのだけれど、長さの点で余裕の無くなったワイヤーハーネスは、どうしても曲げ伸ばしに弱いので、ハーネスの剥けとか擦れが発生して、電気系統のトラブルが頻発している車種もあるということは、社内では認識されこそすれ、実態としてほぼ無視されていたりする。

彼等は、「それはディーラーで持ち込み修理してますよ」というのだけど、いやいや、そもそもそういう「生産現場」から発生する、「同じ原因」を根源とする、「同じ問題」を減らすことのほうが、余程効率的・効果的かつ根本的なものだと思う。ディーラーへの負担も減るし。

 

ま、そんな会社が高専チームにも小型モーターチームにも技術的に負けるというのは、当然といえば当然。小型モーターチームの効率的な取り組み方を見れば一目瞭然ですね。だって、与えられた三台の水鉄砲を、フルに活用出来ていないのですから。笑っちゃいますね。

現実を見ようとせず、ピントのボケたことを「先進的」とか「先取的」とか「俺たち凄い」とか思っちゃうあたりでアウトなわけですよ。

 

でも、かつて存在したスクエア4エンジン、シャフトドライブの大型バイク、ターボやロータリーエンジンの大型バイクとか、軽サイズの本格オープンスポーツ、それから現在の高効率、高出力、そしてウルトラスムーズなエンジン特性の大型バイクとか、嫌いじゃないですけどね。

でも、何か、もう一味違うものがないと、貨物車と軽トラ「だけ」の会社になってしまうんじゃないかと、勝手に心配しています。

例えば、この会社のエンジニアが、本質的に先進的で先取に富んだアイディアを思いついたとしても、それの現実化に幾ら必要なのか、というコストダウンの圧力に屈してしまって、ファイティングスピリットを失っているのではないかと危惧します。実際、この会社からの退職者数は結構な数になっていますし。

 

創業者一族からのプレッシャーに加えて、資本関係の上位組織からのプレッシャーを跳ね除けるのは、相当困難だろうということは想像に難くありません。実際、同グループ内のダ○ハツは、T様からのゴリゴリのプレッシャーに負けて自滅してしまいましたし。

 

大メーカーの資本参入を受け入れた今、独自性とか他社との違いとかを実際の四輪&二輪に反映するのは大変難しくなっているということはわかりますが、でも「変な会社」であることのプライドは無くさないでいて欲しいと思います。そうでないと、どの会社の、どれもこれも、みんな同じ車&バイクになってしまいますからね。それじゃツマランです。大きなお世話ですが。