オイラの住む街に、ちょっと心惹かれる家があるのですよ。

場所は街道から一本入ったところ。

街道と並行に走る道路の南側に面した土地なので当然南向き。日当たりも良さそう。車の通りも少なそう。

田舎の農村の中にあるのに、その土地にはいわゆる普通の一般住宅が建っている。

パッと見た感じではすぐにでも買う人が出てきそうな場所。

だから、どんな人が住むのかなぁ、なんて勝手に思っていたのですね。

でも、売れてないんですよ。ずいぶん長いこと。

庭も草ボウボウ。

 

でね、気が向いた時に、散歩がてらその家の前を歩いて、なんだ、まだ売れてないのか、なんて思って見ていたのです。

そしたら、見知らぬ爺様が「ニイさん、この家買うの?」と聞いてきました。

オイラが「ずいぶん長いこと売れてないですね」と返答すると、「この家ね、止めておいた方が良いよ」という。

怪訝な顔をしていると、「この家ね、水道もガスも通って無いんだよ。飲み水も下水も。ガスなんて、ほらプロパンでしょ」と言って、家の脇のプロパンガスの元栓を示す。

ふぅん、でも今の世の中、水道が通っていないって、嘘でしょ?と思っていると、「飲み水はね、家の裏にある井戸水、下水は裏の川に垂れ流し。トイレは汲み取り。ひどいよね」という。

続けて「この土地、地目が「畑」なの。だから用水が通ってないの。街道から奥に入っているから、水道管は街道から引っ張らないといけないんだけど、そうなると、水道管を他の家の下に通さなきゃいけない。わざわざ街道沿いの他所の家を取り壊して、自分の家に水道引く人なんていないよね。無理だよ、そんなこと」「それにね、そもそも地目が畑だと住宅は建てられない。取り壊したら二度と建てられない。だから住むんだったら今建っているあの建物に、水が無いまま住み続けるしか無い。井戸水、垂れ流し。そんな家、住みたい人がいるわけない。だから売れない」という。

 

ふぅん

「変な家」って、実はいろんなところにあるのかもね。

住宅の値段が上がっている昨今、ちゃんと調べた上で買わないと泣きを見ますね。

悪い不動産屋もたくさんいますし。

地元の爺様に聞くのが良いのかもね。