近所に「大迷惑爺さん」が住んでいたのだけど、そいつが漸く死んだらしいのですよ。

死んだらしい、と言うのは近所の婆様たちとの噂話で聞いたことだけど、多分本当のこと。

というのも、近所の婆様が隣の市にある地域の拠点病院に行ったとき、迷惑爺さんが担架に乗せられて搬送されて来たのを見たらしく、それ以降、この街で日常的に発生する迷惑行為もなくなって、当たり前の静かな日常が続いているから。

 

でもね、この迷惑爺さん、本当に面倒な、迷惑な奴だったのですよ。

例えば、道を走る車に「うるさい!」と怒鳴ったり、犬を散歩させている婆様に「ウチの庭にうんこさせやがった」と因縁をつけて庭の手入れをさせたり、町中の隅々まで届くようなテレビの音を立てたり、近所の家が水道修理をしていると「邪魔だ。俺に許可なく音を立てるな」と因縁つけたり。他にも小学校の放送が煩いとか、小学校の銀杏の木の銀杏が臭いとか、子供達の笑い声がうるさいとか、それこそ年中至る所で怒鳴り声をあげて、道ゆく人全員に因縁付けていたのですね。

 

そして、最も嫌われた事例としては、隣の家に「屋根に落ちる雨音が煩い」と因縁をつけて、雨が降れば文句を言いに行き、晴れの日は庭が泥濘んだのはお前の家の屋根のせいだと因縁をつけに行き、ノイローゼになった隣の人が最終的に追い出されてしまったことです。

それだけでなく、その追い出した隣の家に悪びれもなく住みついていることがわかって、近所の人たちの怒りを買い、この爺さんと関わってはいけない、因縁ジジイだ、という「バッテンラベル」を貼られることになりました。

 

そんな迷惑爺さんですから、当然ながら近所の農家さんがお裾分けしてくれる野菜とか卵とかの食材もなく、町会の集まりの連絡もなく、要するに単なる迷惑な爺さん、いつまで迷惑かけるつもりや、として町の人たち全員から忌み嫌われていたのですね。

 

さらには今のような寒い時期になると、各家に備え付けの灯油タンクにガソリンスタンドの灯油トラックが補給して、毎月末に請求書を各家々に届けて支払う仕組みになっているのだけれど、その爺さん「俺が許可していないのに勝手に灯油を補給したのだから、支払う気はない」と突っぱねた。それ以降、この数年来、爺さんの家には灯油の補給は無くなっていた。

 

とはいえ、ここは山裾の雪が降る小さな寒い町なので、誰かが食材の買い出しやら、灯油の買い出しやらをしているのではないかという話はあって、オイラは知らなかったのだけれど、実はその家には30年来の「引きこもり息子」、年齢としては60歳を越した「禿頭の大デブ」が迷惑爺さんと住んでいて、そいつが爺さんの面倒を見ていたらしいのです。

 

でもね、これまで禿頭の大デブが働いていた姿を見た人は誰もおらず、ましてや街を歩いている姿も、商店街を歩いている姿も、八百屋で買い出しをしている姿も、誰も見た人がいないので、どうやって暮らしているのか皆、疑問に思っていたのですね。

何しろ爺さんも相当昔から働いている姿を見たことがない人だったそうですし、ハゲデブも然り。

そもそもどうやって生活するお金を得ているのか、誰にもわからないのですよ。

例えば国民年金は40年間の支払期間がありますけど、迷惑爺さんもハゲデブも支払っていないでしょうから、年金支給はない(か、うんと少ない)でしょうし。

 

まぁ、別に他人のことなので知ったことではないですけど、健康保険料やら年金保険料、それから住民税、固定資産税くらいはきちんと納めてほしいですけどね。国民の義務ですし。

でも、迷惑爺さん一家のことですから、働かなくても済むように年金事務所とか町の生活保護課に因縁つけて毟り取っているのでしょうけどね。

 

ま、丁度、確定申告の時期です。この街の住民が赴く先は、隣の市のターミナル駅前の税務署になります。

この街の住民の数も知れたものですし、ほとんどが爺様婆様の農家ですから、未納の分があれば、それは流石に税務署が見逃す訳ないでしょうし。

それに何しろ、人が死んだタイミングというのは例えば相続税とか税務処理が必ず発生するタイミングですから、税務署も必ず調査するでしょう。

 

そうなれば、ハゲデブが税務署と一戦交えるかもしれませんね。

近所に人に因縁付ける大馬鹿迷惑ハゲ親子ですし、ましてや隣の人を追い出してのうのうと住み着いた家が移転登記されているかも疑問ですし。

それに、迷惑爺さんが死んだ後、ハゲデブが近所の人たちとちょいちょい揉めているそうですから、ハゲデブに税務署からデカい「お灸」を据えてほしいものです。ちょっとの間でも静かにしろや、と思っている住民がたくさんいますので。

 

さぁ、新たな騒動の始まる予感です。

シメシメ。

近所の人たちは、ザマアミロ、天罰だ、という気持ちで進捗状況をウォッチしています。