そんなわけで、2023年も残すところ2ヶ月となって来ていますが、引き続いて自家用車探しを続けているオイラです。

この週末、愛車1号のメンテナンスをお願いしている工場の方から「クルマを売っているところじゃ無いんだけど、ま、ちょっと面白いところだから、もし興味があったら行ってみて。多分、オイラさんも面白い場所だと思うよ」と言われて、ある場所に愛車2号で赴きました。

 

しかし、しばらくウロウロする羽目に陥りました。

教えられた住所に着いたはずなのですが、そこがどこなのかわからない。見つからないのです。

どうにかこうにかして、どうやらここらしいという場所を通りかかりました。

何も聞いていなければ、気づかずに通り過ぎる場所です。

どうみても町工場、いや、工場というには無理がある。誰がみても(ボロくて、汚い、朽ちかけの)「納屋」にしか見えません。

看板もありません。

 

で、「納屋」の脇の扉が半分空いていたので、意を決して「こんにちは。やってますか?』と声を掛けました。

すると奥から、目つきの悪い婆様が、太もものあたりや腹のあたりで手の油を拭いながら出てきて「何?」と慇懃に聞いてきました。

オイラは、「あの、見学ってできますか?」と聞くと、チッと舌打ちをして、そこで待つように言われました。

しばらくすると、これまた油まみれの爺様が出てきて「何の用?何、見に来たの?」と邪険に言われました。

で、「はい、通り掛かったのでもしお邪魔でなければ」とオイラがいうと、「まぁいいや。ちょうど一服するところだから。ささ、こっちに入って。早く!」と何故か急かされました。

 

入ってみると、何やら数多くのパーツが床に無造作に置いてあリます。足の踏み場もありません。

本田宗一郎御大が見たら、大カミナリ直撃レベルです。整理・整頓・清掃・清潔・躾、どれも維持管理されていません。

 

「で、何?見に来たってどういうこと?何しに来たの?」と爺様が聞くので、「こちらでパーツを組み上げていると聞いたので、一度見てみたいと思いまして」とオイラがいうと、「ふぅん、そう。誰かから聞いたの?」と聞いてくる。

「xx工場の▲▲さんです」と答えると、「▲▲さん?あぁ、あの人。あぁそう」という爺様。

 

徐に爺様が「こっち来て。こっち」と奥から爺様が手招きする方向に行くと、奥の方で、婆様が床に座り込んでパーツを組み付けている背中が見える。あぁ、こんなところで、こんな老夫婦が手組みしているのか、と正直驚きました。

ここには旋盤とかフライス盤は無いようなので、加工はせず、組み付け専門のようです。

「これでも陸運局に持ち込めばナンバーは付くし、自賠責にも入れるし、保険会社に拠るけれど任意保険にも加入できる」と爺様がいう。

本当か???

 

組み付け作業の邪魔をしないように配慮しながら、出来る限り隅々まで覗き込んだのですが、パーツはアジア某国からのパクリ品ばかりのようですし(「見た目はキレイ、中はボロ」)、造作も雑すぎます。

だからでしょうか。組むときに、「スルッと一発で組めることは稀で、叩いたり曲げたりするから、結構大変だ」(爺様)とのことだし(なるほど、組み付けるときにグリス使わないと嵌まらないのだな、と気づくオイラ)、「バリがあって、それも取り除かないといけない。手を切るから」(爺様)とのことでしたから、組み付け精度以前に、そもそもパチモノパーツの品質に対する信頼性は、相変わらずの低レベルのようです。

ちょっと見ただけでも、使っているうちに良くないことが起きそうな、悪い予感しかしません(偏摩耗とか、脱落とか)。

せめてシフトリンケージやブレーキ周りには割りピンを使うくらいの安全意識があって欲しいものだ、と思いました。それに電源コード類がプランプランにぶら下がっているのも、これで完了、このまま路上を走るのだ、と言われたら「命賭けろ」と言われたのも同然だと思いました。

 

xx工場の▲▲さんが言っていたように、確かに作業そのものは面白いのですが、老夫婦2人が、しかもこんな山の中の小さな汚い納屋の中で床に座り込んで作業しているなんてね。

正直、驚きました。

かつてのロータス(英)やらベントレー(英)のように、手組みの専門職人が多数いる、プロ意識の高い「手作り自動車メーカー」とは全く違います。どう見ても「内職」レベルです。

 

それにそもそも、

どうやってビジネスを維持しているのでしょうか。

どこかからの下請けでしょうか。

どうやって型式認証を受けているのでしょうか。

どうやって、衝突安全性を確保しているのでしょうか。

どういう分類で自賠責保険を支払うのでしょうか。

そもそも車両の法規上の区分は?

品質管理、品質確認はどこか別の場所でやっているのでしょうか。

パーツはどうやって入手しているのでしょうか。

そもそも爺様婆様は、自動車整備士?二輪自動車整備士?

 

などなど、色々聞きたいところでしたが、爺様も婆様も態度が頗る悪く、オイラの相手をすることが面倒くさそうだったし、あまり内情を知られたく無さそうで(そのため看板すらない)、このままここに居ても無駄だと思ったので、さっさと帰ることにしました。

 

オイラが愛車2号にエンジンをかけると、「あぁ、これまた懐かしいものに乗ってるな」という爺様。

どうやらバイクに詳しいようだったのですが、こっちからこれ以上関わるのは嫌だったので、愛車2号に関しては何も言わず、「じゃ、お邪魔しました」と挨拶してその場を離れました。

 

オイラの経験上、車がどのように製造されているかを知ることはユーザーにとって最も大切なことです。

例えばフォルクスワーゲンのウォルフスブルク工場では、工場見学ツアーが行われていて、ベアシャーシがドブ付けで防塵処理を施されるところから始まり、作業員が各パーツを組み付け、最終的に全てのパーツが組み上がったのち、テストコースに出るところまで一貫して見ることができますので、ユーザーからすれば安心感しかありません。(オイラも実際に製造工程を見学し、完成車の試乗もしました。さすがドイツ車、初期の足回りのゴリゴリ感が凄かったです。そのうち馴染むでしょうけど)

 

だから、爺様婆様が油まみれで力技で組み付けている姿を見てしまった以上、自分の命を預ける気持ちにはなりませんね。

この「納屋」での低いパーツの精度、パチモノ部品のみでの雑な組み付け作業を見たことから判断するに、仮にオイラが、ここで組み上げられたものを「信頼できるか」と問われたら、「信頼出来ません」と答えることになるでしょう。

まぁ、この「納屋」の存在を知らずに、どこかの販売店に最終的に綺麗な見た目で展示されている姿を見たら、オイラとは別の返答があるかもしれませんけどね。

見た目のキレイなクルマに命を賭ける!イチかバチかの、大博打です。悪辣な(自称)車屋が素人を騙す手口です。

 

それに、この「納屋」にもう一度行ってみたいとは思いません。

地元民のオイラですら迷った場所ですので、簡単には見つからないですし、次に行くときは迷わないとも思えないからです。

それに加えて、爺様婆様の態度からは、他人から見られることを避けているように思えます。

訪問者は邪魔者扱いされますし、「営業妨害だ」「仕事の邪魔をするな」「職人仕事にケチをつけるのか」とか難癖つけられるのも嫌ですし。二度と行く気はありません。

 

でも、色々あるものですね。

知ることは大切ですし、楽しいです。

オイラの好きな「クルマ」ならば尚のこと、知らないことがたくさんあります。

ま、でも「命を預けるもの」ですから、もっとマシなやり方があるように思いますけどね。

本田宗一郎御大が、工場の作業員だけでなく、全社員の制服に白いツナギを採用したことは、とても有名な話です。

「クルマ作りは命を預かる仕事。お医者さんと同じ気持ちでクルマを作ろう」

整理・整頓・清掃・清潔・躾

これが無いところに、安全、安心はありません。