正月休みに実家に戻った時に見つけたDVD。
そのDVDは.、French connectionの監督さんの撮影プランに大きな影響を与えた映画。
それは「Bullitt」(1968年作成 スティーブ・マックィーン主演)
「10年に一度」の「車好きが見るべき映画」に影響を与えた映画となれば、これは見るしかない。
残念ながらこのDVDには本編に副音声が付いていなかったのだけれど、その代わりにマックィーンさんや監督さんが本作に対する意気込みを語っている「付録」が付いていたので、本編を観たのち、付録を引き続いて見ることにする。
まず本編。
とにかく偉そうな態度の議員登場。
議員の命令でシカゴから何故かわざわざサンフランシスコに飛んでくる証人の警護をサンフランシスコ市警がさせられる羽目に。
宿泊先は秘密だったはずなのに、なぜか警護対象は撃ち殺され、護衛の刑事も大怪我を負ってしまうところから始まるこの映画。
いきなり顔つきがもう、何と言っても悪そうな人が議員役。見るだけでムカムカする顔つき。時代劇で言えば悪代官の顔。まぁ、映画にしても舞台にしても出演者全員が美男美女であっては、話としての面白さがないし、リアリティを欠いてしまうけれど、それにしても悪そうな人相。悪い政治家とか悪い医者、悪い官僚とか、社会的に正しい職業と認知されている職業に、どう見ても薄汚い手口で成り上がっていて、しかも銭儲けを企んでいるとしか思えない顔相。おヌシも悪よのぉ。
そう、本作の目指したものは「リアリティ」。(付録)
病院でのシーンでは本物の病院を使って、本物の医師や看護師が主体となって撮影されたそうだし、マックィーンさんの彼女の勤務先の建築会社も本物を使ったそう。フムフム。
「撮影チームがドカドカ入ってきたから皆さんに迷惑かけちゃったな。」(付録)という反省付き。
悪代官顔の議員も恐らく人相で選ばれたのだろうと思う。本人もそんなことは百も承知で、嫌味たらしい口ぶりを見せる。うぅ~ん、ぶん殴ってやりたい。しかも「警察に協力しよう」と世間に呼びかけておきながら私欲を満たすために警察をこき使おうという阿漕な役。口汚く罵るようなことはせず、理屈で相手を追い込むやり口。でもこんな人、社内外から嫌われているのに何故か昇進している人が思い浮かぶ。どこの会社にもいる。これもきっとリアリティ。
で、本作を有名にしたカーチェイスの場面やサンフランシスコ空港での場面。
「空港での撮影は大変だったよ。飛行機が通り過ぎてから動かなきゃいけなかったし。」との発言(付録)もあり、確かにリアリティ(危なさ?)を感じさせる。(ちなみに「新幹線爆破」(高倉健さん主演)のエンディングを思い浮かべてしまうのはオイラだけ?(空港で地上に飛び降りて飛行機を横切って走るところ)「新幹線爆破」1975年)
続いて付録を聞いて驚いたのは、マックィーンさんが「自分は車の運転は素人でハイスピードで走るのが怖かった。」と言っているところ。そのため「レーシング場で練習して100マイル出せるようになった。」とも言っている。
へぇ、車やバイクが大好きな人で、個人的に車だけでなくバイクレースにも出ていて、おまけに飛行機も持っていた人でしょ。「栄光のルマン」でもレースカーに乗っているのに意外な告白。
でも「街中のチェイスは本当に大変で事故や怪我人が出ないようにしないといけなかった。」と言っていることから、安全に、かつ ハイスピードで、リアルに、ということを考えての「素人」発言だと思うのが自然。これぞプロフェッショナル。
一方で敵役のダッジ・チャージャーのドライバー、ビル・ヒックマンさんはこの映画に出演する以前からスタント・ドライバーとして数々の映画に出演していた方だそうで、ドライビングに関しては「プロ」。マックィーンさんの指導もしたのだそう。
ダッジ・チャージャーがフル加速してマスタングGTから逃げようとする場面で、一旦停止してシートベルトをカチリと締める手順が本気を感じさせる。細かいところだけど、これもリアリティだなと感じる。
カーチェイスで主人公フランク・ブリットが乗る車となれば、マスタングGTにして正解だったな、なんて思うのは、まんまと騙された一般人。
脚本では当初、知的で教養もある主人公が使う車はメルセデスがピッタリということで、当初はメルセデスのコンバータブルが使われるはずだったけれど、撮影当日、現場にマスタングをスタントコーディネーターが持ってきて、「変態が運転する車で、変態が乗る車二台でチェイスしよう」という提案をしてきたのだそう。だからあの場面で「嫌悪感をあらわにしたんだよ。演技じゃない。本当の自分だ。」というマックィーンさん。本当は嫌だったのね、あの車。
途中、同じビートルがモグラ叩き的に3回出て来て坂道を登ったり下ったりするのはご愛嬌だけど(別のインタビューでマックィーンさんが「あの場面はゴミだ。」と言っているのには笑った。何故なら「途中、ホイールカバーが外れたのにわざわざ停めて付け直しているんだぜ。悪人が善人に追いかけられている場面で外れたホイールカバーを付け直す暇なんてあるわけない。全くわかってないな、って怒ったんだ。」のだそう。これも「リアリティの追求」から出た言葉だろう)、サンフランシスコの曲くねった坂道を全速力で疾走させるのは怖かっただろうなと思う。あの急な坂道登る時は坂道の先が見えないし、降りる時は降りる怖さでいっぱいだ。(実はオイラも経験済み)
ちなみにFrench connectionでも危険なシーンではハックマンさんではなく実はヒックマンさんがドライビングしていたんだと。へぇ、知らんかった。もう一度見てみよう。
それからマックイーンさんの彼女役のジャクリーン・ビセットさんは「誠実さ」が決め手になって採用されたそう。(付録)
暴れん坊のマックィーンさんを大人しくさせるには「嘘のなさ」や「誠実さ」が肝心という判断なのだそう。建築会社で難しい計算をしている様子からも「真面目な人柄」が感じられる。
男物のシャツを着て朝食を作る姿が何とも古き良きアメリカン。今の世の中じゃコンプラで袋叩きだ。
それに彼女の愛車の黄色い356オープンが可愛い。カリフォルニアの空にもピッタリ。
でも、これも下手をすると「男女バイアスだ」として叩かれそう。怖い世の中になったものだ。
本作のマックィーンさんは寡黙で、檄したり、大声を張り上げるようなこともない。
あのイヤな顔付きの悪代官にも”Bullshit”と一言で片つけている。
ありがとうアニキ!スッキリしたぜ!
マックィーンさんは実はFrench connectionへの出演がオファーされていたそうだけれど、実現せず。でもポパイ刑事のような口汚く罵ったり、激昂したりする役は似合わないと思うので受諾しなくて良かったと思う。そんなことしたら”King of Cool”じゃなくなっちゃうからね。
本作出演時38歳。50歳で亡くなったそうだけれど、オジサンになってからの「格好良い姿」も見て見たかったな、と思う。確か”Hunter”が最後の主演作だっけ?実家のどこかにDVDがありそうなので探してみようと思う。
(ちなみにあの悪代官役の人の「ズボンの丈が全て短いのは、悪代官役と同じ名前の役者と取り違えて準備されたものだからだよ。」というインタビューには笑った。何事も裏がある。改めて悪代官のズボン丈に注目して見てみよう。)
Bullitt (1968年)