※※ この本を読んで一言 ※※
中世のフランスの雰囲気を感じられ、そしてミステリーとしても楽しめます。
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宮園ありあさんの前作「ヴェルサイユ宮の聖殺人」が面白かったので、続編の「異端の聖女に捧げる鎮魂歌」も読んでみたくなり早速購入しました。
このシリーズではマリー=アメリーとジャン=ジャックのコンビがいい味を出しているのですが、今作では別行動が多かったので、その点はやや寂しかったです。
その分、ランベールとジャン=ジャックの男くさいコンビが面白かったのでまあ良しとします(笑)。
ストーリーとしてはクロティルドが2人いるので少しややこしいですし、場所がころころと入れ替わり、途中で16世紀のクロティルドの話も挟まれるのでよりややこしいですが、トリックとしては分かりやすいです。
特にギベール主任司祭とアニュスのアナフィラキシーショックによる死亡はすぐにわかりました。
しかし犯人は最後まで全く分からなかったですけどね(汗)。
それにしても殺され方は結構グロかったですね。
少女の目を抉り出して目を死体の手に乗せる、また少女の胸を切り落として死体の手に乗せる、ナイフに雷が落ちて、そのまま転落して首の骨を折るなど生々しいです。
しかしよく考えたらその殺し方は聖人の処刑になぞらえているので、犯人にしてみれば別に残酷とも思っていなかったでしょう。
そしてその時代のヨーロッパは拷問、処刑は当たり前のように行われ、民衆の前で処刑が行われていたので、殺す側も現代の日本人とは死生観がまるで違うと思います。
ちなみに盲目の修道女オディルが登場した時は、犯人はオディルで実は盲目ではない!と思っていました。
実際はオディルは綺麗な緑色の瞳で、どうやら16世紀に処刑されたクロティルドの子孫のようですが本当に盲目だったのかは読み取れませんでした・・よく読めば分かったのでしょうか。
前作と同様に、今作でも読み終わった感想としては、ミステリ云々よりも、その時代の背景と、そこに生きた人たちのことを考えてしまいます。
前作は王宮が舞台でしたが、今回は修道院が舞台なので、宗教、特にキリスト教の教会の話が中心になります。
そして16世紀のユグノー戦争からフランス革命前の1783年の教会と王室、ブルジョア、庶民のかかわり方が描かれています。
作中で述べられていますが
『信仰とはいったい何か。神の愛と赦しを説きながら、人々は長い歴史の営みにおいて、信仰を旗印に数々の殺戮を繰り返していた。』
とあるように、極限まで矛盾した事を平気で行ってきた人類に疑問を呈さざるを得ません。
だからこそ、ラストの1文のアンジュー女伯爵クロティルドの願いが最も重要だと思います。
『いつの日か、身分や信仰の違いで愛する者たちが引き離され、死ななくてすむ世界になるようにと、クロティルドは神に祈り続けた。』
中世フランスと現代の世界・・どれほど人類が精神的に進歩して、クロティルドの願いがどれだけ達成に近づいたのか・・私には判断ができません。
歩みは遅くともクロティルドの願う世界に近づけるといいですね。
(個人的評価)
面白さ ☆☆☆
登場人物 ☆☆☆
ミステリ ☆☆
宗教の矛盾 ☆☆☆☆☆