※※ この本を読んで一言 ※※

中世西洋の貴族社会とミステリの組み合わせがこんなにも面白いとは!

ひとえに宮園ありあさんの実力ですね。

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今回読むのは第10回アガサ・クリスティー賞優秀賞受賞作である宮園ありあさんの「ヴェルサイユ宮の聖殺人」です。

 

最近はミステリ小説をインターネットで探すときも、「○○賞受賞作」に釣られて買ってしまいます。

特にミステリ小説の賞レースの受賞作であれば外す確率はグッと減りますからね。

もっともメフィスト賞受賞作は別格ですが(汗)。

 

王族のアパルトマンの中で起きた殺人事件を、公妃であるマリー・アメリーと士官学校教官である大尉のジャン・ジャックが解決していくという”バディもの”・・と言ってしまえばありきたりに聞こえますが、これが面白い!

 

公妃は生活ぶりは王族らしく贅沢ですが、民衆にも慈悲深く、王族らしからぬ好奇心と行動力でとても魅力的な女性です。

一方、大尉もぶっきらぼうでありながら優秀で思いやりがあり、生徒たちからも慕われるいい男です。

 

謎も1人の殺人事件は、実は投資の失敗による恨み、少年への去勢、軍事情報の漏洩など様々な問題が絡み合っていることが判明し、壮大なスケールになっていきますが、今回はそこまで話が広がらなかったので、物語が綺麗にまとまって終わったと思います。

 

そしてところどころに歴史的事実であるラボアジェの実験や熱気球の初飛行が出てきたり、モーツァルトの名前が出てきたりと物語に彩を添えています。

 

また中世のフランスの王侯貴族、軍人、修道院、庶民の生活ぶりや音楽や絵画などの芸術分野ことも描かれており、その時のフランスの様子は、詳しくない私にはリアルに感じられ、一層物語を華やかにします。

 

ところで貴族・王族と言えば、私の中では平民や社会に対しての慈善事業が義務とは考えているが、それでも平民に対しては横柄であるという印象です。

マリー・アメリーのモデルはあとがきで宮園さんが「ランバル公妃マリー・ルイーズ」と言っています。実際のマリー・ルイーズは作中のマリー・アメリーのような慈悲深い活発な女性だったのでしょうか?

また一介の軍人であるジャン・ジャックがマリー・アメリーに対しぞんざいな言葉遣いが許されたのかなどが疑問に思いました・・が、しかしこれは物語であり、ジャン・ジャックはフランス語では敬語を使ってたと思っています(笑)。

 

この物語はとても面白く、マリー・アメリーとジャン・ジャックの関係はこれからも続いていくのでしょうが、この物語の舞台は1782年。

フランス革命の1789年の7年前であり、終盤のデカールのフランスを憂う言葉もあり、作中ではほとんど触れられていないマリー・アントワネットの散財や民衆の王侯貴族への不満が蓄積されていた時期ででもあります。

 

また宮園さんのあとがきでも、フランス革命によりこの2人はどうなるのか?と触れらています。

マリー・ルイーズは歴史上では悲惨な最期を遂げているようです。

 

続編「異端の聖女に捧げる鎮魂歌 」でフランス革命に突入はしなさそうですが、物語中では最後までなんとか2人が幸せでいてほしいですね

 

ということで続編を読むのが楽しみです。

 

(個人的評価)

面白さ   ☆☆☆☆☆

ミステリ  ☆☆

登場人物  ☆☆☆☆

バディもの ☆☆☆☆