※※ この本を読んで一言 ※※

前作からヨリ子さんの面白さはそのまま二代目に引き継がれています。

ここまでくるともう「安楽ヨリ子」という様式美と呼べるでしょう(笑)。

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ーー 【注意】 ーーーーーーーーーー

この「居酒屋「一服亭」の四季」の感想には前作「純喫茶「一服堂」の四季」のネタバレが含まれています。

これから「純喫茶「一服堂」の四季」を読もうと思っている方はご注意ください。

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東川篤哉さんの作品が久しぶりに読みたくなり、まだ未読の「魔法少女」シリーズと「安楽ヨリ子」シリーズを購入し、早速「居酒屋「一服亭」の四季」を読んでみました。

 

久しぶりに読む安楽ヨリ子さんは面白いです!!

ここまでくると様式美と言っていいくらいのクオリティです(笑)

 

そしてこれまた前作同様、現実可能かどうか疑わしいトリック、明るく軽い文体に不釣り合いな猟奇的殺人事件、そして後で驚く叙述トリックなど、安楽ヨリ子シリーズの様式に則っています。

 

叙述トリックに関しては、「性別の錯誤」が2回ありました。

篤実(あつみ)が女性だったことには全然気が付きませんでした。

直前で「武者小路実篤」の話題が出ていたため、「あつみ」という読みも男性だとばかり思っていました。

これはやられました!!

 

ただし「三田園晃」はズルい気がします。

第四話で女性と判明した後で第三話を読み直してみても、キャンプで雑魚寝は嫌だとかトイレを気にする等の女性的な記述は数々あるのですが、言葉遣いは男性っぽさが勝っており、第四話と第三話では別人な気がします。

「晃(あきら)」という女性がいてもおかしくはありませんが・・弟の稜の方が3章にいたのではないかと思ってしまいます。

 

しかし今作はあまりに様式に則りすぎていて、正直ワンパターン化しているのは否めないと感じます。

君鳥の名刺をメンコのように叩きつけるのはもうお約束すぎて飽きてきます。

 

しかも前作「一服堂」の最大の驚きポイントである、それぞれの事件の間が10年空いていて、ラストではヨリ子さんや他メインの登場人物は50歳近く(?)になっていたという叙述トリックがあったので、この作品でも、どんな叙述トリックが待ち構えているのか期待して読んでいましたが・・結局何もなく終わってしまいました。

 

あれだけ前作で華麗に叙述トリックを決めてしまったので、それを超えることは難しいでしょうけど、ちょっと残念です。

 

あと、佳多山大地さんの巻末の解説でも書いていましたが、タイトルに四季が入っているにしては足りない季節があります。

 

第一話は向日葵の咲く夏、第二話はセミが鳴いている夏、第三話はテントを開けていれば寒く、外ではとても寝ることができない秋、第四話は雪が積もる冬・・春がありません(汗)。

 

いろいろ感想を書いてきましたが、前作がインパクトが大きかったがためにこの作品は個人的にはパワーダウンしたように思いますが、最初から最後まで楽しく読めたので、面白い作品であったのは間違いないです。

 

この先、安楽ヨリ子シリーズが続くのかは分かりませんが、もし出れば私は必ず買うでしょう。

 

(個人的評価)

面白さ  ☆☆☆

トリック ☆☆

驚き   ☆☆

様式美  ☆☆☆☆☆