※※ この本を読んで一言 ※※

この作品もメフィスト賞受賞作という事で読んでみました。

そして読んでみてびっくり!!

全く予期せず私の苦手な「イヤミス」に遭遇してしまいました(笑)。

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メフィスト賞受賞作は最近では真梨幸子さんの「孤虫症」を読んでいますが、また別の受賞作も読んでみたくなり、黒澤いづみさんの「人間に向いてない」を選びました。

 

いつも通り帯も表紙裏のあらすじも読まないようにして読み始めたため、私はホラーモノだと予想して読み始めました。

 

異形という存在が出てきて、今後この異形たちがどう物語に関わるのかなっていくのか、先がとても気になり、嫌な気分になりながらも一気に読むことができました。

 

優一が芋虫のような姿に変異したので、きっとそのうち脱皮して別の存在になるのかと思っていました。

そして羽の生えた天使に転生して社会を滅ぼすのかな~とも思っていたので、人間に戻るとはちょっと拍子抜けでした(汗)。

 

最後にはあれだけ優一を嫌っていた父親が異形に変異したせいで、バラバラだった家族3人がまた一緒に生活を始めるというのが、皮肉が効いています。

 

普通の親では、今まで散々苦労させられた引きこもりの子どもが見るからに気持ち悪い異形に変異したら、棄ててしまう選択をするのも分からないでもないです。

 

作中でも変異した兄のせいで妹の結婚が破談になり、兄を殺してしまうエピソードがありましたし、山崎も春町も子供を殺した過去があります。

それを思えば美晴が優一に対して、紆余曲折がありながらも全てを受け入れる無償で無限の愛を持つことにより、家族がまた一つになったのは成功例と言えるのではないでしょうか。

 

さて読み終わってこの作品はどんなジャンル何だろうと思った時、ホラーモノというわけではなく、グロテスクな人間の異形が出てきますが気持ち悪いわけでもなく・・では何かと問われた時、強いて言うなら「社会派イヤミス」だと私は答えるでしょう。

 

若者の引きこもり、それを怠け者や落ちこぼれとして扱う大人たち、親の過干渉と親と子供の相互の無理解、夫婦問題、異形の親という同じ立場でありながら派閥を作って争ったり、法律の在り方などなど、人間と社会の矛盾がこれでもかと書かれています。

 

異形という理解できない存在が現れた時に社会はどのように異形と向き合っていくのか考えさせられるとともに、どんな状況であっても人間は自分の価値観を曲げず他人に押し付けたり、争ったりするんだな~と痛切に感じます。

 

現実にはここまで極端な例ではないですが、新型コロナウイルスのように社会が対応したことない事態に陥った時には、市民は混乱し社会生活が一変しましたからね・・異形という存在が現れたら、混乱の度合いは新型コロナウイルスの比ではないでしょうから現れない事を祈るばかりです。

 

(個人的評価)

面白さ  ☆☆☆

社会派  ☆☆☆☆☆

イヤミス ☆☆☆☆

グロさ  ☆☆