※※ この本を読んで一言 ※※
気合を入れて読み始めたこの作品。
デビュー作で本から立ちのぼるような「イヤミス感」を醸しだせるとはさすが真梨さん!!
バンザイ!クズ人間ばかりの世界(笑)。
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メフィスト賞受賞作を制覇しようと読み続けている私ですが、今までこの作品はなかなか読むための気持ちの整理がつかず、本棚でずっと待機してもらっていました(汗)。
なにせ真梨幸子さんの「殺人鬼フジコの衝動」がミステリを読み始めた私には刺激が強すぎて、フジコのせいで「イヤミス」というジャンルが一気に苦手になりました(笑)。
そんな真梨さんのデビュー作でメフィスト賞受賞作であれば、私の想像のはるかナナメ上をいうく相当なイヤミスに違いないと思い、読むのを躊躇していましたが、秋晴れの続くいい天気につられ(?)ついに読み始めました。
もう1ページ目から不穏な雰囲気が漂い、そして2ページ目の表現は、こっちまでネットリ纏わりつくような不快な図書館の熱気が再現されそうなリアリティで迫ってきます。
そして麻美(実は梶原)といい、母親、夫、娘、学校の先生、生徒、不倫相手の奥さん(後で判明したが梶原母娘がターゲット)といい、これでもかというくらい登場人物が嫌な奴ばかりで読むのも気が滅入ります。
いい人だと思っていた山上さんたち「はーぶの庭」の人も、中盤でデリカシーのない噂話や中傷をする人たちだと判明し、最終的に殺人犯でした。
こうしてみると登場人物が身勝手だったり、嫉妬や悪意を心に抱いていたり、実際に盗聴、嫌がらせ、殺人までに発展したりと、まともな人はいません。
ただし、1章の語りの「麻美」の不倫話は「梶原」の小説であったようですし、2章の奈未の話になりますが麻美の話は全部奈未の口から、もしくは奈未の思い出の中で語られるし、3章でも麻美は吉田の保険金殺人を疑ったそうですが、それも「自分たちは悪くない。悪いのは周りの人間」という思考の山上たちの話からですので、もしかしたら麻美は唯一まともなのかも・・と思いますが、きっと性格は悪いのでしょう(汗)
それにしてもデビュー作なのに凝った作品だなと思います。
1章は梶原の書いた小説だったようですし、2章では奈未と隆雄による麻美の捜索により麻美や奈未の過去が少しずつ暴かれていきます。
3章では謎だった麻美の行方不明や男たちの謎の奇病による死の原因など、一気に謎解き(ネタバレ)が進み、なるほどと驚きました。
残念なのは3章のネタバレがあまりに説明的で、説明だけで終わってしまった感があり、もったいないとは思います。
しかし全体としては粗削りながらも、匂い立つような生々しい男女の業や人間ドラマが描かれており、それでいて魅力的な謎もあり、とても面白く読むことができました。
次に真梨さんの作品を読むのはいつになるか分かりませんが、きっとまた気合を入れなければ読めないような作品なのでしょうね(笑)。
(個人的評価)
面白さ ☆☆☆☆
ミステリ ☆☆☆
ドロドロ ☆☆☆☆
イヤミス ☆☆☆☆☆