※※ この本を読んで一言 ※※
こういう物語を読むたびに、今の自分の状況が如何に恵まれているかと実感します。
しかし恵まれていると感じている私は、実は国家に騙され・操られて「恵まれていると錯覚させられている」のでは・・と思ったりもします。
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この本は読書の先輩から借りました。
この本を借りたきっかけは、伊藤計劃さんの「ハーモニー」からです。「ハーモニー」も読書の先輩から勧められたもので、その内容が管理社会の物語ということでした。
そして管理社会つながりで、その究極である”ディストピア小説”があるということでジョージ・オーウェルさんの「一九八四年(新訳版)」をお借りしました。
この作品は1949年に発表されたものなので、ディストピア小説としては古さを感じます。
しかしこの作品の重要なのは、人類普遍の問題である「権力」と「自由」が将来的にどうなっていくのかを第二次世界大戦直後に書いたことだと思います。
特に作中でのゴールドスタインが書いた態の『寡頭制集産主義の理論と実践』で記述されている権力者の思想、行動は現在、そして将来に出現の可能性のある独裁政権に対してもほぼ当てはまる内容なのでしょう。
それだけ権力者の行う手口が分かっているにもかかわらず現在も独裁政権国家が存在していたり、日本でも政治家の不正に対して糾弾したり是正しようという大きな動きがないのは、国民が権力者に上手にコントロールされているからなのでしょう。
コントロールの方法は弾圧や粛清による恐怖なのか、適度な自由と経済活動で大きな不満が出ないようにしているからなど様々でしょうが・・そう考えるとまだ日本はマシなほうだと思います。
「1984年」での全体主義的な独裁政治は過去の独裁政権国家を参考にしたのでしょう。
今の私の立場からその独裁政権維持のための支配体制やその手法を見ると、気持ち悪いを通り越して滑稽です。
しかし当の国内では国民がそれを指摘できない環境に置かれているためそんな政治がまかりとおてしまって、思想・行動の統制・抑制、史実の歪曲・捏造等、馬鹿馬鹿しいと思うが現実にそういう国家が存在できてしまっていることが恐ろしいです。
作中では1950年代に核戦争が起きた時代設定で、今よりもさらに世界の再編が進み、3つの大国の三竦み状態ですが、幸いにも2022年現在はそうなっていません。
しかも1940年代には考えられなかったIT技術の進歩があり世界中の情報が素早く駆け巡ります。
しかしIT技術の向上は国家がより国民を管理・監視し支配がしやすくなったのかもしれません。
何より強く思うのは”絶対に戦争を起こしてはいけない”という事です。
作中でも『戦争は平和なり』のスローガンがありましたが、戦争が国民を支配するための口実にされていました。そして常に戦争状態にしておくことで行動、物資、情報等を制限し、敵国(仮想でも構わない)を設定し国民の関心を常に敵国に向けさせて、国民の守護者として国家が頑張っているという印象を与えてしまっています。
きっと太平洋戦争前の日本もそんな状況だったのでしょう。
そして二度とそんな悲劇を起こしてはいけないと思います。
「恒久平和=永遠の戦争状態」は支配者の理論であって、そんなのは一般の国民はたまったもんじゃないですからね。
冒頭にも書きましたが、こういう作品を読むとその物語の感想よりも現在の自分の状況と今後の状況を考えてしまいます。
現在の日本は最良とは言えないけれども、世界的には恵まれていると思っています。日々の生活で生命の危機を感じることももなく、余裕はなくても衣食住に困ることもなく生活ができています。好きな本を読んで自由に外出もできます。
コロナ禍でも国内では外出や行動の自粛で済んでいます。
日本は国として緩いといえばそうなのかもしれませんが、それが続けられるのはいいことだと思います。これからもこの緩さが続きつつも、国民目線で悪いと思うことは是正されるような国であって欲しいものです。
(個人的評価)
面白さ ☆☆
資料的価値 ☆☆☆
鬱度 ☆☆☆☆
将来への警鐘 ☆☆☆☆☆