※※ この本を読んで一言 ※※
見事にまとめあげられた美しい叙情詩。
しかしその美しさに感動するほど私の心は美しくなかった(笑)。
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私はこの本を買った事を全く忘れていました。しかもなぜ買ったのかも覚えていませんでした(汗)。
しかし本棚にあるので読んでみようと手に取り、そして読み終わってふと本の裏を見ると<第42回目メフィスト賞受賞作>とあるのを発見!
私は自分の大好物の”メフィスト賞受賞作”だからこの本を買ったのにそれを忘れていたのです(泣)。
なお私は読む前はタイトルだけ見てホラー小説だと思っていました(笑)。
さて内容の方は・・なんかラノベテイストの青春恋愛小説?という感じです。
そしてミステリー要素を入れようといろいろ謎を仕込んでいるのは分かりますが、そのオチが「えっ!?それだけ!!」という肩透かしを食らいます。
登場人物も物語的に都合のいい人たちだと思いました。
あまりに達観した主人公の二人、高校生男子のイルカ(マザ)と中学生女子のセミ(みらい)。
それぞれ人の死に接したりいじめを受けたりして暗い過去を背負っているが、それも二人が現在そうなってしまった原因を作るための安易な設定に思えます。
そして作中の世界はイルカにだけ優しい世界です(笑)。
イルカの周りの全てがイルカがみんなから、そして世界から愛されるための舞台装置に過ぎません。
イルカやセミの身近な人の命が舞台装置に組み込まれて失われ、それがイルカとセミの物語を盛り上げるのです。
イルカはよく分からないけど女性にモテる、よく分からないけど大人たちや寛一に認められ一目置かれる・・
私には”よく分からない部分”が佐々木爺さんの言う『・・愛の尊さを知っていたから・・』とか『君は幸せになっていいんだ。君にはその素質がある。・・』などのイルカの人間性から起因する事なのでしょうか。
まあそれが小説!と言ってしまえばそうなんですけどね(笑)。
そしてこのへんは同じメフィスト賞受賞作の古野まほろさんの「天帝のはしたなき果実」も同じですし。
さて今回はこれ以上書くこともないので、重箱の隅をつつくようなツッコミで文字数を稼ごうと思います。
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1
ミステリー小説なら登場人物の名前を隠すことにより錯誤トリックが発動してアッと驚くのでしょうが、この作品においてはイルカと由利の名前を隠す意味はどこにあったのでしょうか。
イルカは最初から”イルカ”と”マザ”で通しているため、ずっと名前が出ないので怪しいと思っていました。
そして後半姓が”小野寺”は判明していますが結局最後まで名前は明かされていないと思います(私が気付かず読み飛ばしたかもしれませんが)。
そして由利も由利としか出てこないため、もしかして由利は名前ではなくて姓か・・と思ったらやっぱりその通りでした。由利の名前は判明してるのでしょうか。
そもそもこの二人の名前を初めから明かしていても物語に影響はない気がします。
2
【序章】でイルカは鉄格子のなかにいる描写があるので、これは【終章】で大人になって留置場に入った時の記述なんでしょう。
この【序章】から13年前にさかのぼって1週間の物語が始まるのですが、この時点だとイルカはセミとは死別したバッドエンドを予感させます。
もっともこれが作者の白河三兎さんの作戦なのでしょう。
3
イルカはセミという心(人格)ではないと分かっていてみらいと結婚し、もうすぐ子供まで生まれそうだというのに何を”イルカとセミの関係”や過去の罪(弟が死ぬのを防げなかったことや由利の父親とは気が付かなかったことなど)に思い悩むのでしょうか。
イルカはセミという心(人格)を愛していたのでしょうが、みらいは生きていて結婚までしているので、新しく小野寺○○(イルカの本名)とみらいとの関係を築けばいいのにと思うのです。
過去についてもイルカはなぜ『幸せになってはいけないけない気がするのだった』と思うのかそのあたりの描写が希薄なため、イルカはただウジウジ悩むだけという印象です。
挙句の果てにみらいを苛めた”幸麻美”を殺そうとしたと言い出すし、【序章】の留置場で思い悩むし、イルカの考えが分からなさすぎます。
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この作品は白河三兎さんのデビュー作とのことで荒削りな部分はあるのでしょうね。
感想もこれで最後ですが、メフィスト賞受賞作をこれで17作品を読みました。
それぞれテイストが全く違う物語が受賞しているのを思うと、本当に懐の深い賞、言い替えれば何でもアリの賞だと実感させられます(笑)。
(個人的評価)
面白さ ☆☆
登場人物 ☆
驚き ☆☆
人の命の扱い (めっちゃ軽い)