※※ 注意 ※※
この舞城王太郎さんの「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」の感想には「好き好き大好き超愛してる。」のネタバレが盛大に含まれています。
そんなに多くはいないとは思いますが・・もし「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」は既読で「好き好き大好き超愛してる。」が未読の方がいたらご注意ください。
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舞城王太郎さんの「好き好き大好き超愛してる。」(以下「好き好き」)の感想を書いたあとに、どうしても「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」(以下「ドリルホール」)が読みたくなったので、図書館に行ったら「ドリルホール」を収録している「好き好き」があったので借りて読みました。
「好き好き」と同時収録なのは、「ドリルホール」のテーマが「好き好き」と同じく男目線の恋愛物語なのだから一冊にまとめたのでしょうか。
それとも「ドリルホール」だけでは一冊にするには分量が足らなかったので抱き合わせ販売をしたのでしょうか(笑)。
同時収録しているだけあって確かに「好き好き」の治が「智依子」や「ニオモ」と同じように「ドリルホール」を書いたという設定であれば違和感はないと思います。
男性が愛する女性を失いその後も自分に折り合いをつけて生き続けることや、世界を救うという設定は「ニオモ」にも共通してます。
ただ「好き好き」とはテイストがかなり違っていて、粗暴な語り口や下り坂を転がり落ちるような疾走感はむしろ「 煙か土か食い物 」に近いものを感じます。
そして「ドリルホール」では「好き好き」より"男の身勝手さ”が前面に出ています。
この物語はドライバーが頭に突き刺さった”俺”である加藤の脳内物語であるので、脳の中の”僕”である村木が男の身勝手さを体現しています。
この物語はいわゆる「セカイ系」的といえるのでしょうか。
もしこの物語が「セカイ系」に分類されるなら、私の「セカイ系」の男の主人公のイメージはうじうじして無責任でというイメージがあるので、村木は半分以上は当てはまりそうです。
ただ舞城さんがは敢えて村木を身勝手な感じで書き、しかも村木に自覚させています。
『愛があれば相手を傷つけてもいいのか?
だってしょうがないじゃないか。欲しいものは欲しいんだ。
そんな僕にどう対処するかはあかなの考えることだ。僕は僕の身勝手を認めているし、あかなもそれに気付いているだろうし、気付いていないようなら今度はっきり言ってもいい。・・』
この物語の展開は初めから終わりまで怒涛のように駆け抜け、そして登場人物たちは誰も救われません。
物語的にはバッドエンドというより、何も解決していないまま終わったと言えます。
もしかしてこれから加藤の目が覚めてドライバーを引き抜いて生きることができるかもしれないし、脳内世界では村木が頭の穴に調布タワーをブチ込んで絶頂に達して、調布市内限定の万能救世主から全世界に影響する神レベルになるかもしれません。
しかし書かれることはないでしょう(笑)。
正直舞城さんはこの物語で何が伝えたかったのか分かりません。
それとも伝えたいことは特になくて勢いで書いたのでしょうか。
まあ読者としては、面白い作品だったので書かれたいきさつや作者の思いは気にしないですけどね。
なおこれだけは分かるのは、加藤の母親が「クソ」で宮舘が「カス以下」ということです(汗)。この二人がいなければ加藤がこんな目に遭うこともなかったでしょうに。
さて最後にどうでもいい感想を書きます。
加藤が作中で、加藤の脳内に村木という人物を作り出して、その加藤の脳が作り出した世界で村木たちが活動し、さらに村木の脳の中でも同じように世界が存在して・・という繰り返しの構図を考察しています。
これを読んでなぜか私は楳図かずおさんの「14歳」を思い出しました。
実際に私たちが存在する世界の成り立ちはどうなっているのでしょうか?
「シミュレーション仮説」なんてものもありますし・・考えだしたらキリがないですね(笑)。
(個人的評価)
面白さ ☆☆☆☆
難解さ ☆☆☆
荒唐無稽 ☆☆☆
疾走感 ☆☆☆☆☆