舞城王太郎さんの作品を読むのは「煙か土か食い物」に続き2作品目になります。

そもそも舞城さんの作品を読むきっかけは、この「好き好き大好き超愛してる。」を本屋で見かけて即行で「煙か土か食い物」と2冊同時に買ったからです。

それくらいインパクトのあるタイトルと表紙でした。

 

そして「煙か土か食い物」では舞城さんに対してどう感じたらいいのか正直戸惑っていたので、このただならぬ雰囲気の作品を読むことにより、舞城さんという作家をもう少し知ることができるのではと思って読み始めました。

 

読み始めて最初は愛と小説について語り、「智依子」「柿緒Ⅰ」「佐々木妙子」までは荒唐無稽な恋愛物語だな~と思っていました。

しかし「柿緒Ⅱ」から一気に切なさが込み上げてきて、「ニオモ」と「柿緒Ⅲ」はとても悲しいラブストーリーに心が締め付けられる思いでした。

 

しかし・・残された男の切なさと同時に、愛する者の死と、愛する者を失った後の自分をどこか冷めた思いで眺めている男の描写がとても印象的です。

 

特に「柿緒Ⅱ」で

『「柿緒、誓うね。僕はもう一生、柿緒以外の女の子のことを誰のことも好きにならないから。絶対に」。たとえ心底言いたいことを本気で言っていたにしても、その言葉は堪え難く薄っぺらで、僕も、きっと柿緒もうんざりする。僕も柿緒もその誓いが破られるのを知っている。』

は誰しも心の中ではそうだなと納得せざるを得ないのではないでしょうか。

 

また「柿緒Ⅲ」では治は柿緒の病室で小説を書いていたことを『何もしてないと暇だったからだ。』と言っています。

 

治の柿緒への愛は本当だったとしても、愛する者が苦しんでいても代わってあげることはできないし、そして愛する者を失った後も日常を生きなければいけない中で、時間的な「暇」や身体的な「お腹空いた」や「眠い」はどうしようもないことです。

誰も治を責めることはできないと思います。

 

しかし弟の賞太は看病をしてる時に小説を書いていた治を責めています。

賞太から見たら柿緒を小説のネタにしていたというのは傍から見たらその通りなのでしょう。

現に治もそれを認めています。

 

もっとも柿緒は最後まで治の事を愛していたので本人たちが納得していればいいのでしょう。

 

この作品で舞城さんの心情描写のうまさと言葉の説得力の強さがよく分かりました。

この恋愛小説を通して人を愛する事、そして愛する人を失うことを疑似体験させてくれた感じがします。

 

しかし気になる事がひとつあります。

それは舞城さんが男性だからか、この物語は男目線で書いています。

女性が死に男性が生き残る・・私は物語の描写はとても納得でき共感できますが、女性読者が読んだらどう思うのでしょうか。

また同じ題材で女性作家が描いたらまた違った心情描写になるのではないでしょうか・・とても気になります。

 

最後に他の方の感想を読んでいると「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」というのがこの本に収録されていると知りました。しかし私が買ったの2008年に初版が講談社から出版された本で、それには収録されていませんでした。

 

機会があれば「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」を読んでみたいです。

 

(個人的評価)

面白さ    ☆☆☆☆

心情描写   ☆☆☆☆☆

切なさ    ☆☆☆☆☆

物語の深み  ☆☆☆☆☆