恩田陸さんの作品は「MAZE」と「Q&A」に続き3作品目になります。
「MAZE」と「Q&A」はいつも読んでいる事件モノのミステリー小説とは一味も二味も違う展開に恩田陸さんの作家としての偉大さを感じていました。
そしてこの「ねじの回転」は読書の先輩からのオススメということで読んでみました。
今作は「二・二六事件」を題材としたタイムパラドックスもの・・と言っていいのでしょうか?
なお読み始めて、序盤はこれほど先が読めない物語は初めてだと思いました。
しかしその先が早く知りたくて、どんどん読み進めました。
正直タイムパラドックスものは私自身も頭の中がこんがらがるうえに、日本の歴史もよく知らない私は読んでいる途中、細かなことは考えられませんでした。
読み終わり、「MAZE」と「Q&A」とも違う恩田ワールドを十分堪能させていただきました。
疑問に思う事がたくさんあるのですが考えがまとまらないので、この作品についての感想は全体を通して漠然と思ったことを書いていこうと思います。
その漠然とした感想の一つが
「未来に生きる者たちの勝手な都合を過去に生きた者たちに押しつけるな!!傲慢にもほどがある!!」
です。
これはこの作品を読んでいる時、常に思っていることでした。
なおインターネットで他の方の感想を読んでも私と同じ感想を持っている方が多くて少し安心しました。
物語中でも、マツモトや栗原が読者の思いを代弁しているかのような描写が出てきます。
未来の者から見れば、歴史とは事象(事実かどうかは問わない)の積み重ねであり、作中でも語られているとおり出来事は数あるワンシーンであり、その中に登場する個人はただの記号と感じるからこそ、現在を生きている者たちの失敗を過去に戻って改変をしようなどと考えるのでしょう。
とにかく国連、特にアメリカの息のかかったジョンは大国の意思の表れであり、その身勝手さと傲慢さには腹が立つのは当然だと思います。
また印象深いのは物語中でアルベルトの語った、『人間が得た最大のギフトは知能じゃない、好奇心だ。』という”好奇心と人間”についての言葉です。
作中では好奇心を持った人間はモラルもタブーも超えるという描写がありましたが、それはすなわち恩田さん自身の時間や歴史に対する思いや、技術がどんどん進歩している人間世界の反省と自戒が込められていて、作中ではそれがマツモトや栗原の言葉として表現しているのではないかと思います。
実際に人間が時間をさかのぼることはできないと思いますが、もし仮に時間を遡ることが可能で過去が改変されたとしても、私たちはそれを感じることすらできないんでしょうね。
さて最後に・・もし私が安藤たちの立場なら、1度死んでるのでもう未来がどうなろうと知ったことではないので協力したくないと思うでしょう。
また再び死にたくないので、あれこれ逃げ道を考えて暴走するのではないかと思います(笑)。
(個人的評価)
面白さ ☆☆☆☆
緊迫感 ☆☆☆☆☆
難解さ ☆☆☆☆☆
業の深さ ☆☆☆☆☆