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皆川博子さんの本は初めて読みます。
いつも通りインターネットで面白そうなミステリー小説を検索して見つけて購入しました。
インターネットで紹介されていたとおり、表紙からして耽美で妖しげです。
なお表紙の美少年は私はエドだと思っています。
それで前半くらいまでは、エドは自分が死んだら遺体を検体として提供を希望し、やかて本当に死んで望みどおり解剖される・・と予想しました。
結果は全く違ってました(笑)。
しかしあまりにもかわいそうなネイサンが生きていたのは素直にうれしかったですし、エドとナイジェルが二人で旅立って行くのは、さびしくも美しい終わり方だったと思います。
”Zanies(道化役者)これにて退場” という終わり方は、ダニエルを慕い、ダニエルやネイサンを救うために嘘をつき続けたエドとナイジェルを髣髴させます。
しかし私がこの物語で1番気に入ったのは、本編が終わった後の番外編とも言える「チャーリーの受難」です。
クラレンスを話の中心に置き、バートンズが活躍?している姿は、バートンズのみんな生き生きしていて少年らしいはつらつさが感じられ微笑ましいです。
何せ本編での主人公のエドは頭脳明晰というよりは小賢しく描かれていますし、ナイジェルは一見臆病だが二面性を持った危険な香りのする少年で、少年らしさとは無縁の二人なので(笑)。
バートンズの少年たちだけでなく、ネイサンやバートンやジョン判事などの他のキャラクターもそれぞれにキャラが立っていて、時代背景が近代ヨーロッパで庶民が虐げられるシーンも多く暗くなってもおかしくないのに、物語に活気があり明るさを感じます。
また時代が時代なだけに科学的検証ができないシチュエーションにもかかわらず、論理的に証拠を積み上げ殺人事件を解明しようとするジョン判事は思わず応援したくなります。
それにしても中世や近代の物語を読むと、この時代の日本に生まれてよかったなと思います。
今の日本がすべてにおいて良いとは決して思いません。しかしこの物語のように、王侯貴族や富裕層が幅を利かせ庶民が虐げられ、ネイサンのように少年といえど無実なのに投獄されこの世の地獄といえる環境に置かれるなんて、考えただけでゾッとします。
1700年代のロンドンの街の様子やその臭いまで再現できそうなリアルな描写と、当時の人が本当に使っていそうな英語による言葉遊びの表現、そして生き生きとした登場人物の描写も皆川さんだからできることなんですね。
機会があれば皆川さんの他の作品も読んでみたいです。
(個人的評価)
面白さ ☆☆☆
驚き ☆☆☆☆
登場人物 ☆☆☆☆
妖しさ ☆☆☆
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少年たちとそれを取り巻く大人たちを主題にした耽美な感じの物語は、服部まゆみさんの「この闇と光」に共通する物があります。
ともに女性作家の作品で表紙が意味ありげにおどろおどろしいところとか、少年が主人公で、物語のメインもほぼ男性で、女装した男性が出てくる、男性同士の妖しげな関係などなど・・
女性作家特有の・・と言ってしまえばそうなのかも知れませんが、やはり麗しい少年たちの物語は男性作家には難しそうですからね。
たまにはこういう耽美な物語を読むのもいいものです。