麻耶雄嵩さんの作品と言うだけで何も調べずに買いました。
もともとは「まほろ市」を舞台にした4人の作家による競作だった事を買ってから知りました。

 

薄い本なのですぐに読み終わりますが、内容はしっかり麻耶さんらしく微妙に歪んだ世界観はしっかり麻耶ワールドでした。

 

 

短い内容のわりに、推理小説としての驚きや麻耶さんらしいひねくれた終わり方だったりとかなり充実してます。

 

この短さで本を1冊出すということは、内容に自信があると言うことでしょう。

 

その内容ですが、どんでん返しと言えるほどではないかも知れませんが、名探偵的と思っていた耿子が真幌キラーだったときはびっくりしましたし、天城がやがて自分が犠牲者になることを分かっていながら耿子を愛していると言う事がなんともひねくれていると思います。

 

 

そして相変わらずネーミングセンスが理解不能です。天城憂と耿子はストーリー上、その名前が必要なのは分かりますが、闇雲A子や怪盗ビーチャムはよく思いついたなと思いますし、曾我鬱はただの悪ふざけでつけたとか思えないし、見処はニックネームだとばかり思ってました。

 

 

それにしても耿子は謎な女性ですね。

 

結局何のために連続殺人をするのかなど、最後まで全く解明されませんし。
このあたりも麻耶さんらしくひねくれてます(笑)。

 

ちなみにもし天城が犠牲になるときに、天城の左側に置かれる死体は誰になるんでしょうか。

 

まさか耿子が自ら命を絶って横に並ぶのだったらロマンティックと言えなくもないですが・・続きがないのが残念です。

 

なお耿子が物静かなのにインパクトがある分、闇雲A子は騒がしいだけで全然印象に残らないのが不思議です。

 

怪盗ビーチャムも名探偵的な役割なのに印象に残らないのも不思議です(笑)。

 

上述しましたが、ページが少ないわりにとても面白い作品で、短い時間で推理小説が存分に楽しめるコストパフォーマンスが極めて高い作品だと思います。

 

 

しかし麻耶さんの長編のようなはるかナナメ上へ行くぶっ飛び方が足りないし、世界の微妙な歪み方は麻耶ワールドっぽいと言えばそうなんですが、どちらかと言えば道尾秀介さんの「向日葵の咲かない夏 」や「背の目」に近いと思え、まだこれでは麻耶ワールド全開とは言えない気がします。

 

 

やはり麻耶信者の私としては、麻耶さんが作品を生み出すのに苦しいでしょうが、しかしより強い刺激を求めてしまいます。

 

 

それだけ今まで読んだ麻耶ワールドが脳に直撃してきたと言うことでしょう。

 

これから読む麻耶作品に過去読んだ麻耶作品のようなインパクトを受けるような作品に出会えるのか不安です(笑)。

 

(個人的評価)

 

面白さ     ☆☆☆☆
麻耶ワールド ☆☆☆
麻耶理論    ☆☆
次回作希望  ☆☆☆☆☆