比較的新しいミステリー小説を読んでみたくて買いました。
 
読んだ感想は、これまたすさまじい労力をかけていろいろな謎解きに挑戦、いえ、今まであるミステリー小説に対して挑戦した意欲作だな~と言うことです。
 
そして登場人物の口を借りて作者の深水黎一郎さんがミステリー小説でやりたいことや言いたいことを物語にしたという感じです。
 
これまたと言ったのは、この本の前に読んだ「三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人 」も違う意味ですさまじい労力をかけた作品だったので、二作続けて力の入った面白い作品が読めました。
 
この物語も小説だからできる叙述トリックで、実写化不可能な作品です。
そして文章全てが伏線か!というくらい伏線が張り巡らされていてすごかったです。
 
しかもその伏線のほとんどはミスリードであり(と言うより結果的にミスリードと言う結果にさせられる)、「ちょっと怪しい」という記述は後からことごとく否定されます。
 
またミステリー小説にありがちなことを疑問に思うと、それがその後で否定されます。
 
例えば私が思った疑問に、「たま」って猫か人か?とかヒデの他に“英”が出てきたけど別人?鞠子って苗字かもしれない、などです。
 
しかしそれらも意図的に不正解にさせられていることが判明したときは、「そうだったのか~!!」と驚きました。
 
また台風や大雨でクローズドサークルになったとして、殺人事件が起きて警察に通報したら、今なら台風や大雨の小康状態の時にヘリコプターとかで来てくれないのか?
と私は常々疑問に思っていました。
 
しかしその解答まで「台風ではなく偏西風の蛇行で大雨が数日間続く」と用意されていました。
あと通報しても警察が来ない理由も語られています。
 
なんかいろいろ深水さんの手のひらの上で遊ばれてる気分でした。
 
物語の全体としてコメディタッチで進んで行くので、サクサク読めてところどころ笑えるところもありました。
 
「関文太」を示すダイイングメッセージで“S(エス)”ではなく、積分の“∫”(インテグラル)を書くという指摘に思わず「んなバカな」と口に出してツッコんでしまいました。
 
あと「たま」が人間だった場合、バレリーナでどこでも練習のために踊っているらしいので、その場面を想像するととても笑えます。
 
また平三郎(へいざぶろう)の登場はかなり苦しく、通常のミステリー小説であれば興ざめですが、このシチュエーション(15番目の解決)で出てくると、無理矢理感はありますがもう笑うしかないです。
 
「多重解決」と言うことで15通りの解決を用意しており、それぞれがどれもありそうだと思えるところに、深水さんのすごさを感じました。
 
そしてミステリー小説において、だいたいのパターンは出尽くしたため、読者を満足させるミステリー小説を書くのは本当に大変なんだなと、登場人物を通して感じました。
 
最後にどうでもいいことですが、日本人の苗字は本当にたくさんあるんですね。
勉強になりました(笑)
 
(個人的評価)
面白さ   ☆☆☆☆
トリック    ☆☆☆☆☆
登場人物 ☆☆☆☆
アイデア  ☆☆☆☆☆