二十面相のもう一つの特徴は宝石や美術品を愛し、決して殺人をしないことです。まあこの辺りは子供向け小説ということがあるでしょう。
また世間をあっと言わせることが大好きなので、かなり派手な犯罪と言うか無駄に目立つことをします。
時間も予告した上で宝石を盗みだしたりするのは当たり前で、巨大カニや巨大カブトムシの着ぐるみを着て本当の生物のようにリアルに見せる努力をします。この努力は気の毒になるほどです。笑
明智小五郎と少年探偵団には強い復讐心がありますが、特に小林少年に拘っている節があって、色々な仕掛けをしてきます。一度小林少年を閉じ込めて、火事になったので、「小林を助けないと」と仏心を出しましたが、実はこれは脱出を図った小林少年の仕業であったためか、違った話では小林少年を金属製のブイに閉じ込め、偶然見た人が助けてなければ窒息死ということもありました。殺すのは嫌いだが、「勝手に死ぬのは気にしない。」というようなことを言ってます。
大人のくせに少年探偵団の前にわざわざ出てくるのは、探偵団に遊んで欲しいからだという意見もありますが、これは少年探偵団のシリーズだから仕方がないですね。
江戸川乱歩が大人向け探偵小説に行き詰まりを感じ、「どうせ今まで私が書いたものも、子供向けみたいなものだ」と自虐的に語ったか書いたかしたようです。
戦後少年探偵団と二十面相が大衆に受けドラマや映画になり、作家として生活するためには次々と二十面相と少年探偵団を対決させないといけないですから。
しかし当時は小学生くらいで江戸川乱歩の大人向け小説は読んだことがないけど、少年探偵団の小説を読んだことが作家になるきっかけになった人もいるようです。江戸川乱歩生誕120年を記念して「みんなの少年探偵団」シリーズが生まれましたが、その作家は有栖川有栖や小路幸也などの現代の作家で、元祖少年探偵団を愛した人たちでしょう。
他にも例えば青崎有吾はそのシリーズには参加していませんが、彼の著作内で探偵役の裏染天馬が「ブラックマジック」と言って戯れるシーンがあります。ブラックマジックとは二十面相が得意とする奇術で小林少年はそのトリックを何度も見破っています。
昔は学校の図書室にはポプラ社の少年探偵団の全集がどこでも置いてあって、僕も記憶に残っています。読んだことがなかったのは僕が好きだったのは「ドリトル先生航海記」のような小説で、推理小説が好きになったのは大学時代くらいからでした。
また昭和30年代には映画やドラマもたくさん制作されたようです。ドラマはちょっとテレビで見た記憶があります。