小池知事 尖閣諸島購入の寄付金 14 億円の使途検討について | 鈴木あきひろ 一言日記

小池知事 尖閣諸島購入の寄付金 14 億円の使途検討について

【小池知事 尖閣諸島購入の寄付金 14 億円の使途検討について】
 8 月 21 日小池知事が(都内のホテルでの講演中に)、尖閣諸島購入の寄付金14 億円の使途の検討を進める考えを示しました。この発言に関しては、基金を管理する総務局内での擦り合わせがなされておらず、局の担当者達も寝耳に水の話で、またいつも知事の思い付き発言に困惑しております。
 この基金の使途について知事は、「多くの方々が熱い思いで寄付をした 14 億円が宙に浮いている状況で、塩漬けになっている」更に「この眠っている 14 億円を、人工衛星による監視システムを作ることなどに使うことが、心を寄せた方々に応えることになる。政府と相談しなければならないが、せっかくの思いに答えるという方向性が必要だ」として、政府と相談をして、具体的な使い道を検討する」と述べられておりました。
 しかしながら、政府との相談については、毎年春と秋に、内閣府と内閣官房へ活用の検討をお願いしております。現在国は、中国をあまり刺激しない方向で考えており、なにも検討していないわけではありません。具体的に、都として、下記のような内容を要望を出して参りました。

 ●尖閣諸島の戦略的活用の実施について
 ①国の所有となった尖閣諸島について、ヤギの被害から貴重な動植物を守ることや、海岸漂着物の処理などにより自然環境を保全し、また地元漁業者のための船溜まりや無線中継基地、更には有人の気象観測施設といった地元自治体が強く要望する施設を設置するなど、有効活用を早急に図ること。
 ②尖閣諸島周辺海域における経済活動の継続の観点から、日台漁業協定で定められた法令適用除外水域等においても地元漁業者が確実に操業できるよう、地元自治体等の意見・要望を踏まえて支援策を講じるなど、地元漁業の振興に向けた取組を推進すること。
 ③尖閣諸島の史実や自然環境保全の重要性等について、国内外へ効果的に情報を発信し、国際社会への一層の理解促進を図ること。
 ①については、地元自治体の強い要望として、尖閣諸島の実効支配に繋がる島の活用を考えており、②に対しては、蔡英文台湾総統に代わり、両国間の話し合いがなされ、今日においては協定が守られてきております。③については、安倍政権になり、尖閣諸島も日米安全保障条約上の対象であると明確にされ、更には東シナ海、南シナ海における安全保障に、米国が積極的に関与する方針が打ち出され、日本の領土としての尖閣諸島が内外に理解されるようになってきております。こうした状況を踏まえ政府は、尖閣諸島の戦略的活用について現在、中国をいたずらに刺激するべきものでないという見解であり、都と具体的な基金の活用について話す時期ではないとされてきました。
 振り返って、石原元都知事が尖閣諸島を購入しようとした経緯は、次のようなことでした。
 当時、豊富な水産資源や多様なエネルギー・鉱物資源を有する海洋の保全管理の必要性が指摘される中、伊豆諸島や小笠原諸島を所管する都では、沖ノ鳥島の国境離島の利活用を図るなどにより、我が国のおよそ 4 割を占める排他的経済水域や、大陸棚の保全に資する取組を進めておりました。尖閣諸島もまた、排他的経済水域等の権益確保を図るうえで極めて重要な国境離島であり、更には東シナ海における中国の傍若無人な振る舞いから、尖閣諸島周辺海域を含め、一刻も早く、しっかりとした対応をすべきであるという見解から、政治家として動かれておりました。
 そうした中で、三島(魚釣島・北小島・南小島)の地権者である栗原氏が石原知事になら売りたいとの申し出があり、都として購入計画を立て、領土保全に対してご理解のある方々からの寄附を募りました。結果 10 万件以上のお申し出があり、14 億8千万円に上る寄附を頂きました。最終的には国が突然購入することとなり、寄付金が使われることがなかったわけですが、寄せられた都民等の意見を尊重し、尖閣諸島の戦略的活用にのみ使われることができるよう条例化をして今日に至っております。
 安全保障は国の専権事項であり、北朝鮮問題も含め、日中関係は極めて重要な局面にあります。また、地元漁業者や地元自治体の要望を踏まえると、この基金が 5 年間何も活用されていないことは不作為であり、「塩漬け」にされているという小池知事の発言は、知事としてだけでなく、防衛大臣までされた政治家としても資質が疑われるものであり、「塩漬け」という言葉を巧みに使った新たなパフォーマンスと言わざるを得ません。
 更には、人工衛星による監視システムの構築に当てるようなこともあり得るとの発言でありますが、人工衛星による監視システムの構築は、尖閣諸島の保全・管理にのみ活用するとした基金条例の趣旨に反するものであります。こうした考えが起きないよう、条例化の際に、「国による尖閣諸島の活用に関する取組のための資金」とされたのです。常に思い付きで物議を醸しだす知事でありますが、1,300 万人の都民の代表として、責任ある発言を心がけて頂きたいものです。