妊婦の搬送拒否解消へ | 鈴木あきひろ 一言日記

妊婦の搬送拒否解消へ

 2008年10月、脳内出血を起こした東京都内の妊婦(当時36歳)が、8病院に搬送を拒否され、一度受け入れを断った都立墨東病院(江東区)で手術後に死亡する衝撃的な事件が起きました。

 この事件を受け東京都では、2010年度から都立墨東病院に2人のコーディネーターを配置し、地域の在宅療養支援診療所や保健師と連携し、低体重や障害を持って生まれた新生児集中治療室(NICU)に入った赤ちゃんが、できるだけ早く安心して退院できる体制を準備しました。その結果、入院期間が短縮し、NICU不足による妊婦の搬送拒否解消につながっています。

 厚生労働省の調査によると、2009年度にNICU病床の利用率が9割を超えた病院は、およそ7割。NICUが満床になると、妊婦らの救急搬送を受け入れることが難しくなります。

 墨東病院では2009年度、35.4日だった新生児科の入院期間が、昨年度は29.2日まで低下。その結果母体搬送受入れ件数は、2009年度に比べ47件増えました。都立大塚病院(文京区)でも昨年度、コーディネーターを1人配置しましたが、今後も他の病院でも導入をしていきます。

 また、都の取り組みだけでなく、地域の側からも受け皿を広げる動きも出てきています。東京都北区のあすか山訪問看護ステーションでは今年3月、NICUで働いた経験を持つ看護師が、ステーションなどを対象に乳幼児の受け入れ方などを教える支援活動を始めました。

 またインターネット上で小児科を紹介する「赤ちゃん成育ネットワーク」は、NICUの勤務経験が3年以上ある全国の関係医ら約170人で、2002年に発足。往診やカウンセリングの有無など、NICUの医師が地域の医師を調べやすくする情報を提供しているようです。
 厚労省は支援体制不備を解消するため、2010年の診療報酬改定で、乳幼児に対する訪問診療や訪問看護への加算を新設しましたが、それ以上にNICU側との連携を深め、異変が起きた時に必ず対応する体制が不可欠であります。

 また保険診療制度では、重症心身障碍者でなければショートステイなどの施設が利用できません。母親の過度の負担を軽減するためにも、介護保険の障害児版のような制度も必要とされております。

 東京都においては、このような地域の取り組みをしっかりとサポートし、在宅療養支援診療所や訪問看護ステーションを充実させていくことにより、在宅医療を支える受け皿の充実を図って参ります。