明日が最終のカナダ戦となりました。

今回私は残念ながらNZに行くことができませんでした。
また研修の仕事が重なり、ライブで見られたのはフランス戦だけでした。
ワールドカップに対してのコメントは、難しくもあり、またエネルギーもいるので少し発言を控えていましたが、最終戦を前にしてそういう訳にもいかないと思い書いています。

フランス戦は、4点差になった時は燃えました。つなぎきってのトライが素晴らしかった。ラグビーの面白さを久々に感じました。あのまま接戦に持ち込んでプレッシャーをかけ続け、相手に思い切ったプレーをさせないぎりぎりの勝負をしてほしかった・・。
この試合、よく頑張りはしたが、私個人としては突き放される原因になった1本目のトライ、最後の小野沢のタックルが気に入らない。相手はフォワードでミスマッチだったかもしれない。しかしながら1対1なら走りこむタックルでゴールラインを割らせない勝負をすべきだったろう。勝負せずに当りを受けてしまって簡単にゴールを割られる、ダミーのような受けのタックルは頂けない。厳しいけれど、私には残りの試合を決定付けたプレーのように思えた。また頑張ったとは思うが、20点以内の試合をしてほしかった。

オールブラックス戦は見ていない。怪我を恐れ主力を温存し勝負を避けたのだろう。前回ワールドカップのオーストラリア戦でも同じような戦い方をした様に感じた。ただオールブラックスと3回戦った人間としては、結果はそれほどひどいとは思わなかった。やはり50点差以内の試合をしてほしかったが・・。

トンガ戦は東京で研修をしていたため、結果を聞かずに知り合いのバーで録画で観戦をした。台風の真っ只中、電車が止まり研修後予定していた面談も1つキャンセルになったが、それでも動く地下鉄を探し何とか西麻布のバーまで行った。結果を言うなといいながら観戦したが、周りの雰囲気でなんとなく負けたのではと予感した。

トンガとは第2回ワールドカップ予選で戦った。サモア、トンガ、韓国、日本の内、2カ国がワールドカップに出場できる。サモアに勝つのは難しい、韓国は負けていたら話にならない、トンガに勝つかどうかにワールドカップへの出場がかかっていた。私はオックスフォードに留学中であったが、試合のために帰国した。ふくろはぎを肉離れし完璧なコンディションではなかったが、トンガ戦だけは出場した。宿沢監督、白井専務理事に万全でないのでやめたらと言われたが、この試合だけは頑として出場をした。
宿沢さんの本にそのことが書かれているが、次の韓国戦では私があっさりとメンバーから外れた事について、一度真意を聞いてみたいと書かれていたが、その答えはトンガ戦が勝負だったからに他ならない。

トンガ戦、残念ながら今回の代表はスクラムが弱い。押されるのはまだ仕方ないが、ボールはちゃんと供給しないといけない。マイボールを確実に出せないのがまず敗因その1。ラインアウトは悪くない、リフティングのルール改正は日本には有利に働いていると思う。
この試合では持ち込んだボールをよくターンオーバーされた。つなぎ切れないとトライは取れない。ここぞと言う時にミスをしてチャンスをなくした。逆にトンガには「あれ~あれ~」という間に簡単に得点を許した。ゴールが外れたのも大きい。ぎりぎりの試合では、「ふっ」としたひとつのミスが命取りになる。そんなミスを何回も犯し、勝負にならない試合にしてしまった。
残念ながら注目を集められない今の日本のラグビーが、久々に注目を集めた試合、ここ一番の勝負どころで、『勝負にならない試合』をしてしまった責任は重い。日本のラグビー関係者がどれほど期待していたか、この試合に日本のラグビーの未来が懸かっていることを、メンバーはどれだけ重く捉えていたんだろうか?その責任を、使命を、果たしてどれだけ感じていたんだろうか?「桜」のマークが泣いている。試合後の菊谷キャプテンのインタビューの爽やかさにも違和感を覚えた。

予断だが、以前カーワンの知り合いと称する人から、カーワンが「桜は強さを感じないのでマークを変えたほうがいいのではないか」と言っていたと聞いた。
私は桜のマークを握り締め、ある意味、命を懸けて戦ってきた。まだラグビーがアマチュアの時代、ラグビーは仕事ではない、生活の糧でもない、しかし夢であり、桜のマークは命をかけるに相応しい値打ちがあった。私はそう感じ体を張ってきた。

第1回ワールドカップでキャプテンを務めた。1試合目でアメリカに18対21で負けた。今思えばこの試合が勝負だったが、勝負し切れなかった。2試合目ではイングランドに7対60で大敗した。3戦目のオールトラリア戦を残し、このままでは日本に帰れないと思った。ただ「帰れない!」と。毎日練習が終わるたびに、涙ぐみながらメンバーにそのことを話した。
試合当日皆に言った「相手は世界最強のオーストラリアだ!俺たちの力を出しつくそう!」ノーサイドの瞬間、グラウンドに倒れるところまで追い込んでやっと試合になる。そこまでやれるかどうかが勝負。試合は23対42だった。精一杯やった、日本に帰ることができる、そう思った。

残るカナダとの1戦を前にして、日本代表は勝つしかない。遠征メンバーたちに言いたい、勝て!と、負けたら帰ってくるな!と。
第1回ワールドカップを戦ったのは選手24人スタッフ4人と団長、計29人、IRBからもらった休業補償はすべて協会にプールしてきた。今回は選手30人スタッフ16人と団長、計47人。それだけのメンバーを抱え、お金もかけて、周到な準備をしてきたはずだ。
メンバーは今の環境のありがたさを感じなければいけない。込められた日本ラグビーへの思いに対する責任の重さを感じなければいけない。そして何よりも桜のマークの重さを感じなければいけない。

最後の勝負をするんだ!もう技術や戦術なんてレベルの話じゃない。
負けたら帰ってくるな。桜のマークを掲げた者の、責任、使命を果たせ。
私が期待するのは、そして言いたいのはそれだけだ。