【2022/GW】屋久島縦走 vol.5(新高塚小屋~縄文杉~白谷雲水峡~宮之浦)
■5月4日(水) Day_6
朝5時起き。
恐れていた筋肉痛は全くない。まぁ、明日ぐらいが一番怖いが。
昨日と同じく、6時ぐらいにはテント撤収して新高塚小屋(1,480m)を出る。
本日も非常によく晴れて、山歩きには心地よい朝だ。
45分程で縄文杉の真上にある高塚小屋(1,330m)に到着。標準タイム70分ってなってるけど、何かの間違い?
高塚小屋から10分ほど下ると、そして遂に『縄文杉』(1,300m)とご対面!
デカい!
遠目でも存在感のある威圧的なフォルム。
今まで、写真やTVで見てきたアイツだ・・・
樹齢2000年以上も言われる数ある屋久杉の中でも最長寿とされ、高さ25.3m・幹周16.4mの巨木である。
(鹿児島県や地元民の間では7200年というのが通説みたいだけど・・・)
この旅に来る前、NHKで未発見の屋久杉(屋久島に生えている杉が全て”屋久杉”と呼ばれるわけではなく、正式には樹齢1000年以上のものを屋久杉というらしい)を探すという番組があり、それによれば高さだけなら、新たに見つかった『天空杉』(45m)、『中州杉』(35m)などは縄文杉を超える巨木だということが判明したらしいが、やはり幹周では縄文杉が一番だった。
まだ7時前ということもあって、観光客は数人のみ。
縄文杉を囲むように遊歩道が整備されていて、そこに2つの展望デッキがある。(下から正面のデッキと、上部が見れるデッキ)
だが、「やっぱり」というか想像以上に遊歩道からの距離があって遠目でしか見られない。
現在のこの遊歩道が建設されることになったニュースを昔(たしか大学に入ってすぐの頃)、一人暮らしのアパートでTVで見ていたことを憶えている。
観光客が何人かで手を繋いで縄文杉を囲む映像なんかが映っていて「これから触れなくなっちゃうんだ~、今のうちに」とか言って、みんな残念そうなコメントをして縄文杉に触れていた。
今はぐるりと遊歩道が囲んでしまっているが、これも世界遺産登録されて観光客がドッと押し寄せるようになってから根が傷んでしまうことへの配慮と思えば仕方がない。
それでも、深い原生林の中、朝焼けに佇む縄文杉は”荘厳”という言葉がよく似合う。
縄文杉を後にして、それからはひたすらの下り。
かなりの急勾配を一気に標高を下げていく。
縄文杉から先はテント泊の登山客ではなく、麓のホテルなどから日帰りピストン往復で訪れる一般の観光客が多いメインルートになるので、木組みの階段状に整備されている道が多い。ただ、この横木が水分を含むとかなり滑りやすいうえに、劣化して浮いてたりするところがあるので、それはそれで注意が必要な道だ。
『夫婦杉』、『大王杉』(1,190m)など有名な屋久杉群を見ながらぐんぐん下っていくと、だんだん登りの日帰り客が増えてくる。この時間にこの辺りまで登って来ている人達は、おそらく朝4時ぐらいには出発した人達だろう。
登り優先で道を譲っていると思うように進めなくなり、隙を見て駆け下りて、登り客が来るとまた止まっての繰り返し。特にシニア層の10~20人ぐらいの団体客の行列とすれ違う時は数分間身動きが取れなくなる。
8:30に『ウィルソン株』(1,030m)到着。人多し・・・
ウィルソン株はその名の通り、杉自体は既に朽ち果てて株だけが残っているものだが、幹の中にある祠から上の空洞を覘くとハート形に見えるということで、列をなして順番待ちをしていた。
正直、既婚者のおじさんがそんなものに興味があるわけないが、せっかくだし一応並んで中に入る。(ただのミーハー)
しかし、この並んでいる時に「明治大学 山岳部」のロゴの入ったTシャツ発見!
写真撮ってもらうついでに色々話したが、社会人2年目の山岳部OBだった。僕は学生時代、山岳部なんて入ってないが(名前ばかりの「西洋史研究会」所属)、大先輩・植村直己のファンでネパールでヒマラヤ・トレッキングとかやってた話などで結構盛り上がった。
ウィルソン株を出るとまた一段と登り客が増えてきて、すれ違うたびに交わす「ざいまーす」「こんちわー」の挨拶も面倒になってくる。この時間の下り客はテント泊組だけで少数なので、登り客の方は一人一人ご丁寧にご挨拶してくれるのは嬉しいが、こちらは20人ツアーなら一人で20回近く挨拶しなければならず、もはや”小学校の旗振り”レベルを超える回数になる。
こうなると、ただの挨拶おじさん・・・
(このルートを考えてる人はボイスレコーダーで「こんちわー」を自動再生しておくことをおススメします)
登り客の大ここで少しばかりの小休止。かくぐり抜け、長い下りを終えると突然視界が開けたトロッコ道と建物と人工物が現れ、多くの観光客の姿が見える。
『大株歩道』(900m)入口まで降りてきたのは9時前だった。新高塚小屋を出発から約3時間。
行動食もあと半日で不要になるので、他の観光客に混じって橋のたもとで少しばかりの小休止。
(見えた建物はトイレで、予想通り女子トイレは大行列だった)
ここからは、今は使われていない古いトロッコレールの敷かれた道をひたすら進む。
とりあえず、映画『Stand by me』を思い出して口ずさむ。(中学時代にこの映画のサントラをカセットテープ(ハイポジ)に録音して擦り切れる程聞いていた記憶がある)
相変わらず天気も良く、起伏もない平坦な道で、ところどころ有名な屋久杉もあり、ストレスフリーのコースだ。
景色もいいが、ただダラダラと長い・・・
日が登ってきてだいぶ暑くなってくる。
1時間ほど歩いて三代杉を過ぎたところで、10:20楠川の分岐(700m)に到着。
このまま真っすぐトロッコ道を1.5時間ほど進めば、縄文杉に来る多くの観光客が利用する『荒川登山口』に出る。そして、『白谷雲水峡』に向かう道は左の山道を進むことになる。
白谷雲水峡はジブリの「もののけ姫」のモデルにもなっているという苔むした太古の森が残る観光名所だ。ツアーなどの一般の観光客は、縄文杉と同様、麓の駐車場までバスかタクシーで来てピストンで往復するのが一般的らしい。
ということで、ここから平坦で歩きやすいトロッコ道を外れて、森林地帯をまた山登り。
ただ、ここから太鼓岩のある辻峠(900m)までの約1時間の登りが結構つらかった。
トロッコ道とうって変わって一気に観光客は減り、薄暗い森をひたすら登る。
ただ、静寂の中、一人苔むした太古の森を歩くのもそれはそれで感慨深いものがある。
日常の生活とかけ離れた贅沢な時間。
辻峠(辻の岩屋)まで来ると、急に観光客が多くなった。
ウィルソン株で出会った明大山岳部の子がいて10分ほど休憩。
白谷雲水峡からの日帰り客の多くは、見晴らしのいい『太鼓岩』(1,050m)を目指して往復するらしく、ここまで登ってくるようだ。(太鼓岩は辻峠からちょっと道を外れて往復40分程度で、重いバックパックを背負った登山客はたいていこの峠の分岐にバックパックをデポして戻ってくる)
11:30、辻の岩屋を出発して、ここからゴールの白谷雲水峡のバス停まではひたすら下り。
峡谷だけあって小さな小川がいくつも流れているので、地面がぬかるんでいてバシャバシャと日帰り客が軽装でゾロゾロと登ってくる中、間隙を縫って駆け足で降りていく。
(途中で山地図を落とす。まぁ、もうここから先は必要もないが)
20分ほど下ると、メインスポットの『苔むす森』に到着。
女性の方々はもののけ姫に出てくる”森の精霊・コダマ”の人形を持ってインスタ映え写真撮影に精を出している。
『苔むす森』は団体や外国人向けのガイドツアーも多く、かなり混み合っていて人がいないタイミングを狙って写真を撮るのがなかなか難しかった。
白谷小屋を過ぎると分岐があって、そこからいくつかの屋久杉をが見れる奉行杉コース(約2時間)もあったが、朝から縄文杉はじめ巨木見過ぎてきたので、ここは寄り道はせず真っすぐバス停を目指す。
吊り橋を渡り峡谷を見ながらのラストランは素晴らしい景色だった。
森、川、滝、巨石どれもこれも自然の色彩が深く、とても僕のカメラ技術とスマホ性能では表現できない景色の数々だった。
そして、12:50白谷雲水峡の駐車場(バス停)到着。
遂に2泊3日の縦走完了!
無上の達成感。20年越しの目標を一つ叶えた瞬間だった。
コロナのせいもあって、ちゃんとしたテント泊の登山は2018年の奥穂高以来4年ぶりだったが、怪我もトラブルもなく、太古の原生林に囲まれた大自然の中、これまでの人生で最高のトレッキングだった。
バス停で30分ほど待って、宮之浦港行きのバスに乗車し、バスは満員でずっと立ちっぱなしだった。バス停には結構観光客が並んでいたので何となくそうだろうと思っていたが、安房港からのバスと同様、往復ともにバスに座ることはできない不運。ただ、やはりGWという時期のため増便しているのだろう、バスは2本立て続けに来て全員乗れたことが何よりだった。
30分ぐらい走って、屋久島観光センターで下車。ようやく文明社会に帰ってきた。
初日、鹿児島港から安房港に着いて、何の観光もしないままそのままバスに乗り込んで淀川登山口まで行ったので、僕にとって初めて見る屋久島の街だ。
予めネットで調べて『オーシャンビュー・キャンプ場』という海沿いの無人キャンプ場があり、一応受付はここの観光センターでやるということだった。
もちろん予約なんてしないので、直接カウンターに行って受付をしてスゲーざっくりとした地図をもらってキャンプ場へ向かう。(800円/一泊)
そこから地図アプリを見ながら歩いてキャンプ場に向かったが、思った以上に距離があって30分弱かかった。
帰りのことも考えると観光センター近くでレンタサイクルしておけば良かったと後悔・・・
(と言っても、この10Kg超のバックパックを背負ってチャリこぐのもかなりキツイけど)
14:30、キャンプ場到着。
ようやくこの重いバックパックを置ける。
観光センターで言われた通り、管理人など誰もおらず、ただニワトリとヤギがいるだけ。一応、先客が3組程度いたが、テントはどこでも張り放題。
島に来たのに山だけ見て帰るももったいないので、最終日ぐらいは海を眺め南国の島気分を満喫。
とりあえず、宮崎の友人宅以来3日ぶりビールで”お疲れ一杯”!
アルコールが疲れきった身体全体に沁み渡る・・・
最高の一杯。
歩いて15分ぐらいのところにスーパーがあり、夜はそこで久しぶりにレトルトの山食以外のものを買って、酒を買い込み一人打ち上げをやって、さざ波を聞きながららゆっくり眠る。
充実した一日だった。