みちのく潮風トレイルの踏破に向けて金華山に登ってきました。
この区間は距離は短く険しいわけでもないのですが、潮風トレイル随一の難関となっています。
その理由はなんといっても離島であるということに尽きます。
船を使わないとスタートにも立てないのに、その船便の使い勝手が悪いんですよね。

航路自体は女川からと鮎川からの二系統があり、ほぼ毎日運行しているんですが、定期便だと金華山の滞在時間が1時間50分しか取れないんです。
コースタイムの60%くらいで歩ける人ならばそれでも踏破可能でしょうけど我々には無理。
となると島に長く滞在できる(それでも2時間30分ほどですが)のは、例大祭などのイベント時か、月に数回だけ運行する特別便ということになり機会が限られます。
そうでなければ船をチャーターすることになりますが、こちらは料金が最大で一人1万円にもなってしまい手が出ません。

おまけに金華山はヒル山で、暖かい季節に行こうものなら靴にびっしりとヒルが着いていたなどという話を聞きます。
そうなると季節も選ぶじゃないですか。
もうほんとに、この区間の攻略には頭を悩ませました。
正直、ここにコースを設定した人を恨みましたよ。
歩いていけないところにトレイルコースを設定するなってね。

そんなわけでチャレンジするのに非常に敷居が高かった金華山ですが、今回ようやく船便・天気・我々の休みがバッチリ合ってチャレンジすることができました。
それでは船に乗って金華山へ向かっていきましょう!




女川観光桟橋離島航路ターミナルにやってきた。
潮プランニングという会社が運行している船に乗って金華山へ渡るのだ。
予約なしでも乗船可能だが予約者優先なので予約しておいたほうが無難。
万が一予定が変更になっても連絡すればキャンセル料無しでキャンセルできるし。



潮プランニングにはアルティアとベガという二隻の船が在籍している。
今日はその二隻とも出港するようだ。
一隻で60余名乗船できるので二隻出るということは…。
ね、予約したほうが良さそうでしょ?



満席というほどでもないが、二隻ともそこそこに人を載せて出港した。
我々のようにトレッキングスタイルの人も多い。
島への観光・参拝客とトレッキング客の比率は7:3といったところだろうか。



女川港には日本最大のクレーン船が入港していた。
傍らにある橋を運搬、架橋するためにはるばるやってきたそうな。
ちなみにこの橋が架かるのは女川沖にある出島で、架橋に成功すれば本土と陸続きなる。



40分ほどの船旅を楽しんで金華山に上陸。
船を降りた人々は三々五々神社に向かって行った。
我々は混雑を避けるため荷物を整えたり写真を撮ったりしてちょっとだけ待機。



人混みも捌けたので我々も出発する。
ペンギン「お邪魔します!」
まずは車道歩きで黄金山神社へ向かう。



車道の途中から山側に入ると表参道に抜ける。
この道は徒歩専用道だが車道はそのまま裏参道として境内まで続いているので、どちらを通るかはお好みで。
ちなみに神社へ参拝する人のための送迎車が車道を行き来している。
無料だがハイカーがこれを利用するのは顰蹙モノ。



神社入り口ではご神木がお出迎え。



お社やお堂などが立ち並び見どころは多そうだが、とりあえず神社の参拝は後にして山頂を目指す。
なにせ帰りの船の時間があるのであまりのんびりしていられない。



神社の水源であるため池の横に奥宮登拝入り口がある。
一瞬、沢沿いの登山道なのかと思ったが水は全て伏流しているようでそれらしきものはない。



奥宮登拝入り口の先は思ったより普通に「登山道」だった。
もっと参道っぽい感じなのかと思ってた。



道はよく整備されている。
入山早々に草刈り機を持った方々とすれ違ったから、今まさに整備中なのかもしれない。
神社の関係者なのかボランティアなのか分からないがありがたいことだ。
ペンギン「登山道の整備をしてくれる人たちこそ我々の神!」
お茶「藪、大嫌いだからね…」



参道の途上には水神社が鎮座している。
島なので水の確保には苦労するという。
島の滞在者が最も真剣に祈りを捧げるのはここかもしれないね。



入山から40分ほどで山頂から続く稜線に到達した。



地図上では北側へ進む道が表記されているが実際は通行止めになっている。
島内は東日本大震災とその年の台風で大きな被害を受け各所で道が寸断された。
今も主要な道以外は通行止めになっている場所も多い。



樹林帯だった景色も稜線上では一変。
気持ちの良い草地の斜面を山頂へと登っていく。



景色良し!
女川はもちろん南三陸町や気仙沼あたりも見えているはず。



潮風トレイルを北から歩いてくると釜石あたりから金華山が見えてくる。
「あそこまで歩いていくんだよ」「遠いね、気が遠くなるね」なんて話ながら歩いてきたが、ついにその金華山に上陸したのだと思うと感慨深い。



お、山頂かな?



お社の脇にある石積みの丘が最高点ということになるだろうか。
お茶「金華山、登頂!」
ここ数年の懸案だった金華山を攻略できて喜びもひとしおだ。



最高地点には謎のストーンサークルがあった。
なんだろ、水準点? それとも宗教的な何か?
何れにせよ説明板などは無かったので今以てこのストーンサークルの正体は不明である。



ペンギン「頂上!」
山名が書いてないな。
金華山の山頂ってことは自明だろ?ってことだろうか。
ペンギン「記念撮影用に山名は書いてあったほうがいいっぺ」



金華山神社の奥の院。
麓の里宮は黄金山神社で、こっちは大海祇神社なんだね。
金華山にある神社の総称が金華山神社ってことなんだろうか。
ペンギン「よくわからんっぺ」



三角点はお社の横の目立たない場所にある。
うっかり見落とすところだった。
記念の三角点タッチ!



お社の前には「危険で歩行はできないけど眺望は良い」という行っていいのか悪いのかよくわからん案内表示がある。
予定していたルートから少し外れることになるが…行ってみる?
ペンギン「こんなん書かれたら気になるっぺよ」



どれどれ?



おお、たしかに絶景!
対岸の鮎川や御番所山がよく見える。
ちょっとだけ脇道にそれることになるが、ここは来て損はないだろう。



さて、大半のハイカーはここから来た道を引き返していくようだ。
確かに金華山の山頂を踏むだけなら目的は達成したわけで、ここから引き返すならば定期船でも用が足りる。
しかし潮風トレイルに設定された道は島の南側を回っている。
なので我々は反対側へと降りなくてはならない。



下山開始早々潮風トレイルの杭を発見。
神社からの参道には杭は一つも無かったのに。
ここから先は潮風トレイルのために再整備された区間ということだろう。



草付きの急な斜面を下る。
この芝生がまた滑る!
グラススキーじゃねーんだぞ…。



潮風トレイルらしい絶景が広がる。
…が、足元が気になってなかなか景色に集中できない。
ペンギン「滑る、転ぶ、ヒルまみれ…とかゴメンだっぺ」



ずんずん下っていくと「二の御殿」と呼ばれる鞍部に到達する。
今は何か建物などがあるわけではないが。昔はお堂か何かあったのかもしれない。



二の御殿からは進路を西へ。
ちなみに鞍部の反対側、東方面にも道があり道標には「千畳敷」などと書かれている。
特に通行止めなどの表記はないから興味と時間がある人は行ってみるのも一興かと。



造林小屋付近では何か動物が眼の前を横切っていったような気がした。
ペンギン「サルに見えたッペ」
お茶「鹿じゃなくて? 金華山にサルいるのかなぁ?」



植林帯の中は道がわかりにくいがトレイルのテープがベタ貼りされていて助かった。
標識などは乏しいので、このテープが無ければ林床の踏み跡をたどるのはなかなか困難だったろう。



造林小屋から神社までは山腹をトラバースしながら戻っていく。
刈払などはしてくれているようだが、参道に比べると自然のままの山道だ。



何ヶ所か崩落している場所もある。
ロープは張られているが濡れていたりすると滑りそうだ。
滑り落ちても海にドボンということはなさそうだが…。



小さいながらも渡渉もある。
海に近いこの場所は伏流してきた水が最後に姿を見せる場所でもあるようだ。
渡渉点の周りだけ植生が他と違うのも興味深い。



短い区間だが色々な表情を見せる登山道であった。
島という限られた環境なのに多様な環境が形作られている。



トレイルルートの最後では子安地蔵がお出迎え。
確かに島の案内にも地蔵の存在が記してあったが、まさかこんな裏庭のような場所にあるとは…。



サルもお出迎え。
ペンギン「ほら! 普通にサルいるし!」
お茶「ほんとだ…」



ぐるっと一周して黄金山神社にもどってきた。
お茶「お疲れ様でした!」



まだ時間があるので神社へ参拝しに行く。
金華山は三度お参りすれば一生涯お金に困ることがないという。
あと二回、来ることができるかどうかはわからないが、一度はお参りしておこうじゃないか。



登山後にもう一度登る石段は精神的にキツイ…。



お茶「金持ちになりたいとは言いません。この先の人生、飢えませんように! なにとぞ!なにとぞ!」
ペンギン「切実すぎて引くっぺ…」



境内には銭洗い所がある。
ここで銭に着いた世の不浄を落とし、それを種銭として身につけることでご利益を得られるという。
お茶「ガシャガシャガシャ!」
ペンギン「米でも研いでるっぺか!? 必死過ぎてドン引きだっぺ…」



お参りも無事済ませ後は本土に帰るだけ。
鹿の群れが見送ってくれた。



お茶「…ボス鹿か? 貫禄あるな…」
ペンギン「ふてぶてしい面構えだっぺ」



再び車道を下って桟橋へ向かう。
道すがらヒルに取り憑かれていないか確認したが大丈夫であった。
行きの船で「ヒルに血を吸われるのは勝手だが、くれぐれも戻る前にチェックして船にヒルを持ち込まないように」などと脅されたのだ。
「こんなに涼しくなってもまだヒルがいるのか」とビビったのだが、あれは単なる脅しだったか、それとも今朝の最低気温一桁が効いたのか。



短い滞在時間だったが島山とパワースポットを堪能した。
さっきまで良い天気だったのに折からの強風と雨が船を包みこむ。
出港!



さよなら金華山!


さて初めての金華山でしたが独特の風景は秘境感が漂い歩いて楽しいコースでした。
時間があれば霊験あらたかと名高い金華山黄金山神社に参拝することもできます。
三度お参りすれば一生涯お金に困らないというありがたーい御利益があるそうで、散財しがちな我々登山者の強い味方ですね。
というわけで、一筋縄ではいかない金華山、これにて無事攻略です。

おしまい

詳しいルートなどに着いてはヤマレコにて