東北百名山の一座、須金岳に登ってきました。
地元から比較的近い場所にあるのに、なかなか手を付けられなかった須金岳。
その訳は登山道が9合目までしか付いておらず、山頂を踏むには藪こぎするか残雪期に登るしか方法がないからでした。
当然、藪漕ぎは選択肢に入らないので残雪期を狙ってきたわけですが、この時期は他にも登りたい山も多く、なおかつ天気が順当でないとなかなか入山できないというジレンマがあります。
そんなこんなで10年以上計画だけを温め続けてきたのでした。
それでは満を持して須金岳に挑みましょう。
行ってきます!





十年間温め続けてきた須金岳登頂に向けて出発!
行くぜ、須金岳!



林道の終点には、さっそく渡渉が待ち構えていた。
今日は比較的水が少ないようにも見えるが、ギリギリひとっ飛びというわけにいかない幅と深さがいやらしい。



だけどここは攻略法があるのです。
川岸を上流に向かって進み…



川幅が狭くなっているところにある倒木を渡ることができる。
これは偶然の産物なのか、それとも人為的なものなのか。
いずれにせよありがたい話である。



つかの間の平穏。
とはいえ、この後もう一か所渡渉があるので気持ちは落ち着かない。



ペンギン「あ、スミレみっけ!」
ツートンは花探しに余念がない。
去年の分を取り返そうとしているかのようだった。



さて二度目の渡渉点までやってきた。
さっきより川幅が広い。
ここはどうやって攻略しようか?



水に入らず渡れるポイントを探すも、ここは倒木などはなかった。
諦めて強行突破することにした。



幸いにも靴の中に浸水することなく渡渉できた。
川を渡った先に須金岳の案内看板と登山口の道標がある。



で、いきなりの急登が始まる。
まるで目の前にそそり立つ壁のような斜面が立ちはだかったのだ。



最初の急登を登りきると今度は痩せ尾根地帯となる。
この痩せ尾根を右へ左へしながら登っていくのだ。
最初からなかなかハードな登山道だなぁ。



二合目あたりまでくると道の険しさは一旦影を潜める。
○○合目の看板はどれもこんな感じに破損していた。
雪にやられるんだろうけど。



高度が上がるにつれて段々と緑の色が淡くなっていく。
新緑が美しい。



地面ではイワウチワ祭り開催中。



時に地面を埋め尽くす勢いで群生していた。
ペンギン「これは見応えあるっぺ」



急な登りでどんどん高度を上げていくので季節も急激に巻き戻っていく。
五合目ともなると緑も消えてしまい季節が冬に戻った。



緑が無くなった代わりに周囲が開け眺望が得られるようになる。
あの山は明日登る予定の荒雄岳…かな?



五合目から先は強風にさらされるようになり体感温度がぐっと下がってきた。



足元の花もイワウチワからショウジョウバカマや…



カタクリなどに取って代わった。
なんとなく残雪が出てきそうな雰囲気になってきたな。



とか思っていたら、案の定残雪の登場だ。



とはいえ、この時点ではまだ登山道は露出していた。
かなりの急斜面なので土の道が安全でありがたい。



さらに標高が上がり山の陰から栗駒山が見えてきた。



そしてついに登山道が雪の下に消えてしまった。
腐れ雪なのでキックステップでも登れそうではあるが、念のためにアイゼンを装着。



いくら腐れ雪とはいえ、斜面が急であるため転んだら滑落しそうな気がする。
馬の背状の尾根筋は滑落したら最後、かならず左右のどちらかの崖に放り出されるだろう。
慎重に行こう。



9合目付近までくると傾斜は緩み平和な世界になった。
あとはこのまま真の山頂へ向けて進むだけだ。



なん…だと…。
つながっているはずだった雪はすでに消えて、猛烈な藪が通せんぼしているではないか。



どうにか雪がつながっている場所はないかと右往左往。
右側はだめだな…。
下が切れ落ちていて乗った雪ごと滑落しかねない。



ならばと左側に回ってみる。
こちらは傾斜もゆるく滑落の心配もない。
なんとか雪を繋いで藪を突破することができた。
あきらめないでよかった!



藪の向こうには別天地が広がっていた。



景色は良いのだが冷たい風が猛烈な勢いで吹き付けてくる。
これは長居はできそうにない感じ。
ルート探しに時間を取られ、すでにかなり長い間強風にさらされている。



虎毛山が見えた。
山の上にぽつんと見えるのは避難小屋だろう。



須金山の山頂はどこじゃいなー。
より高いように見える場所に向かって進む。



雪が残っている最先端まで進んできた。
GPSで確認すると、だいたい山頂。
よし、ここを山頂とする!
ペンギン「やったどー!」



この景色見られたら優勝でしょ!
ピンポイントで最高地点を踏めたかどうかなんて、この際ささいな問題だ。



向こうに見えるかっこいい山は高松岳…とかだったりするんだろうか。



山頂付近からは、ほぼ360度の眺望が得られる。
ゆっくりしたいところだが長時間強風にさらされて体が冷えてきた。
もたもたしていると低体温症になりかねん。
撤収!



下りの雪の斜面は慎重に下降する。
雪の先には奈落が口を開けて待ち構えているのだ。



夏道に復帰すれば後は危険な場所はない。
緊張が緩むが、こういう時につまらん怪我をするものだ。気をつけよう。



とはいえ、念願の山頂を踏めた高揚感で足取りは軽い。



急な下りも土の上なら怖くないぞ…とペースを上げすぎて、次の日に筋肉痛がひどいことになった。
ペンギン「この頃山行くのサボリ気味だったから鈍っているっぺ…」



帰りの渡渉は躊躇なく川面へドボン。
これくらいの水ならば撥水剤とスパッツでガチガチに固めておけば浸水しないと分かった。



ここも迷いなくスタコラサ。
この橋もいつまで保つかねぇ。



あばよ須金岳。
手強い相手だったぜ…。



無事に下山。
ペンギン「お疲れ様でした!」



初めて、そしてようやく登ることができた須金岳。
なかなか手強い山でした。
今年は雪解けが異常に早かったため例年の記録が参考になるかどうかわからず、かつ4月の第一週以来、新規の山行記録も途絶えている中での挑戦となり色々不安でした。

まず雪解けの増水で渡渉できないんじゃないかということ。
こちらは挑戦した日の気温が低かったため水量は平水だったようで、割と難なく通過することができて一安心でした。

次の懸念は山頂付近の雪が溶けて藪が起き上がってしまっていないかということでした。
こちらは嫌な予感が現実のものとなり9合目から先に濃密な藪の壁ができていました。
我々にはとても突入できるような藪ではなく「撤退」の二文字が頭に浮かびましたが、右往左往したあげく雪がつながっている場所を見つけて辛うじて山頂を踏むことができました。

厳密に言えば一番高い場所は踏んでいないような気もするのですが、GPSでも誤差の範囲内に収まる程度の場所には到達したため、これをもって山頂を踏んだと言っていいかなと思っています。
長い間宿題として残っていた須金岳。
ギリギリのタイミングでしたが、今年のうちに攻略することができてよかったです。

おしまい


詳しいルートなどについてはヤマレコにて