2022年夏の北海道遠征最終日を飾ったのは恵山だ。
函館の東側40kmに位置し下北半島からもその姿を見ることができる。
津軽海峡を渡るフェリーや巡視船などにもその名前がついたりと有名な山だ。

登山口に到着して我々以外誰もいないのに驚いた。
ほとんど人も来ないような秘境なのかと思いかけたが、よく考えたらこの日は平日だった。
前日まではもっと賑わっていたんじゃないかな…たぶん。



ペンギン「今日は遊歩道だっていうから私も参戦だっぺ!」
お茶「気をつけて行こう!」
麓で待っているというパターンに倦んだのか、ツートンも最初から登る気満々だ。



朝日が真正面に…。
眩しい。
でも天気が良くて嬉しい。
なにせ昨日は警報級の豪雨で各地で被害があった。
長万部付近でJRも高速も寸断され、一時は函館に戻れないのではとヒヤヒヤさせられたものだ。



登山口周辺の標高は300mくらいだが、そうとは思えないほどの荒涼とした風景が広がる。
火山ガスの影響か、それとも岬の突端という環境の厳しさからだろうか。



10分ほどで作業道の終点に着く。
ここから先は未舗装の徒歩道になるようだ。
お茶「転ばないようにね」
ペンギン「ゆっくり登るダス」



登山道は噴気を上げる火口?にまっすぐ向かっていく…



…わけはなく山裾を大きく迂回していく。
まぁ、そうだよね、遊歩道だもんね。



道の両側には変わった模様の岩があちこちに見られる。
溶岩が固まる過程でガスが抜けて…とか複雑な成因がありそうだ。



ずっと山裾にへばりついていた道は、ついに決心がついたのか岩がれの斜面に突入していく。
とはいえしっかり階段が整備されているので歩きやすい。



無理に直登するような事はなく、山肌を右へ左へ蛇行しながら高度を稼いでいく。
ペンギン「今のツートンには大助かりだっぺ」



もうもうと噴気を上げる山肌を間近に見る。
思わず「大地の息吹が云々」などと言う言葉が口をついて出たが、いかにも使い古された文句だっただろうか。
ペンギン「いやいや、『こいただろ!』『お前こそ!』とか品の無い事しか言ってなかったっぺ」
お茶「…そういう品性を疑われかねないような事を暴露するのはよそうよ…」



大噴気孔を過ぎると海が見えてきた。
ちょっと霞んでいるかもしれないけど綺麗な青い色に彩られている。
昨日はどんより暗い灰色の海や洪水で土砂が流れ込んだ茶色い海ばかり見てきたので青い海を見ることができて気持ちが晴れやかになった。



「遊歩道」は、ところどころ崩れたりはしているもののよく整備されている。
おかげでツートンも登ってこれている。
ペンギン「絶景だね!」



大噴気孔ほどではないが、遊歩道脇のいたるところから湯気が上がっている。
よく見ると岩の割れ目に硫黄が黄色く結晶しているのが見てとれた。



右も左も荒々しい風景が続く。
画になる風景だと思っていたら、案の定ここをロケに使った映画やドラマがあるそうだ。



山頂一帯は意外にも平坦で、荒々しい山容からは想像が着かない穏やかな景色が広がる。
季節には一面に高山植物の花が咲き乱れるのだとか。



なにやら人工物が見えてきた。
行ってみよう。



恵山神社の鳥居だった。
ペンギン「登ったどー!!」



お社の中には恵山大権現が祀られている。



恵山神社の先は海に向かって切れ落ちている。



右を見ても



左を見ても海。
三方を海に囲まれているので、絶海の孤島にいるような気分になってくる。



恵山の山頂は神社の少し手前にある。
気が付かなくて一度通り過ぎてしまった。
ペンギン「神社がある場所が山頂かと思ったっぺ」



お茶「絶景!」
ペンギン「いやったぁぁ!」



景色を堪能したら下山しよう。
もう少し長居したいような気もするが、なにせ帰りの船の時間がある。
そうそうのんびりもしていられない。
下りも海に向かって飛んでいくようで気持ちがいい。



ガレ場は足が完治していないツートンにとっては天敵だ。
まだ治りかけの膝は筋肉が弱っているので、ひねるような動きは厳禁なのだ。
不意のスリップがなにより怖い。
ペンギン「登りより時間をかけて下るっぺ」



下山途中変わった岩を見つけた。
なんだか人が積んだ人工物のようだが自然石だ。
大自然の造形ってすごいね。



管理道まで降りてくればゴールはすぐそこ。



無事下山。
お疲れさまでした。
ペンギン「おつかれさまっぺー!」

恵山は登るだけなら往復で5km、高低差300m。
遊歩道扱いの登山道はよく整備されていて気持ちよく、そして楽に歩くことができる。
晴天であれば普段登山をしない人でも歩けるだろう。
おかげでリハビリ途中のツートンも一緒に登ることができた。

標高300余りの登山口からすでに森林限界を越えていて終始見晴らしが良い。
中腹は噴気が上がる火山風景、そして周囲を海に囲まれた山頂風景と小ぶりながらダイナミックな風景を楽しめる山だった。
正直、観光地と侮っていたが想像を遥かに上回る絶景が待っていてくれた。

天気といい景色といい北海道遠征最終日にふさわしい山だった。

おしまい

詳しいルートなどはヤマレコにて