「岩手の山150」の男火山に登ってきた。
登山道が無い激藪の山だと聞いていたので少々びくびくしながらの挑戦だ。



まずは遠野から県道238の蕨峠を目指す。
陶器通行止めのゲートを過ぎると、間もなく右手に林道が分岐している。
林道入口には簡易的な物だが、バリゲードが立てられていたので進入は止めておいた。



林道は緩やかな傾斜で森の奥へと続いていく。
道幅も広くフラットなので車で入ってくればよかったかなと思ったが、これは最初だけだった。



道は分岐するたびに轍が薄くなっていった。



洗掘され深い雨裂ができている場面も増えてきた。
次第に普通車では厳しいだろうなという感じになってきた。



また、道の両側から藪や灌木がせり出してきているような場所も増えていく。
セルフ洗車機状態だが車体がきれいになるどころか傷だらけになるだろう。
うん、車置いて歩いて正解だったわ。
いくらジムニーとはいえ、買ったばかりの車を傷だらけにする度胸は無い。



牧場の入口を示す朽ちた門柱を過ぎると見晴らしが良い場所に出た。
遠くに早池峰山が見ている。



これは五葉山かなぁ。



六角牛山かな?



牧草地はあまり使われていないような雰囲気だ。
しかし車両が入ってくることはあるようで草原に一筋の轍が伸びていた。



山の反対側にある住田牧場からの作業道と合流すると牧草地の状態は格段に良くなった。
短く刈り込まれて牧草の上を歩いているとゴルフ場を歩いているような気になるな。
…まぁ、ゴルフなんてやったことないんだけど。



どこまでも続くかのように見える牧野の向こうに男火山と思われるピークが見えてきた。



ところが景色が広々としすぎて遠近感が狂うのか、なかなかたどり着かない。
すぐにでも男火山の足元に到着しそうに思ったのだが…。
地味にアップダウンもあり、男火山の姿を確認した後も延々と歩かなければならないのだった。



広い広いゴルフ場…もとい牧草地を抜けて、ようやく男火山を射程に捉えた。
牧草地の中に黒く浮かんだ姿が印象的だ。



さて、問題はここからだ。
男火山には登山道が無いというのは先に述べたが、数少ない山行記録では一様に激藪だと記述されているのである。
藪を泳ぐような登山は勘弁なので春先を狙ったのだが、果たしてどんな状況になっているのだろうか。



取り付く場所を探しかねてウロウロしていると灌木の枝でピンクテープがヒラヒラと手招きしているのを発見した。
とくに踏み跡があるわけではないが…ほぼ唯一の手がかりだ、ここは誘いに乗ってみよう。
ちなみに手前に生えているのは野茨で、ピンクテープに誘われて踏み込んだ私は早速手足を嫌というほど引っかかれたのだった。
いきなりひどい目に遭った…。



うーん? 道は…無いなぁ。
踏み跡…も無いなぁ。
テープに導かれ灌木帯に突入したものの頼りになりそうな踏み跡の一つも無かった。
これは自分でルートを開拓せねばならないのだろう。



奥に進むにつれ灌木の密度が濃くなっていく。
樹木の背丈も低くなり横に伸びた枝が通せんぼしてくる。
ピンクテープが点在しているが、むしろテープを追うほうが難しくなってきた。
枝の密度が薄い場所を探して右往左往する。



頭上が開けてきた。
ようやく山頂か? 
ツツジか何かわからんが背の低い灌木に絡め取られて1m進むのにもえらい苦労した。



山頂だ!
牧野から300m程度の距離だが、そこを突破するのに30分以上かかってしまった。
確かに、これは手強い藪だわ。



灌木に囲まれた山頂だが、その隙間から特徴的な山が見えていた。
てっぺんにドーム状の建物を載せたあれば物見山だろう。
とはいえ、カメラでズームしてようやくこの程度の視界が得られるという感じ。



藪に阻まれ眺望はほとんど得られない。
帰りもこの藪というか枝を突破しなければならんと思うと気が滅入る。
下山するのにも気合が必要だ。



下りでも少しでも歩きやすい場所を選ぶために右往左往させられる。
西側斜面が比較的(あくまでも比較的…だが)藪が薄いような気がする。
この際、ピンクテープの存在は忘れたほうが良いようだ。
大体の方角さえ合っていれば問題ないだろう。



無数の引っかき傷を作りながらも脱出に成功。
やれやれだ。
また野茨の罠が張ってあったが、さすがに二度は引っかからんぞ。



帰りの道すがら、二回は来ないだろうななどと考えていた。
牧野は気持ちいいんだけど…ね。



ホオジロのつがい発見。



山頂付近の藪を抜けてさえしまえば、あとはらくらく作業道歩きで下山できる。
ただし、時々洗掘された穴が草に隠れたりしているので注意が必要だ。
うっかりすると足をとられて転びそうになる。
こんなところで捻挫してもつまらない。



百舌鳥発見。



花は少ないがニリンソウとか…



キクザキイチゲとか春におなじみの花がちらほら。



無事に下山、お疲れさまでした。


さて初めて登った男火山ですが、まずこの山、どこまで車で入るかが挑戦する人に問われます。
やろうと思えば男火山直下まで車で行けないこともありませんが、路肩欠損や洗掘も多いのでそれなりの覚悟が必要です。
新しい轍もあったので時々車両は入っているようですがオフロード車や軽トラなんかだと思われます。

また今回は気配を感じませんでしたがクマも出没するようです。
入山して間もなく、近くの茂みから爆竹を鳴らされ驚かされました。
入山者皆無かと思っていましたが、山菜採りは居るようです。
頼むから藪からクマを追い立てたりしないでくれと願わずにいられませんでした。

中腹杉の牧草地歩きがこのコースの焦眉でしょうか。
北は早池峰、南は五葉山、近隣の遠野の山々など雄大な景色の中を歩くことができます。
この広い空間を独り占めとはなかなかに豪勢です。

で、最大の懸案だった山頂付近の藪ですが噂に違わずなかなかのものでした。
落葉期だったので周囲がまったく見えないということはなかったですが、背の低い灌木の枝が密に絡まり合い、コース取りの選択を誤ると数メートル進
むのに5分以上かかったりと手強い藪でした。
足元の藪には時折野薔薇が混じっているのも嫌らしかったですね。

あちこちに引っかき傷ができて、登山後の入浴ではシミシミでした…。
余裕があればとなりの女火山も登ろうと思っていたのですが、心が折れたので帰ってきました。
いや~、コースの半分近くを占める牧野歩きは気持ちいいんですけどね。

おしまい

詳しいルートなどはヤマレコにて